ホンダ「NSR250R(MC16)」(1986)のシャシー・サスペンション解説
独自の目の字断面材によるアルミツインスパーフレームと進化した足まわり

NSR250Rのフレームとリヤサス部。フレームはこの頃レーサーで実績を得てきたツインスパー(spar:桁)タイプでその主材=メインスパーはホンダ独自の目の字断面構造アルミ材製。ツインスパーはエンジンを背後から抱きエンジンも剛体の一部として使うダイヤモンドタイプフレームの一種で、ダウンチューブがないことでエンジンやチャンバーを低く置けて低重心化でき、750mmという低シート高も実現した。
またステアリングヘッドパイプからスイングアームピボットを、桁を渡すように一直線に近い形でつないで運動軸を分かりやすくすること、見ても分かるように縦剛性も横剛性も高いのが特徴だ。フレームの前下側に伸びるのは前側エンジンハンガーで、フレーム本体後部中央にはリヤショックのアッパーマウントが設けられる。
スイングアームは極太のアルミ押し出し材に鋳造製のチェーン調整部を溶接する作りだ。リヤサスペンションはモノサスのプロリンク。モトクロスでのストローク増大に対してどう効果的に衝撃を緩衝するかを元に開発されたもので、ショックを車体中央に配してマス集中が図れる。またリンクを設けることでストロークやプログレッシブ特性の設定も行いやすい。
写真で見えるリヤショックの下側はスイングアーム下に覗く黒い肉抜き三角形のショックアーム(リンクプレート)の前に留められ、ショックアーム後ろ下はフレーム下から伸び、上下に動ける棒状のショックリンクに留められる。
ショックアームのもう1点は写真では隠れているが、スイングアーム下に留められる。スイングアーム=リヤホイールの上下の動きに応じてリンクを介してリヤショックが動くのは分かるだろう。

NS250Rのアルミダブルクレードルから一挙に太くなり、目の字断面の主材が存在感を増して力強さを視覚的にも分からせたアルミツインスパーフレームはNSRの特徴となった。

NS250R/F、NS400Rの組み立て式NSコムスターから、新たにアルミキャストとなったホイール。軽量性と高剛性を両立させるS字断面の3本スポークデザインで、サイズはフロントが2.50-17インチ、リヤは3.00-18インチ。ホワイトペイントで仕上げられ、100/80-17・130/70-18サイズの扁平タイヤを履いた。

当時はラジアルタイヤがようやくレースで使われ、市販車はほぼバイアスだった。フロントブレーキはアルミ製ディスクハブ(ディスクインナー)を持つ6ピンのフローティングディスクにNISSIN片押し2ピストンキャリパーを組み合わせるダブルディスクで、ディスク径はΦ256mm。

リヤブレーキはスイングアーム上にNISSIN片押し2ピストンキャリパーを置き(キャリパーサポートははめ込みでスイングアームに固定される)、Φ220mmリジッドディスクを組み合わせた。ドライブチェーンは520サイズで108リンク。

リヤインナーフェンダーが備えられるのは当時としては珍しかったが、そこまでレースを意識していたということだ。左右サイレンサーの張り出しを抑えていることも分かる。

フロントフォークは正立で、アンチノーズダイブなどのサブデバイスを持たないオーソドックス。インナーチューブは当時の750ccクラスと同等のΦ39mmと、このクラスでは極太。アウターチューブもブロンズカラーで仕上げられた。

右後ろからリヤショックを覗く。上掲のフレームの写真と合わせて見るとショック下側と三角形のショックアーム、フレーム後端から伸びるショックリンクの関係が分かりやすくなるだろう。なお市販状態ではショックアームはこのようにアルミ地の色だ。
