鈴鹿8時間耐久の第1回、そして第3回の鈴鹿8時間耐久で堂々と勝ってその力を示したヨシムラ。しかし、それ以後は、常に上位を走り続けたものの勝利の女神は彼らに試練を与え続けた。だが、女神はついに微笑んだ。
画像8: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

2005年の8耐でサイレンサーからの出火という悪夢を見たヨシムラは原因を徹底的に追及、連結部からの2次エア混入を大きな原因と断定した。対策はシンプルである。脱着上さしつかえない連結部をすべて溶接したのだ。

もちろん、万が一以下の発火ではあったが、それを二度と起こすまいという決意だ。エグゾーストシステムは、全日本のスプリントレースで開発してきたものを8耐でも使用している。

サイレンサーのみは脱着可能とするが、市販品用のパーツを流用したために存在する水抜きのための小穴は、美しくふさがれている。消音器はトライオーバルサイクロンだが、市販品よりやや短く、内部構造も違う。レース規定は105ホンだが、この車両は102ホン以下。


画像9: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

リヤショックもショーワのワークス用。交換されているが外観はレースに使ったものとよく似ている。特徴的なのはプリロードの調整で、写真中央左下の上側取り付け部の下に見えるエアバルブに空気を送るとスロッテッドナットがフリーになる構造を持つ。車高調整メカはロックナット式。


画像10: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

スイングアームピボットも車体セッティングの重要項目。STD±4mmまで可変できるパーツが作られている。鈴鹿ではやや下げていた。


画像11: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

シートレールはスペシャル。ライダーの体格と好みによって、高さや角度をいくつも選べる。これによって変わるシートの位置にリンクしてシートカウルも動かすため、このあたりは全部特別に作られた。


画像12: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

フロントディスクは、#34:Φ290mm、#12:305mmと使い分けた。スプリントではΦ320mmとさらに大きいが、これだとキャリパーを外さないと車輪が脱着できない。ディスク径は、パッドとの組み合わせを含めてライダーの好みで選択されている。


画像13: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

8耐本番を走ったフロントフォークとブレンボの4ピストン/2パッドキャリパー(色が違って見えるが、キャリパーは撮影時と同じ仕様)。ホイールを外すとホイールキャッチャーが外側に開くスプリング入りだ。


画像14: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

リヤディスクはΦ200mmのフローティングタイプ。STDとは逆の下側とされたキャリパーは量産車からの流用品をリジッドマウントする。


画像15: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

エアダクトはクレバーウルフ製のヨシムラキットパーツそのもの。エアダクトはフレームとカウルの両方に差し込むだけで固定される。


画像16: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

GSX-R1000のエアボックスにデュアルスタックファンネルを4個組むと、外側2個の先端がカバー内側に当たるため、キットパーツでは外側2個にSTD部品を使う指示をしているが、このマシンではデュアルスタックの下側部のみを装着している。形状が揃い見た目が美しいほうがいいという理由だ。

ともあれ、デュアルスタックによる性能向上は明らかだったという。なお、インジェクターはレース規則によりSTDパーツそのままである。


画像17: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

エンジンのチューンナップはレギュレーションで厳しく制限されているから、主にシリンダーヘッドに対してしか行えない。ポートの形状変更、カムシャフトの交換、面研によって圧縮比を高める、の3点が重要項目である。

カムシャフトはヨシムラのキットパーツとほとんど同じだが、プロファイルはわずかに異なる(設計は総監督の吉村不二雄)。他にも自社製キットパーツを組み込むが、ピストン、コンロッド、クランクシャフトには手が加えられないので、手持ちのエンジンをすべて分解し、重量の近いセットを組んでバランスの向上を図っている。トランスミッションとクラッチらにもヨシムラキットパーツを使う。

画像18: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

なお、エンジンは8耐の前哨戦である鈴鹿300km用に4基、8耐用に5基の合計9基が作られたとのことだ。今年のヨシムラでは、加藤監督自身もエンジンマンのひとりとして活躍する。監督によると、チューンナップの幅が小さいJSB規定によるエンジンは非常にタフで、レース中に壊れる心配はまったくないという。

出力は、ヨシムラのエンジンダイナモ室によるドライブスプロケットからの実測で190PS強。これは7月の暑いときだから、冬なら200PSはマークしよう。また、シャシーダイナモごとに出力の数値はいくぶん異なるのが普通なので、加藤監督は他メーカー車との公表値比較には関心がないようだった。要は、自分たちの望む走りをして、レースに勝てばいいのである。


画像19: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

メーター裏側の配線類は、コンピュータ制御を取り入れた現在、相当に複雑であり、モトGPマシンのようである。このマシンのブラックボックスには、ヨシムラのキットパーツそのものを使っている。


画像20: ヨシムラ「GSX-R1000」(2007)各部詳細解説

ラジエーターとオイルクーラーは一体式。真夏の8耐に勝つために、全日本選手権で何度も設計変更をしつつ開発したものだ。ウォーターポンプから伸びる赤いホースから上がラジエーターで、2本のステンレスメッシュホースがつながっている下の部分がオイルクーラー。灼熱の鈴鹿を戦うためには欠かせないスペシャルパーツであり、スズキ系の数チームにも供給したとのことだ。

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