まとめ:オートバイ編集部/協力:RIDE編集部
ヨシムラ「トルネード1200ボンネビル」各部装備・ディテール解説

ベースモデルは1987年型のGSX-R1100だ。“ヨシムラGSX-R”のロゴが入るタイミングカバーや、中央の盛り上がった部分に“ヨシムラ”の文字が刻まれたスタータークラッチカバーは、レーサーから外して取り付けたものだ。

搭載される空油冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、58mmのストロークのまま、純正のΦ76mmより2mm大径のΦ78mmピストンを使用することで、1052.5cc→1108.6ccに排気量を増大。ST-2カムシャフトやバルブスプリングセットなどフルキットを装着し、キットに用意される吸排気系パーツと相まって、最高出力は純正の130PSから40PS増となる170PSまで引き上げられた。

キャブレターは、ミクニと共同開発したΦ40mmで、ヨシムラワークスが使うのと同じマグネシウムボディを採用。このキャブが特別なのは、本体の材質だけでなく、スライドバルブ一つ一つに手作業で8個のベアリングを装着している点にある。4基全体で合計32個ものベアリングを使用することで、あらゆる状況で確実な作動を実現し、優れたレスポンスを生み出している。このキャブはスペシャルパーツとして限定販売され、価格は120万円前後とのこと。エアクリーナーは持たず、非常に短いエアファンネルが装着されていた。

排気系は受注生産のフルチタンのヨシムラ・サイクロンを採用。4本のエキパイにはサブチャンバーのデュプレックス(Duplex:2重の、2倍の、という意味を持つ形容詞)が備え付けられていた。ちなみに、ヨシムラ製マフラーが材質をオールステンレスとしたのは1990年、チタンやカーボンなどを量産市販品に使うようになったのは1992年から。このボンネビルが登場した1980年代後半には、チタンはレーサーなどごく限られたマシンにしか使われていなかった。

ベース車のクラッチは油圧式だが、ボンネビルではワイヤー式に変更。微妙な操作感で優れるからで、クラッチカバーの内側にアルミのスペーサーを装着、ワイヤー作動用のラック&ピニオンを収めるスペースを得ている。

フロントブレーキには、ヨシムラのロゴが入ったアルミ製ディスクハブとΦ310mm鋳鉄ディスクが採用され、ニッシンの対向式異径4ピストンキャリパーが組み合わされている。一方、リアブレーキは純正のままだが、制動力や反応が甘くなるよう調整されていた。

リアショックはアルミから削り出したというショーワのレース用で、プリロードと伸縮両減衰力可変式。リアショックはレース用のスペシャルパーツとして50万円弱で限定販売されていたそう。
ヨシムラ「トルネード1200ボンネビル」スペック
| カテゴリ | 項目 | スペック値 |
|---|---|---|
| 重量/寸法/容量 | 全長×全幅×全高 | 2001mm×720mm×1160mm |
| 最低地上高 | 100mm | |
| ホイールベース | 1460mm | |
| キャスター/トレール | 25.5度/104mm | |
| 最小回転半径 | 4.2m | |
| 乾燥重量 | 179kg | |
| 燃料タンク容量 | 19L | |
| エンジン | エンジン形式 | 空油冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 |
| ボア×ストローク(比率) | 78.0mm×58.0mm(0.743) | |
| 排気量 | 1108.6cc | |
| 最高出力 | 170PS | |
| 気化器 | ヨシムラ・ミクニΦ40mmマグネシウムボディ (スペシャルパーツ標準仕様はTMX34) | |
| 始動方式 | セル | |
| 潤滑方式 | ウェットサンプ | |
| 点火方式 | トランジスタ | |
| 点火タイミング | 13°BTDC/1500rpm~35°BTDC/2350rpm | |
| 点火プラグ | NGK J9A | |
| バッテリー | R7-4A 12V/7Ah | |
| 出力伝達系 | クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング・ワイヤー作動 (油圧作動から変更) |
| 変速機 | 5段(左足動 1UP/4DOWN) | |
| 変速比 | 1速 2.385(13/31)/ 2速 1.632(19/31)/ 3速 1.250(20/25) / 4速 1.045(22/23)/ 5速 0.913(23/21) | |
| 1次減速比 | 1.622(45/73) | |
| 2次減速比 | 3.071(14/43) | |
| ドライブチェーン | 530×112L | |
| シャシー | フレーム形式 | アルミ製ダブルクレードル |
| サスペンション(前) | テレスコピックΦ41mm正立式 (ヨシムラ・ショーワ) | |
| サスペンション(後) | スイングアーム・モノショック (ショックユニット:ヨシムラ・ショーワレース用) | |
| ショックユニット調整機構(前) | プリロード | |
| ショックユニット調整機構(後) | プリロード、伸縮両減衰力 | |
| ブレーキ(前) | Φ310mmフローティングディスク+ 対向式異径4ピストンキャリパー (ディスク:ヨシムラ、キャリパー:ニッシン) | |
| ブレーキ(後) | Φ220mmソリッドディスク+ 対向式2ピストンキャリパー(純正) | |
| ホイール(前) | 3.50×17(ヨシムラ・マービック マグネシウム) | |
| ホイール(後) | 5.50×17(ヨシムラ・マービック マグネシウム) | |
| タイヤ(前) | 12/60-17(ミシュラン・カットスリック) | |
| タイヤ(後) | 18/67-17(ミシュラン・カットスリック) |
まとめ:オートバイ編集部/協力:RIDE編集部




