1983年にはRG250Гが登場、翌1984年にはGSX-Rがデビュー。レーサーレプリカブームを切り拓いた2台のスズキ車にはライバル各社も追随し、優れたモデルを次々と投入してきた。GSX-Rはエンジンの冷却方式やフレームの構造を変えながら年式を重ね、レースにおける実力を高めていった。
写真:平野輝幸

スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

フレーム

画像1: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

この4型から採用されたNEW DC(Dual Cell)-ALBOXフレームは、ヘッドパイプとスイングアームピボットを縦長のパイプで直線的に結ぶのが外観上の大きな特徴で、従来モデルとの決定的な違いはアンダーパイプを廃し、エンジンを強度部材として活用するツインスパーへと変化したことだ。

フレーム剛性は約50%高めた一方、重量を約2kg軽減することに成功。短いシートレールはアルミ角パイプで作られ、メインフレームと溶接で接合される。スイングアームは先代と同様にアルミ製だが、左右レールを多角断面からシンプルな四角断面に変更、チェーンアジャスターの形状も異なる。

ホイールベースは1405→1375mmに短縮され、25度のキャスターは不変だがトレールは101→95mmに減少。左右ステップは、ステップバーとブレーキ/チェンジペダルを同軸で装着する。ヒールプレートに並ぶ肉抜き穴がレーサーを連想させる。


ヘッドライト回り&エアインテーク

画像2: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

吸気系にはSCAI(Suzuki Condensed Air Intake)を採用。アッパーカウルのヘッドライト両脇には開口部があり。

画像3: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

そこに接続されたダクトのうち右側はシリンダーヘッド上部に冷気を放出して、エンジン後方からに上部に移動したエアクリーナーの周囲にある熱を強制的に排除。

画像4: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

左側ダクトはエアクリーナー吸入口の近くまで伸ばされ、冷気を吸入口に送り込み。冷えた新気を積極的に送り込むことで充填効率を高め、燃焼効率の向上を狙っている。


メーター&レバー回り

画像5: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

メーターは、中央に回転計、左下に速度計、右に水温計という、ライバル勢と同様な配置。タコは上限が18000rpmでレッドゾーンは15000rpmから。スピードは180km/hスケールだ。キーシリンダーの奥には、ウインカーやハイビーム、ニュートラル、

オイルプレッシャーなどのインジケーターランプを配置するのが見える。セパレートハンドルのクランプ部は、直線的な造形のトップブリッジ下に置かれる。フロントフォークIII型から3mm大径化したΦ41mm正立で、伸び側と縮み側で独立した減衰力発生バルブを持つインナーロッド式を新たに採用。トップキャップにはプリロードの調整部を備える。

画像6: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

別体式リザーバータンクを持つフロントブレーキのマスターシリンダーは、ダイヤルでレバーの開き角が4段階に変化させられる。

画像7: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

ワイヤ式クラッチレバーは板バネによってアジャスターの動きを規制し、不用意な変化を防ぐ。


エンジン

画像8: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

DOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、Φ56×40.4mmのボア×ストロークより398.0ccを得るのは先代と同じだが、水冷、空冷、油冷の3冷却方式を合わせ持つSATCS(Suzuki Advanced Three-way Cooling System)に代わり、初代GSX-Rと同様な水冷に冷却方式を改めた。ピストンを軽量化、クロモリ製コンロッドは大端部の締めつけを通しボルトからボルト締めに変更。

画像9: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

吸排気バルブは、ステム径をΦ4.5mmへと細くする一方、傘径をIN/EX:Φ22.4/Φ20mmに大径化。59PS/12000rpmの最高出力は不変だが、最大トルクは、10500rpmの発生回転数を変えずに、ピーク値を3.8→3.9kgf・mとわずかに増やしている。燃料供給も新作に置き換えられており、ピストンバルブの形状を円筒から板+半円柱に改めてレスポンスを向上したスリングショット・キャブレターを採用。メインボアはΦ32mmに拡大され、全開時の混合気の供給を安定させた。


マフラー

画像10: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

排気系は、右1本出しから左右2本出しに変わった。1/2番と3/4番のエキゾーストパイプを結ぶ円筒形のサブチャンバーを配し、2/3番はパイプで連結。SPES(Suzuki Power Up Exhaust System)と呼ばれるこの機構は、理想的な排気脈動を得るとともに充填効率を向上、低中回転域で約20%のトルクアップを果たした。


フロント&リアブレーキ

画像11: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

フロントブレーキは3型とは異なり、Φ290mmフローティングディスクをダブルで装着。ドリルホールも多く開けられる。キャリパーは、Φ34mm+Φ30mmの異径対向4ピストンで、ディスクの回転方向の前後で異なる面圧を均一化、パッドが挟み込む力の分布を理想的なものとして、わずかなブレーキレバーの引きに繊細に反応する操作感を求めた方式だ。

異径ピストンはスポーツモデルにおいて長らく主流の装備となったが、ラジアルマウントが一般的となっている今では同径のピストンを並べることが多くなっている。

画像12: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

リアブレーキは対向2ピストンキャリパーとΦ210mmソリッドディスクの組み合わせ。写真下部に見える、キャリパーブラケットの動きを規制するためのアルミ製トルクロッドは車体前側に伸びてフレームに接続され、キャリパーはフローティングマウントされる。制動時の姿勢変化を抑えるための機構として考案、当時は多くのモデルに採用されたが、現在では使われなくなった技術だ。


リアサスペンション

画像13: スズキ「GSX-R400(GK73A)」の各部装備・ディテール解説

リアサスペンションは下部にリンクを備えるモノショックで、フレームとリアショック下端部をベルクランクで連結し、ベルクランクの中間部とスイングアーム上側をアームで接続する。スズキはフルフローターと呼んだが、構造的には他社が採用するボトムリンク式モノショックと近いものだ。

初期型は16/18インチの6本スポークホイールを採用したが、2代目では同形状ながら2.50-17/3.00-17の前後17インチに変化。3代目では中空3本スポークの17/18インチとし、4代目は形状や3.00-17/4.00-18のサイズを変えずに軽量化と空気抵抗を改善した新作とした。F:110/70R17、R:140/60R18のタイヤサイズも変化はない。

スズキ「GSX-R400(GK73A)」(1988年)の主なスペック・当時価格

全長×全幅×全高1995×695×1110mm
ホイールベース1375mm
最低地上高125mm
シート高735mm
車両重量160kg(乾燥)/177kg(装備)
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量398cc
ボア×ストローク56.0×40.4mm
圧縮比11.8
最高出力59PS/12000rpm
最大トルク3.9kgf・m/10500rpm
燃料供給方式キャブレター(BST32)
燃料タンク容量15L
変速機形式6速リターン
キャスター角25゜
トレール量95mm
ブレーキ形式 前・後Φ255mmダブルディスク・Φ176mmディスク
タイヤサイズ(前・後)110/70-17・140/60-18
当時価格(1988年)69万9000円

写真:平野輝幸

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