手軽さ、便利さ、そして経済性で人気高値安定中の125ccスポーツクラス。カブ系、ミニ系、そしてスクーターも人気だけれど、このクラスにだってスーパースポーツがある。それがGSX-R&S125の2台だ。
文:中村浩史/写真:松川 忍、夏目健司

スズキ「GSX-R125 ABS」「GSX-S125 ABS」インプレ

画像: SUZUKI GSX-R125 ABS 試乗車は2021年モデル 総排気量:124cc エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 シート高:785mm 車両重量:134kg 税込価格:41万5800円(2022年モデルは45万3200円)

SUZUKI GSX-R125 ABS
試乗車は2021年モデル

総排気量:124cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
シート高:785mm
車両重量:134kg
税込価格:41万5800円(2022年モデルは45万3200円)

スズキが125ccにもGSX-Rの名前を与えた理由

GSX-R125に乗るたび、いつも思う。本当によく回るエンジン! 125ccというと、マニュアルミッションとはいえ、のんびりラクラク走れる便利なクラス、なんてイメージがあるけれど、GSX-Rは違う。125ccとはいえ、GSX-Rはちゃんとスポーツを狙っているのだ。

僕はここ10年ほど、125DUKEからCB125Rと、125ccギアつきスポーツを所有してきた。今の愛車はモンキー125だけれど、それはちょっと違うクラスかな。

GSX-Rは、DUKEともCBとも違う。この3台にアプリリアRX/SX125を含んだ4台が、水冷DOHC4バルブ単気筒を積んだスポーツモデルだけれど、それでもGSX-Rだけは元気さが違うのだ。

ちょっと数字を調べてみると、GSX-Rのボア×ストロークは62×41.2mmで、そのボアスト比は0.66。ボアスト比では、CBが0.84、DUKEが0.81、RXが0.81。ボアスト比の数字が小さいとショートストローク=高回転型になるから、つまりはGSX-Rがいちばん高回転型エンジンだと言える。

ちなみにボア×ストローク比で言うと、GROMとモンキー125は1.26、カブシリーズは1.1、Z125が0.90。さらにMotoGPマシンは、ボアが最大81mmに規制されているため、81×48.5mmあたりだと言われているが、これはボア×ストローク比0.6ほど。排気量も気筒数も違うけれど、GSX-RはMotoGPマシンに一番近い、というのはこじつけすぎだろうか。

125ccモデルは、ヨーロッパでのA1ライセンス上限に準じているため、世界的に最高出力15PSがリミット。トルク量は排気量でほぼ決まってしまうから、高回転まで回るエンジンがいちばんパワフル、ということ。つまりはGSX-Rが125ccでパワー感ナンバー1なのだ。

125ccに、栄光のGSX-Rと名付けたのは、そんな理由なのだ。

画像: ▲レッドゾーンまで回せるDOHC単気筒は低回転でも粘り強く街を駆ける。125ccにありがちなパワー不足をこのGSX-Rには感じない。

▲レッドゾーンまで回せるDOHC単気筒は低回転でも粘り強く街を駆ける。125ccにありがちなパワー不足をこのGSX-Rには感じない。

みんなに知ってほしいこと。GSX-Rはいいぞ!

GSX-R125で走り出すと、やはりスリムなボディを強く感じることになる。言い方を変えれば、細すぎて、華奢すぎ、安定性がなくフラフラしてしまうフィーリング。

前後17インチホイールのフルサイズ車だけに、12インチのミニサイズほどは重心の低さゆえの安定感がなく、前/後タイヤも110/130とか細い。134kgという車重だって、こと安定性に関してはマイナスだ。

けれど、これは発進してすぐの話。ここからスピードを乗せていくと、ずっしりとは言わないまでも安定性も出てきて、さっきまで心許なかった車重の軽さも、ヒラヒラと軽快に走る武器になる。街乗りでは50〜60km/h、流れに乗ったそんなスピードでは、やはり250ccスポーツとはケタ違いの軽快さが感じられる。

各ギア引っ張ってスピードを乗せてみると、回転の上がりがやはり早い。ここがショートストロークエンジンの強みだ。パワーがグンと持ち上がるのが5500回転あたりで、そのまま1万回転まで回ろうとする。

制限速度を守ると、6速4000回転で50km/h、4800回転あたりで60km/h。ここからパワーがグンと盛り上がるぞ、ってところでアクセルを開けてはいけなくなる。まさか125ccでストレスを感じるなんてね。

ハンドリングはあくまでヒラヒラで、直進安定性もやや心許ない。けれど、それはフットワークが軽い、と表現するべきもので、落ち着かなさではなく、軽快という意味だ。

ちょっと面白いのは、コーナリングで安定性が出てくるところ。ちょっとした曲がり角でも、バイクを寝かすと、しっとりと接地感を感じながら曲がることができるもので、気を抜いて走っていると、思っているラインの1本外側を走る印象なのだ。

これ、スポーツバイクのお手本のようなハンドリングで、GSX-R1000Rとも(ちょっとだけ)印象が似ている。シャープに曲がりたかったら、きちんとフロントブレーキを使って、フロントタイヤをつぶしてバイクを寝かせるといい。やはり小さくてもGSX-RはGSX-Rなのだ。

それでも、125ccのメインステージはやはり一般道。ブン回せば力あふれる、わずか15PSの単気筒エンジンは、4000〜5000回転という、パワーが盛り上がってくるエリアよりも低い回転域を使って走っていても、軽量な車体を充分スピードに乗せる力強さ、粘りがあるのだ。

街を走っていると、R125の前傾ポジションが気になることがある。それならばバーハンドルを使用し、グリップ位置が高くアップライトなポジションのGSX-S125の、街中での快適性の高さが光る。

走りの性能はそのまま、ポジションがラクなため、街中がメインステージの125ccならば、やはりS125の方がいい。クラウチングポジションのR125だと、気分的についつい回転を上げて走ってしまうから、のんびり走りたいという125ccのよさを味わうなら、S125の方だ。

画像: ▲ノンカウルモデルのGSX-S125は、バーハンドルを採用し、ライディングポジションもアップライト。動力性能はそのまま、ストリート向けの快適さがある。

▲ノンカウルモデルのGSX-S125は、バーハンドルを採用し、ライディングポジションもアップライト。動力性能はそのまま、ストリート向けの快適さがある。

僕がこれまで自分で所有して乗り継いできたDUKE、CB、そしてモンキー125。試乗やツーリングで何度も走ったスーパーカブC125やCT125ハンターカブ。その中でもやはりGSX-R125は異色だ。

ちょっとのんびり走る250ccとならば同じペースで走れるし、高速道路に乗れないことを差し引いても、一般道メインで片道100〜200kmのツーリングに出たってペースや快適性で不自由を感じることはない。ここが、カブ系だけではない、マニュアルミッションの125ccが人気を集める理由なのだと思う。燃費はカブやモンキーに適わないけどね。

GSX-Rと付き合って、走り回った1週間。ちょっとよからぬことを感じ始めた僕がいる。買ってまだ2年も経たない12インチの125ccよりも、断然スポーティな17インチが欲しくなってきちゃった。

それほど、GSX-Rはイイぞ!

This article is a sponsored article by
''.