出力と信頼性を両立するため、空冷から水冷へとエンジンの冷却方式が変化してきた1980年代。
しかし、耐久レースで勝てることを目指したスズキは、あえてまったく新しい冷却方式として油冷を開発した。こうして生まれたGSX-R750は大ヒットするとともに、世界中のレースで大いに活躍したのである。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※この記事は2025年7月2日に発売した『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』に掲載したものを一部編集して公開しています。

スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

アウトフォルム

画像1: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

スズキはヨーロッパで人気の世界耐久選手権に、GS1000の空冷DOHC2バルブ並列4気筒をアルミ製ダブルクレードルフレームに搭載したGS1000R/XR41を投入。1983年シーズンに初の年間総合チャンピンを獲得するのである。

GSX-R750のスタイリングは、まさにこのワークスマシンを彷彿させるもので、フルカウリング(RG250Γや400ccのGSX-Rはハーフタイプだった)には耐久レーサーを思わせる大径の丸型2灯ライトを装備。

画像3: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)|新技術の油冷エンジンをアルミ製フレームに搭載した、初の750ccレプリカ
画像4: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)|新技術の油冷エンジンをアルミ製フレームに搭載した、初の750ccレプリカ

また、タンデムシートに代えて取り付けるシングルシートカウルや、デュアルヘッドライトを被うクリヤカバーのオプションを装着すれば、さらに耐久レーサーに近いスタイルにすることが可能だった。

1985年型は、上掲のスーパーホワイト×チャンピオンブルーと、このパールトゥインクルレッド×ブラックの2色が用意された。

画像2: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

フレーム

画像3: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

スズキの市販車としては3番目となるアルミフレームは、400ccのGSX-Rで開発されたMR-ALBOX(マルチ・リブ・アルミ・ボックス)を採用。ワイドスパンのタンクレールやダウンチューブには4面をわずかにくぼませて多角断面としたパイプを使っている。

画像4: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

それ以外はアルミ三元合金による低圧鋳造品で、部品点数はGSX750Sのスチールフレームの96点に対し26点と大幅に削減。重量も、鉄製の半分以下の8.1kgに抑えられている。

ホイールベースは1430mmと極端に短く、発売後に高速域での安定性に乏しいというユーザーの声を受けて、1986年に発売された限定車のGSX-R750RとSTD仕様の2型ではスイングアームを30mm延長して軸間距離を1455mmに伸ばしている。


ヘッドライト

画像5: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

45/45W×2のハロゲンバルブを使用したデュアルヘッドライトやメーター、カウルは、フレームのヘッドパイプにボルト留めされた鉄製のステーに固定される。フロントブレーキ用マスターシリンダーから出たホースは、アンダーブラケット下面に装着されたアルミ製のバイパスを介して、左右キャリパーに分配される構造だ。


メーター&ハンドル回り

画像6: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

ハンドルはアルミ鍛造製のセパレートタイプで、クランプ部をトップブリッジの下に置く。

ただし、ステアリングヘッドの位置が高く、シートの座面も低いため、ライディングポジションは上体の前傾が緩やかなものだった。3連のアナログメーターを硬質スポンジでマウントする構造も当時のレーサー的で、他社も追従した。


燃料タンク

画像7: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

タンクキャップはエアプレーン式で、倒れているレバー(写真では左上方向に見える)を起こして左に回すとタンクから外れる構造。メインキーで施錠できる。


エンジン

画像8: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

DOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、既にGSX-R(400)で採用している水冷も検討されたが、当時のスズキの技術では、ウォーターポンプやラジエーターなどの補機類で5~6kgの重量増を招くと試算。これでは目標とする車重は実現できない。

そこで考案されたのがSACS(スズキ・アドバンスド・クーリング・システム)。シリンダーヘッド内に上面からオイルを噴射して冷却する方式だ。前作GSX750Eで用いていたピストンの裏側にオイルを噴射して冷却するピストンクーラーと合わせて、日本では“油冷”として認可を受けた(海外向けカタログには“エアクールド”と記載)。

これにより、エンジン重量は400ccのGSX-Rと同等の67.6kgを実現した。なお、輸出仕様は100PSだが、日本仕様は自主規制上限の77PSである。


フロントブレーキ

画像9: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

フロントのブレーキキャリパーは、片押し式や対向2ピストンが主流だった当時に対向4ピストンを採用。Φ41mm正立フロントフォークの前側にある金色の筒は、フルブレーキング時だけでなく、エンジンブレーキやコーナリングで発生する荷重に対し圧側減衰力を調整するPDF(ポジティブ・ダンピング・フォーク)で、アンチダイブ機構を進化させたものと考えていい。


リアブレーキ

画像10: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

リヤの2ピストンキャリパーのマウントは、今日ではあまり使われない、制動時にリヤサスの動きを阻害しないフローティング式。


リアサスペンション

画像11: スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)各部装備・ディテール解説

リヤにはE-フルフローターと名付けられたボトムリンク式サスペンションを装備する。ショック下端が連結されたくの字型のアームは、一端をフレームに、中央部分をスイングアームに連結。

スイングアームが接続された部分には軸受け穴を中心からオフセットさせた偏芯カムが内蔵されており、ストロークの初期ではカムが左に、ボトム付近では右に回転する構造を採る。

スズキ「GSX-R750(GR71F)」(1985年)主なスペック・当時価格

全長×全幅×全高2110×745×1205mm
ホイールベース1430mm
最低地上高120mm
シート高765mm
乾燥重量179kg
エンジン形式油冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量749cc
ボア×ストローク70.0×48.7mm
圧縮比11.0
最高出力77PS/9500rpm
最大トルク6.4kgm/8000rpm
燃料供給方式キャブレター(VM29)
燃料タンク容量19.0L
変速機形式6速リターン
キャスター角26゜00′
トレール量107mm
ブレーキ形式(前・後)Φ300mmダブルディスク・Φ222mmシングルディスク
タイヤサイズ(前・後)110/80-18 58H・140/70-18 66H
発売当時価格(1985年)78万円

まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※この記事は2025年7月2日に発売した『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』に掲載したものを一部編集して公開しています。

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