まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。
カワサキ「ZXR400(ZX400H)」(1989年)概要

Kawasaki
ZXR400
1989年
総排気量:398cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:765mm
車両重量:188kg
発売当時価格:73万9000円
バイクとしてはよくできているのだが、なぜか市場での人気は低いモデルというのがある。カワサキのZX-4はそうした1台だった。なにしろ、GPZ400R(1985~)の方がたくさん売れてしまったという、不名誉な実績を残してしまったのだ。
その原因のひとつは、他社のこのクラスがおしなべてレーシーなイメージを持つのに対し、ZX-4はZX-10に似てはいたがあまりにもおとなしかったからである。ならば、ワークスレーサーZXR-4の血を注ぎ込み、押しも押されぬレーサーレプリカを作ろうではないか、これがカワサキの回答である。
ベースこそZX-4だが、パーツにして95%ほどが新しいというから、これはもう完全なニューモデルと呼んでいいだろう。おまけに、250と同じく、スポーツプロダクションレースのベースとして、ZXR400Rも同時開発した。このミッションのレシオは、1~6速までのすべてがスタンダードとは異なる。1988ワークスと同じものだ。ただし、キャブレターやサスは250と違ってスタンダードのままであり、ミッション以外で異なる仕様なのは、FRPのシートカウルのみだが。
エンジンは、燃焼室形状、バルブ重量、ポート段差、クランクウェブ重量などとほとんど全面的に見直され、キャブレターの大口径化、デジタルイグナイターの採用、新設計の4-2-1エキゾーストなどによって、その変更をさらにバックアップするかたちである。
フレームは新設計、メインパイプは30×120mmのアルミ日の字断面とされるが、ライダーのひざの当たる部分に丸みを持たせるという芸の細かいことをしている。スイングアームにはスタビライザーが入って見るからに高剛性である。

そしてフロントフォークはZXR250と同じくUSD(アップサイドダウン=倒立)。インナーチューブのΦ41mmは同寸でも、車重、パワーが異なるから、よく似てはいるが、実は完全に別の製品だ。フォークピッチも250の200mmに対し、400は210mmとやや広くとられている。
ここまでやってくると、なぜZXR750が正立なのかという疑問が生まれてくるほどだ。ただ本当のことを言えば、このUSDは正立よりほんの少し重い。これはブレーキキャリパーを取り付けるブラケットが、大径ブレーキを取り付ける関係上、どうしても大型にならざるを得ないためという。しかし、同剛性の正立と比べれば軽量だし、250、400ともプリロードと12段階に調整できるダンピングアジャスターが付く。
ブレーキの話が出たついでにするなら、250がリアに固定キャリパーを使うのに対し、400はフローティングとやや高級である。また、250の5本スポークに対し、こちらは3本スポークだ。
走ってのフィーリングは250とかなり異なる。
エンジンは4000rpmから十分に使え、15000rpm(メーター読み、点火カットは14750rpm)まで気持ちよく伸びる。上へ行くほどパワフルであり、その上パワーの出方にメリハリがある。シャキッとしているのだ。振動は皆無ではないが、とにかく気持ちが良く、並列4気筒に時としてあるモワッとしたことがまったくない。
よくしつけられた優等生の250に対し、少々やんちゃでいたずらではあるが、女の子にモテるタイプ、といったところか。
ハンドリングにも同じような差がある。ひと言で言えば気が抜けない。フルに性能を発揮させようとすれば、常に緊張を保つ必要があるのだ。誰にでも優しい250とは、この辺が違う。これは多分、最終的な仕上げを担当したテストライダーの好みなのだろう。
ところがもう1台の400Rに乗ると、よりレーシーであるはずのこちらの方が全体に滑らかである。試乗車のタイヤがノンオリジナルのライディーンだったことも関係するのかもしれないが、スロットルによるリヤサスの動きなどもこちらのほうが掴みやすく、その分イージーに走れたりしてしまう。やはりサーキットには専用車がよろしい、などと思いつつ筑波サーキットをラップする。
レーサーレプリカはレーシーなほどよい。これは当然のことだ。そしてカワサキZXR400は、十二分にレーサーの香りを漂わせている。一気に250から750までのレプリカを揃えたカワサキの意気込みが感じられるモデルである。
