ホンダCB400FOUR、CBX400F、カワサキZ400FX、ゼファーは、日本の400cc空冷4気筒バイクを象徴する存在。それぞれが独自の個性と技術を備え、時代ごとにライダーの憧れとなったモデルだ。現在も高い人気と価値を持ち、その魅力は色褪せない。異なるデザインやコンセプトで400cc空冷4気筒の魅力を体現し、今なお多くの世代に渡って語り継がれている名車を振り返る。
文:太田安治/まとめ:オートバイ編集部

やっぱり日本にはヨンヒャクの4気筒が必要だ!(太田安治)

画像: やっぱり日本にはヨンヒャクの4気筒が必要だ!(太田安治)

ZX-4Rが示した4発の400復活の兆し

2023年7月にZX-4Rが発売された際、市場の反応は賛否に分かれた。再び4気筒400ccモデルを送り出したカワサキの姿勢を称賛する声がある一方で、スポーツ色の強いキャラクターや4気筒エンジンによる高価格が、現代のライダーに受け入れられるのか疑問視する意見もあった。

しかし、小型二輪(250cc超~400cc以下)の国内販売ランキングを見ると、ZX-4Rは2023年にエリミネーターGB350に続く3位、2024年はその2台とNinja400に続く4位と、確かな需要があることを証明している。2026年にはカワサキがネイキッドのZ400RS(仮称)を、ホンダが完全新設計のCB400スーパーフォア(仮称)を国内投入するという噂があるが、その可能性はかなり高いだろう。

国内の二輪市場はライダー人口の減少により縮小傾向にあるものの、新たな400ccモデルが登場する背景には、インドをはじめとしたアジア諸国での需要変化が挙げられる。これらの国々では、小型オートバイが生活の足として定着しているが、経済成長に伴ってより排気量の大きなモデルが趣味の乗り物として人気を高めている。

趣味性が増せばステータスを重視するのが常であり、ハイメカニズムかつハイパワーな4気筒400ccに憧れるライダーは多い。こうした新興国市場の需要に応える形で開発されたモデルが、日本にも投入されているという構図だ。

日本では1975年の免許制度改定により、大型二輪免許の取得が著しく難しくなった。その結果、ライダーの憧れは当時の国内上限排気量である750ccから400ccへと移行した。それまで中型クラスのスポーツモデルは2気筒エンジンが主流だったが、750ccと同様の4気筒エンジンを望む声の高まりを受け、1979年に登場したのがカワサキZ400FXである。

重厚な車体デザインと4気筒エンジンのスムーズさで大ヒットし、ヤマハは1980年にXJ400、スズキは1981年にGSX400Fを相次いで発売。以降、「400ccといえば4気筒」という流れが定着した。

画像: カワサキの歴代空冷4発400cc。左からZ400FX、Z400GP、GPZ400FII、ゼファー。

カワサキの歴代空冷4発400cc。左からZ400FX、Z400GP、GPZ400FII、ゼファー。

4気筒400ccの決定的な存在となったのが、1981年11月発売のホンダCBX400Fだ。クラス唯一のDOHC4バルブエンジンは48PSを発生し、実測で180km/hオーバーの最高速を記録。新形状コムスターホイール、アルミ鋳造スイングアーム、インボードディスクブレーキ、前後セミエアサスペンションなど最新装備を満載したCBXは、発売と同時に爆発的な人気を得た。

それだけでなく、市販車をベースにしたプロダクションレースブームを巻き起こし、特に1980年に始まった鈴鹿4時間耐久レースは人気が急上昇。CBX、Z、XJ、GSXといった国内4メーカーの主力モデルが速さを競い合った。

画像: 当初、鈴鹿8時間耐久のサポートレースとして始まった4時間耐久だが、1980年代後半には決勝出走60台枠に対して600台を超えるエントリーが集まり、「ライダーの甲子園」と呼ばれるまでの人気を誇った。

当初、鈴鹿8時間耐久のサポートレースとして始まった4時間耐久だが、1980年代後半には決勝出走60台枠に対して600台を超えるエントリーが集まり、「ライダーの甲子園」と呼ばれるまでの人気を誇った。

画像: 市販車をレース用にモディファイしたマシンで戦うのがプロダクションレース。その頂点とされたのが、鈴鹿4時間耐久レースのF3クラスである。

市販車をレース用にモディファイしたマシンで戦うのがプロダクションレース。その頂点とされたのが、鈴鹿4時間耐久レースのF3クラスである。

画像: 改造範囲の広いF3クラスには、関東・関西の有力コンストラクターも多数参戦し、エンジンおよび車体チューニング技術を磨いていった。(写真:モリワキZ400FX改)

改造範囲の広いF3クラスには、関東・関西の有力コンストラクターも多数参戦し、エンジンおよび車体チューニング技術を磨いていった。(写真:モリワキZ400FX改)

画像: 1984年の鈴鹿4耐では、チーム・ハニービーのVF400Fが優勝。この年以降、サーキットの主役は水冷4スト4気筒400ccモデルと、水冷2スト2気筒250ccモデルとの戦いへと移行した。

1984年の鈴鹿4耐では、チーム・ハニービーのVF400Fが優勝。この年以降、サーキットの主役は水冷4スト4気筒400ccモデルと、水冷2スト2気筒250ccモデルとの戦いへと移行した。

熱狂的なブームによってモデルチェンジのサイクルは急速に短くなり、同時にパワー競争へと突入する。Z400FXは43PS、XJ400とGSXは45PS、CBXは48PSを発生。1983年以降はパワー増大に対応するため冷却方式が空冷から水冷へと移行し、スズキGSX-FWが50PS、ヤマハXJ-ZSが55PS、ホンダCBR-Fが58PS、スズキGSX-Rは59PSに達した。操縦性もデザインもよりサーキット志向となり、1990年代初頭にかけて「レーサーレプリカブーム」へとつながっていく。

こうしたレプリカブームに対するカウンターとして、1989年に登場したのがカワサキ・ゼファーである。「速さ」を潔く捨て、46PSの空冷エンジンをシンプルで端正なデザインの車体に搭載。扱いやすいパワー特性と疲れにくいライディングポジション、快適な乗り心地で幅広い層から支持を集め、「ネイキッド」という新たなジャンルを確立した。

1992年にはホンダが水冷エンジンでパワーにも妥協しないCB400スーパーフォアを登場させ、2022年10月に生産終了するまで、400ccネイキッドを代表する存在として高い人気を維持した。

振り返れば、カワサキが火をつけ、ホンダが定着させるという構図が繰り返されてきた。2026年には、両社による4気筒400ccブームの再来は間違いないだろう。

文:太田安治/まとめ:オートバイ編集部

関連のおすすめ記事

This article is a sponsored article by
''.