GTとはグラン・ツーリスモ、つまりツーリングバイクのことだけれど、スズキにはHAYABUSAもVストローム1050もある。長距離を快適に移動できることをグランツーリスモの定義とするなら、GSX-S1000GTに新しい旅の楽しみがあるはずだ。
文:中村浩史/写真:富樫秀明

スズキ「GSX-S1000GT」インプレ(中村浩史)

画像: SUZUKI GSX-S1000GT 総排気量:998cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:810mm 車両重量:226kg 発売日:2022年2月17日 税込価格:159万5000円

SUZUKI GSX-S1000GT

総排気量:998cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:810mm
車両重量:226kg

発売日:2022年2月17日 
税込価格:159万5000円

低重心ロケットとスポーツする旅人

GSX-S1000GTに乗って考えた。最高のツーリングバイクって、どんな姿なんだろう──。

ビッグバイク黎明期の1970年代には、そんなカテゴリーはなかった。ナナハンもZ2もスポーツバイクでもありツーリングバイクでもあった。国産モデルでそんなカテゴリーのスタートと言えば、ホンダが打倒カワサキZ1を目指して1974年に発表したGL1000なのかもしれない。

速く走ることよりも快適に距離を延ばせる──それがツーリングバイクの条件ならば、穏やかなパワー特性、フルカウル、リラックスしたライディングポジションの姿だろうか。パワーは100PSあれば充分、重量は200kgといったところかな。重いと取り回しが大変だし、軽いとピシッとした直進安定性が出ないことが多いから。

国産モデルを見渡すにツーリングバイクも細分化しているように思う。アドベンチャー、メガスポーツ、そしてGSX-S1000GT的なフルカウルスポーツだ。スズキでいえば、Vストローム、ハヤブサ、そしてS1000GT。

すべてに乗って気づいたことがある。それぞれ得意な「ツーリングステージ」が違うのだ。

Vストロームに感じるのは、背の高い、足の長い軽快な長距離ランナー。ハヤブサは、決して出せないけれど、最高速度300km/hも可能な、地を這う低重心ロケット。そしてS1000GTは、そのどちらの領域も味わえる、スポーティな旅人なのだ。

画像1: スズキ「GSX-S1000GT」インプレ(中村浩史)

こんなに違うS1000とS1000GT!

まずファーストルックからして、おっ、と思わせるS1000GTだ。先代のGSX-S1000とS1000Fの違いといえば、ネイキッドのS1000に対し、S1000Fはフルカウルを装着していること。

マイナーチェンジを受けたニューS1000とS1000GTも、もちろんその手法を踏襲している。ボディデザインは大きく変更を受け、特にヘッドライトデザインがガラリと変身。どちらかというとオーソドックスなスタイリングだったS1000/Fが、一気にイカツくなった。

そして車名さえ変更されたS1000GTは、さらに専用の仕様が設定されている。パッと見てわかるのはリア回り、シートレール以降のデザインだが、これはS1000GTに多いであろうタンデムや荷物の積載を考えたもので、わざわざS1000とは別の専用設計としているところが、スズキらしからぬ設定だと思う。

パニアケースは、最初からテールカウルをマウントブラケット装着前提でデザインされている。ちなみにスズキ純正アクセサリーのパニアケースは、S1000には設定されておらず、S1000GT専用だ。

タンデムシートは、S1000があくまでエマージェンシー用のサイズなのに対し、S1000GTは座面積を広げてシートクッション厚をしっかり取って、そのためにシート高が上がらないよう、シートレールを低く設計している。タンデム用のグラブバーもS1000GTのみに装着されていて、これは完全にタンデムランの快適性を考えてのものだ。国産モデルとしては、久々にタンデムと積載のことを「しっかり考えられた」装備だろう。

さらにハンドルポストをラバーマウントとしたり、ステップバーに防振ラバーを貼ったりと、細部までS1000GTのみの装備が少なくない。S1000とGTは、ネイキッドとフルカウルの違いだけではないのだ。

最大のトピックはスマホ連携機能だ。

S1000GTにのみ標準装備された6.5インチのフルカラーTFT液晶は、Bluetooth機能を持つスマホとのペアリングが可能で「スズキMyスピン」アプリを介して、スマホに表示される地図機能、電話の発着信、カレンダー機能を表示でき、インカム接続もすれば、音楽の再生もできる。もちろん、インカムを接続していれば、スマホの地図機能を使ってナビのルート案内も聞くことができる。

画像2: スズキ「GSX-S1000GT」インプレ(中村浩史)

実際に接続してみると、Bluetoothの設定にこそやや手間取ったものの、無事にスマホとS1000GT、インカムがペアリングできた。スケジュール表示や電話の発着信はさすがにバイクを降りてからでもいいと思うけれど、スマホの地図を表示できるのが便利すぎた! このスマホ連携は、国産モデルでは、ホンダ・ゴールドウイング、アフリカツインがアップル・カープレイとアンドロイドオートを接続していて、それに続く装備。スズキMyスピンは、iPhone/アンドロイドともに設定OKだ。

このペアリング機能は、近ごろ話題の、バイクへのマウントによるスマホへの振動ダメージの心配もナシ。スマホをバッグやポケットにしまったまま、地図はメーターパネルに表示されて音声案内を聞ける──これがこれからの常識になりそうだ。

画像3: スズキ「GSX-S1000GT」インプレ(中村浩史)

洗練されたパワー特性、これはツーリング適性が高い!

専用装備を追加したことで、よりスペシャル感が増したS1000GT。エンジン/車体の主要スペックに大きな変更はないが、スタイリング変更や追加装備に加え、電子制御系を大幅にアップデートしている。

電子制御は、たとえば一機種用の電子制御がアップデートされると、他機種への流用も比較的簡単で、特に大排気量モデルへの搭載で、乗り味が大きく変わることが多い。スズキビッグバイクでは、ハヤブサのフルモデルチェンジに合わせて、ハヤブサの最新電子制御スペックが、そのままカタナからGSX-Sに搭載されたようだ。

スズキの総合制御は「スズキ・インテリジェント・ライド・システム」と呼ばれ、まずスロットルバイワイヤ化。そのおかげでパワーモード設定、より細かい制御内容となるトラクションコントロールやクルーズコントロールの追加も可能となる。

パワーモードは3段階に設定でき、トラクションコントロールは5段階+オフ、シフトアップ&ダウンの両方向にクラッチワークが不要となるクイックシフト、そしてクルーズコントロールも搭載された。これがイイ!

画像4: スズキ「GSX-S1000GT」インプレ(中村浩史)

乗り味もかなり洗練された印象で、走り出しですぐに力強いトルクを感じることができる。その力の出方も決して唐突ではなく、スロットルをわざと雑に操作しても、きれいについてくる。S1000ってこんなにトルクあったっけ? と思ってしまった。

特に街中で多用する2000〜4000回転というエリアが使いやすく、レスポンスもシャープすぎず、動きが上質。もちろん、トルクも大きいから、穏やかなパワー特性は強烈で、試乗の後半はパワーモードを中間のBモードにしていたほどだった。

ハンドリングは、ツーリングバイクと呼ぶよりずっとスポーティ。ワインディングでも、この大柄なボディを振り回すことができた。GSX-R的なクイックさはもちろんないけれど、ハヤブサよりずっとコンパクトに動かすことができて、ついついペースが上がってしまう。

得意なフィールドはやはり高速クルージングで、新たに装備されたクイックシフトで、とんとんと6速に入れて、5000回転あたりでクルーズコントロールのスイッチを入れれば、そのまま120km/hでの一定速走行が可能になるのだ。一定速で走る時に、スロットルを一定角度にキープするのは、ロングツーリングで意外に疲れるものだから、200〜300km走行となると、もうクルーズコントロールなしではいられない!

たとえば関東から北海道へのツーリングでは、現地まで自走するのはハヤブサが楽かもしれない。現地に着いてからは、路面の悪い一般道も快適なVストロームがいいかな。

けれど、北海道までフェリーで渡ったり、峠だらけの九州を走ったりするなら、S1000GTがイイ。タンデムツーリングならなおのことで、パニアケースを装着して、荷物を満載してのロングツーリングに出てみたくなるオートバイだと思う。

ETCも標準装備になった。純正アクセサリーに設定されているグリップヒーターを取り付ければ、オールシーズン全天候型のツーリングバイクが出来上がると思うのだ。

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