2ストローク250ccがきっかけとなりTTF-3レースブームとともに盛り上がったレーサーレプリカブーム。その一翼を担ったのが4ストローク400ccだ。2ストローク250と同様にスズキが先鞭を付け1980年代を席巻していくことになる。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※この記事は2025年7月2日に発売した『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』に掲載したものを一部編集して公開しています。

1980~90年代は4ストローク・400ccレーサーレプリカの全盛期

画像: 1980~90年代は4ストローク・400ccレーサーレプリカの全盛期

スズキ「GSX-R」がパイオニア

1984年、4ストローク400ccのフルカウル付きモデルのホンダCBR400Fエンデュランス、同VF400Fインテグラ、スズキGSX-R、ヤマハFZ400Rが登場する。TTF-3クラスの大ブームとあいまって、400ccクラスのレーサーレプリカ全盛期が訪れる。

ちなみにTTF-3は4ストローク400cc以下または2ストローク250cc以下の公道用市販車を改造して競うクラスで、人気の爆発によって全日本選手権では1983年にノービス対象で始まり、1984年から最高峰の国際A級クラス(当時)にも拡大されていた(1991年まで続く)。

この400ccのレーサーレプリカにおいても、スズキがパイオニアとなった。RG250Γ登場翌年の1984年3月、アルミ製フレームに水冷並列4気筒エンジンを搭載するGSX-Rを発売。最高出力は自主馬力規制上限の59PSだったが、ライバルよりも10kg以上も軽い車重による動力性能の高さから、こちらも大人気に。

さらに、ヨシムラがGSX-R400で1986年と1987年の鈴鹿4時間耐久を連覇するなどレースでも大いに活躍。その後も改良が続けられ、1997年まで販売された。

画像: SUZUKI GSX-R

SUZUKI
GSX-R

1981年4月のGSX400Fで並列4気筒400ccに参入したスズキはその空冷エンジンにクラス初の4バルブを投入していた。水冷化した1983年のGSX400FWを経て、1984年に革新的なGSX-Rを発売した。RG250Гに続きアルミフレームを採用、2灯式ライトを持つハーフカウルを備えた姿は耐久レーサーを彷彿とさせた。後にGSX-R400に発展し、多くの歴代車を生んだ。

ホンダ「CBR400RR」と「VFR400R」、さらに「RVF400」へ

ホンダは、1984年5月にCBR400Fエンデュランスを発売するが、水冷で59PSのライバルに対し空冷の48PSは魅力に欠け、1986年7月に水冷+アルミフレームのCBR400Rにスイッチする。だがこれはフルカウルで近未来のフルカバードスタイルを提案したが市場に受け入れられず販売面で苦戦した。

そして1987年12月にレーサースタイルで投入されたCBR400RRが、それらの不振を返上したのである。その後CBR400RRは1990年2月に全面刷新して完成度を高め、後年、名車と謳われるようになった。

そのCBRシリーズとは別に、本来の意味でレーサーレプリカと言えるのは、水冷V型4気筒のVFRシリーズである。1986年3月、TTF-3の常勝ワークスレーサーとなっていたRVF400のレプリカとしてVFR400Rが登場。

翌年からプロアームの採用などモデルチェンジを繰り返し、1994年1月にはワークスレーサーと同じ車名のRVFに全面変更を行う。400/250レーサーレプリカとしては最も遅い2001年まで販売されていた。

画像: Honda CBR400RR

Honda
CBR400RR

フルカバードで、カムギヤトレインを採用した並列4気筒を持つCBR400Rを元に、主として車体に手を加えたCBR400RRを1988年1月に発売。さらにエンジンや車体を一新した第2世代を1990年3月にリリース。フレームやスイングアームの設計にもレーサーの技術が取り入れられた。


画像: Honda RVF400

Honda
RVF400

TTF-3クラスは当初並列4気筒のCBR400とV型4気筒のRVF400を投入、1985年以降は一貫してV4のRVFでレースを戦ってきたホンダは、そのレプリカたる公道モデルの開発も手がけた。初代は1986年登場のVFR400Rで、カムギヤトレインの90度挟角V4をアルミツインスパーフレームに積む。

2世代目となる1987年発売の車両では、スイングアームが片持ちのプロアームに変化。1990年に足まわりをより充実化し、その後もカラー変更や特別色の追加を行ったのち、1994年に下写真のRVFとなった。1996年に小変更を行ったものが同系最終モデルとなっている。

ヤマハ「FZR400R」はレースでも大活躍

一方、ヤマハの400レプリカはスズキのGSX-Rと前後して1984年5月に発売されたFZ400Rで始まる。前作のスタンダードモデル、XJ400Z譲りのエンジンをスチールダブルクレードルフレーム、ハーフカウルに組み合わせた上でTTF-3初代チャンピオンのファクトリーFZR400と共同開発という触れ込みと、その扱いやすさとで人気を得る。

その後1986年5月、アルミデルタボックスフレームにFZ750由来のGENESIS思想を投影した前傾45度並列4気筒を搭載したFZR400がデビューするとその人気は絶大となる。さらに翌年4月に限定販売されたEXUP+クロスミッション+シングルシートのFZR400Rはレースでも大活躍した。

その後、1989年12月に3世代目のFZR400RRへと全面刷新され、最後はSP仕様のみが1995年まで販売された。

画像: YAMAHA FZR400

YAMAHA
FZR400

XJ400Zをベースとするレーサー、FZR400のレプリカとして、スチールフレームに並列4気筒を搭載するFZ400Rを発売。1986年にはアルミフレームのニューモデル、ファクトリーYZF400レプリカのFZR400が登場するが、FZ400Rも継続され、同車は最終型となる1987年登場の3型でフルカウル化された。対してFZR400(上写真)は、車名を変えながら1994年まで生産された。

カワサキは「ZX-4」を投入

カワサキは1984~1987年にはレース活動を休止していたことや、ボリュームあるデザインながらコンパクトなストリートスタイル・フルカウルを持ったGPZ400Rが高い人気を得ていたことから、レーサーレプリカの登場は1988年1月まで見送られていた。

だが、そこで発売されたZX-4は純レーサーレプリカとは言いがたいスタイルから人気が盛り上がらず、本当にカワサキのレーサーレプリカファンが満足したのは翌年1月に追加されたZXR400からだ。同車は完成度が高く、SP仕様のZXR400Rとともに2000年まで販売された。

画像: 1988年に登場したZX-4のエンジン。高性能を追求した作りとなっており、吸気ポートを直線化するためのダウンドラフトキャブレターを採用し、高出力化だけでなく、小型・軽量化が追求された。今日の高性能エンジンの基礎と言える。レーサーレプリカと公言してはばからないぐらいだから、フレームとエンジンの基本構成には当時の最先端技術が詰め込まれていた。

1988年に登場したZX-4のエンジン。高性能を追求した作りとなっており、吸気ポートを直線化するためのダウンドラフトキャブレターを採用し、高出力化だけでなく、小型・軽量化が追求された。今日の高性能エンジンの基礎と言える。レーサーレプリカと公言してはばからないぐらいだから、フレームとエンジンの基本構成には当時の最先端技術が詰め込まれていた。

画像: Kawasaki ZX-4

Kawasaki
ZX-4

GPZ400RやGPX400Rなど汎用度の高いモデルでファンを獲得してきたカワサキは、初のレプリカとしてZX-4を1988年に発売。翌1989年には、倒立式フォークを採用するなど、よりレーサーに近い存在としたZXR400が登場。

ZX-4のカットモデル。ダウンドラフトキャブレターを有効に働かせるためのエアボックスが、かつて燃料タンクだった部分の前半部を占めていることが分かる。フレームにツインスパーを採用するのが当たり前になったのも、レーサーレプリカブームによる。

画像1: GSX-Rが扉を開いた80年代4スト400ccレーサーレプリカブームを解説! 飛躍的な技術革新が進み各社からこぞって高性能マシンが登場

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※この記事は2025年7月2日に発売した『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』に掲載したものを一部編集して公開しています。

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