まとめ:オートバイ編集部/協力:東京エディターズ
デザインの進化は“足し算の美”、“引き算の技”だった

「クラス最高峰をつくる」明確な開発方針
時は流れ、1980年の春。空前のバイクブームが渦巻く中、ライバル各社は次々と4気筒モデルを投入していた。2気筒のホークシリーズだけでは、もはや競争力の維持が難しい。そこでホンダは、400ccクラスにおける新たな象徴となる4気筒旗艦モデルの開発を決断する。
“ホンダの持てる技術を惜しみなく投入し、クラス最高峰のハイパワー4気筒スポーツモデルをつくる”その方向性は明確だった。
「開発責任者の野末さんは、できる限りエポックメイキングな存在にしようと努力していました。だからデザインも、シンプルでかっこいいものを目指そうと考えたんです」(佐藤氏談)
営業サイドからは“ヨンフォアのイメージを残してほしい”という要望もあったという。では、佐藤氏の頭の中にどこまでヨンフォアがあったのか。CBXのデザインに関する具体的な逸話は少なく、詳細は定かではない。ただし、ヨンフォアとCBXでは採用されたデザイン手法がまったく異なっていたことは、あまり知られていない。
ヨンフォアのデザインは、シートやタンクといった各パーツを個別に仕上げ、それらを積み重ねることで全体の一体感を生み出す“加法的”な手法だった。

CBX400Fのモックアップモデルでは、ブーメランコムスターホイールとキャストホイールの2パターンが検討されていた。
それに対しCBXでは、最初から車体全体を一つのまとまりとして構築する、いわば四輪開発的な“統合設計”の考え方が採用された。タンクからサイドカバー、そして“コンビネーションライト”と呼ばれるテールへと流れるように繋がる造形は、まさにそのアプローチの成果である。
一見して説明しにくいが、ヨンフォアが“足し算”によって構成されたデザインだとすれば、CBXは“引き算”によって完成したデザインといえるだろう。手法こそ異なるものの、この2台の400は誰もが認める稀代の名車であり、何より“かっこよくて、欲しくなる”存在である。

CBX400FといえばX型エキパイが象徴的だが、実は一般的なデザインのエキパイも検討されていた。
佐藤氏はこうも言う。
「本田宗一郎はよく言っていました。“自分が欲しいと思うデザインをつくれ。こんなバイクに乗りたい、と想像して形にしろ”と」
両者に通じる“共通点”は、形の類似ではない。“かっこよくて、所有したくなる”そんな本能的な魅力にこそあるのだろう。
そして付け加えるなら、佐藤氏が自身の作品の中で最も気に入っているのは、意外にも原付の「ハミング」だという。ヨンフォアやCBXとは結び付きにくいモデルだが、優れたデザインを生み出す感性は、常人の想像を超えたところに宿るものなのだ

後に登場するインテグラは、デザインスケッチの段階からすでにハーフカウル仕様のCBX400Fインテグラが検討されていた。そのままのスタイルで登場。
1981年、参考出品ながら予約殺到!

1981年10月、東京モーターショーで国内初お披露目されると、参考出品ながら予約が殺到した。発売は同年11月17日で、その年の販売期間は実質1カ月足らずだったが3564台を登録。翌1982年には3万1533台が登録され、トップセールスを記録した。なお、国内販売終了までの総登録台数は約6万1000台にのぼる
まとめ:オートバイ編集部/協力:東京エディターズ



