伊藤真一さんがゴールドウイング(2020年型)をインプレッション! 実はこのモデル、登場時にも試乗しているんですよね。なぜ2回目の試乗をしたのか? それには深い理由があるそうで……。
語り:伊藤真一/まとめ:宮﨑健太郎/写真:松川 忍/モデル:大関さおり
画像1: ホンダ「ゴールドウイング DCT」インプレ(2020年型) 年式によって仕上がりは変わるものなのか?【伊藤真一のロングラン研究所】

伊藤真一(いとう しんいち)
1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2021年は監督として「Astemo Honda Dream SI Racing」を率いてJSB1000などに参戦。

ホンダ「ゴールドウイング DCT」試乗インプレ(伊藤真一)

画像: Honda Gold Wing Dual Clutch Transmission 2020年モデル 総排気量:1833cc エンジン形式:水冷4ストSOHC(ユニカム)水平対向6気筒 最高出力:126PS/5500rpm 最大トルク:17.3kg-m/4500rpm シート高:745mm 車両重量:364kg 税込価格:293万400円

Honda Gold Wing Dual Clutch Transmission

2020年モデル

総排気量:1833cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC(ユニカム)水平対向6気筒
最高出力:126PS/5500rpm
最大トルク:17.3kg-m/4500rpm
シート高:745mm 
車両重量:364kg

税込価格:293万400円

DCTのフィーリングが良化した印象。これなら充分楽しめる!

ゴールドウイングをテストするのは、2018年にダブルウィッシュボーンサスペンションを初採用した以来ですね。そのときはトップケースを装備するゴールドウイングツアーのMT車とDCT車でしたが、今回はバガースタイルのゴールドウイングの、DCT版になります。なお2021年2月にはDCTのみのラインアップになるマイナーチェンジ版が発売されましたが、今回試乗したのは2020年モデルです。

2018年型は17年ぶりの全面刷新を受け、ホンダ初のダブルウィッシュボーンサスペンションを採用したのが最大の特徴ですが、乗り慣れたテレスコピックフォーク車とのハンドリングの操作感覚の違いなどに、色々戸惑いを覚えたりもしました。

今回試乗した2020年型ですが、走り出して最初に違いを感じたのは、セルフステアが普通に入るようになったことです。前回試乗したときはハンドルを直進に戻そうとするキャスターアクションが少なく、荷重移動させてバイクを曲げるというより、ハンドルを切ってコントロールという印象でした。

画像1: ホンダ「ゴールドウイング DCT」試乗インプレ(伊藤真一)

2020年型はダンパーの余計な動きがなくなり、ストロークの浅いところでも深いところでも、しっかりショックを吸収している感じです。Uターン時やコーナー中でも四輪車のようにブレーキを使えるのは、2018年型から変わらない、操舵と衝撃吸収の役割が分けられているダブルウィッシュボーンサスペンションの特徴ですが、2020年型は制動時にフロント側が突っ張る感覚が少なくなり、テレスコピックフォーク車に慣れた人にも、より自然な動きに感じられます。

また前回の試乗では、リンクを介するダブルウィッシュボーン特有のホイールの動き方から、コーナーで車体を倒し込んだときタイヤの接地点が後ろへずれてくる感じがありましたが、今回の試乗ではバンキングの感触もより自然なものに思えました。

それでいて乗り心地の良さといった走っていての快適さ、そしてスタビリティの高さは前の試乗時に感じたまま変わらず、路面からライダーに伝わるフィードバック感がさらに増しています。剛性の調整や精度の向上により、ハンドリングを熟成させていると想像しますが、とても素晴らしい仕上がりぶりだと思いました。

画像: ゴールドウイングツアー系と異なり、シンプルな造りのゴールドウイングには4段階調整の電動プリロードシステムは備わらない。「基本的にソロでもタンデムでも走りの質は変わらないですけど、大関さんを後ろに乗せていたときの方が、安定感はあった感じですね」とは伊藤さんの弁。

ゴールドウイングツアー系と異なり、シンプルな造りのゴールドウイングには4段階調整の電動プリロードシステムは備わらない。「基本的にソロでもタンデムでも走りの質は変わらないですけど、大関さんを後ろに乗せていたときの方が、安定感はあった感じですね」とは伊藤さんの弁。

水平対向6気筒エンジンを低重心な位置に搭載するゴールドウイングは、ハンドリングをまとめ上げるのがとても難しいバイクです。一般的なスポーツバイクはある程度高い位置に重心を上げて、セルフステアを効かせて曲がるようにしますが、ゴールドウイングの6気筒をこれ以上重心上げて搭載すると、ピッチングが大き過ぎたり、コーナーで倒れ込んでからの戻りが遅れたり、いろいろ弊害が出るはずです。

またライダー込みで重量が400kgもありますから、摺動式のテレスコピックフォークでは制動時にかかる荷重により動きが渋くなります。ゴールドウイングはダブルウィッシュボーン式なので、テレスコピックフォークのような剛性に関する問題はないです。でもあれだけ重心が低いと、セルフステアとかフロント側の自然な動きを出すのが難しいです。

また重心が低いから、Uターンなどでスロットルを開けすぎると前輪がバッと滑ります。でも姿勢が大きく乱れることはなく、何事もなかったかのように収まります。車重の重さと重心のバランスが、とても良いのでしょう。もうちょっと重心が高ければタイヤにかかる面圧も上がると思いますが、現状でも破綻することなく、違和感なく走れるようにまとめ上げられていますから、これがちょうど良いバランスなのでしょう。

前回試乗したときはシフト操作が好きという自分の好みもあって、購入するならDCTよりもMTを選ぶかな、と思いました。MTが用意されるのはこの2020年型で最後になりますが、今回試乗した車両のDCTの出来栄えが良いので、これならMTがなくてもいいかな、と思いました。

前回試乗したときは、DCTの低速時の使い勝手に違和感を覚えたのですが、今回は違和感なかったです。また学習機能によりちょっと急加速した後は、シフトアップしなくなる。ハンドリング同様、DCTもより自然になった印象で扱いやすかったです。これならMTでせっせとシフト操作して走らなくても、DCT任せで楽しめると思いましたね。

画像: 「2018年の初代モデルに比べると、フロントサスペンションの余計に動く感じがなくなりましたね。節度が出た感じです」と伊藤さんは熟成された足まわりを高く評価。

「2018年の初代モデルに比べると、フロントサスペンションの余計に動く感じがなくなりましたね。節度が出た感じです」と伊藤さんは熟成された足まわりを高く評価。

6気筒エンジンを最大限に有効活用! ウォーキングモードも便利に使える!

スロットルバイワイヤシステムを採用し、ツアー、スポーツ、エコノ、レインと4種類のライディングモードを選べますが、スポーツは特にスロットル操作に対してツキすぎる…ちょっと早開きしすぎる感じがありました。

以前CBR600RRを取り上げたときも同じような話をしましたが、自分らのようなプロライダーは、すぐに全開にしてしまうので(笑)、そう感じてしまうのかもしれません。もっとゆっくりスロットル操作をする一般のライダーなら、これくらいのツキでも問題ないのだと思います。

モードの変更でDCT、トルクコントロール、ブレーキ特性も変化しますが、スポーツで峠を攻めるとちょっとフロント側のブレーキ力が足らないと感じてしまいました。あとスポーツモードで全開にすると結構ドーンと加速しますが、ハンドルグリップの材質と形状的に手の小さい人は手が外れちゃうかも、と思いました。

まぁ、ゴールドウイングで峠道を攻めた走りをしたときのことを、あれこれうるさく言うのは自分くらいかな、とも思いますけど(苦笑)。6気筒エンジンの排気音は十分消音されていますが、その音質はとても良いですね。

画像2: ホンダ「ゴールドウイング DCT」試乗インプレ(伊藤真一)

スタイリングに関しては、初期型を見たときからそのカッコ良さが気に入ってます。二輪のNSXみたいで、良いですよね。今回試乗したゴールドウイングは、ブラックメタリックに赤のカラーリングがちょっとワルっぽくて、それでいて高級感もある。これに乗って信号待ちしているとき、横にCBR1000RR-Rが並んでも「頑張ってね」って気持ちになれますね(笑)。

低速で前進・後退ができる、便利なウォーキングモードが装備されるゴールドウイングは、普段の足に使えるくらい使い勝手がよく、そして峠道や長距離ツーリングも楽しめるという万能さがありますから。

ゴールドウイングはフラッグシップとしての質感の高さがあって、ダブルウィッシュボーンと低重心な車体を高度にバランスさせた、とても良く出来たモデルだと思います。自分も普段の足に、所有してみたいと思わせる1台です。ひとつだけ欲を言えば、ヘルメットホルダーを使うのではなく、サドルバッグ内にヘルメットが収納できれば、最高なんですけどね…。

This article is a sponsored article by
''.