文:鈴木大五郎/写真:KTM
KTM「990 RC R」インプレ(鈴木大五郎)

KTM
990 RC R
総排気量:947cc
エンジン形式:水油冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:845mm
車両重量:195kg
発売日・価格は未定
ストリートからサーキットまで優れた性能を発揮
990RC Rは、KTMにとって久々の肝いりRCモデルだろう。モトGPクラスに参戦し始めてから早9年。KTM=オフロードブランドとイメージする人も少なくなってきたのではないだろうか? 一方で、そのイメージを具体化した本格的マシンは存在しなかったので、待望の登場といえるだろう。
「よし! レディ・トゥ・レースだ!」と気合を入れるが、国際試乗会初日は一般公道を走行した。
ライディングポジションは前傾がそれほどきついわけではなく、ライディングモードによってエンジンレスポンスも調整可能。
990DUKEベースのエンジンは十分なトルクがあるため高回転を多用する必要がなく扱いやすい。4気筒エンジンのようにどこまでも回り続けるようなフィーリングではないため、使い切っているという感触も豊富だ。
990DUKEと比較すればフロント荷重が高く、スポーティなハンドリングといえるが、フロントヘビー過ぎることもなく、軽快性はしっかりと保たれている。

8.8インチのディスプレイはきれいにコックピットに収まっているだけでなく、タッチパネル機能を備えたことも新しい。欧州ではここにナビ機能も備わる。
このような機能を盛り込んできたことからもこのマシンが決して速く走ることだけに注力してきたのではないことが想像できるが、実際に「レディ・トゥ・ファンライド!」といったキャラクターが作り込まれていることを強く感じた。
2日目はサーキットへ移動。朝9時から30分×7本というスケジュールがKTMらしくて嬉しくなる。舞台となったセビリアサーキットは、新しい割には路面にうねりが多く、色んな意味でチャレンジングかつマシンの本性が暴かれるコースであった。

エンジンは低回転から十分なトルクを有し、ストレスなく加速していく。130PSでも十分過ぎるほどパワフルであるが、200PSオーバーのマシンのように肉体的にも精神的にも極限に追い詰められることなく、ライディングに向き合うことができる。
剛性感はありながら、適度に柔軟な車体はフィードバック性が高く安定感も損なわない絶妙なバランス。特徴的なウイングレットは最高速250km/h付近では約15kgのダウンフォースを発生させるという。
当初はもっとスッキリとしたデザインにするといった案もあったようだが、走行上でのメリットが大きかったことで採用されたという。その効果なのかは判断できなかったものの、高速域やブレーキング時に安定感があるマシンであることは確かであった。
一方で、切り返しポイントが連続する最終セクションでは、その機敏な運動性と正確なライントレース性に舌を巻いた。RCの名に恥じないサーキット性能。しかし、そこにとらわれすぎないトータルバランスの高さに感銘を受けた。
