文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ヤマハ「XMAX ABS」インプレ(太田安治)

YAMAHA
XMAX ABS
2025年モデル
総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒
シート高:795mm
車両重量:183kg
発売日:2025年4月14日
税込価格:73万7000円
スポーティな乗り味にヤマハの拘りを感じる
スポーツライディングの経験を積んでいるライダーほど、XMAXのハンドリングに対する拘りを実感するはずだ。フロントブレーキを残したままの寝かし込みでもタイヤの接地感が掴みやすく、そのまま深いバンク角に持ち込んでも想定したラインをしっかりとトレース。
タイトターンでのクイックな切り返しでもオツリが来ない車体設定は、たとえコミューター要素の大きいスクーターであってもスポーツ性を犠牲にしない、というヤマハ開発陣の思いが伝わってくる。
この操縦フィーリングを実現しているのは通常のオートバイと同じく上下にブラケットを備えたフロントフォークと、ダブルクレードル型に近い構成のメインフレーム、ユニットスイングのピボット位置やリアサスの取り付け角度といったディメンションを入念にまとめ上げているからだ。
この2025年モデルは800g軽量化した新作マフラーを装備してリアタイヤの路面追従性が高められ、ギャップ通過時の突き上げも減っている。

単気筒のエンジンは吹け上がりの軽さと低振動が好印象。183kgの車体ながらスロットルを一気に開けばゼロ発進も低中速域の加速も鋭く、80km/hを超えても小気味よく速度を伸ばしていく。今回の試乗では体感できなかったが、トラクションコントロールの設定がアップデートされたとのことなので、濡れた路面、ホコリの浮いた路面でホイールスピンに慌てることもないだろう。
一軸バランサーの採用でエンジンの振動は少なく、100km/h巡航ではストレスフリー。120km/hあたりになるとハンドル回りに振動が出てくるが、手をしびれさせるような高周波振動ではなく、許容範囲だ。
そうしたスポーツ性と引き換えになりがちな実用性を高めてくれるのが2025年型から新装備された電動スクリーン。左ハンドル部のスイッチ操作により、高さを無段階で10cm可変できる。
最も高い位置まで上げると走行風はヘルメットの上部をかすめる程度になり、形状変更されたフラッシャーカバーの整流効果で腕に当たる走行風も減っているから、高速クルージングや雨天、寒い時期の快適性は大幅に上がった。ハンドルスイッチで操作でき、TFTメーターにメニューが表示される専用グリップウォーマーがオプション設定されていることも見逃せない。
また、スマートフォンのナビアプリと接続し、TFTディスプレイに地図を表示する機能も実装。ハンドル左下にあるポケットにスマートフォンを入れ、ポケット内にあるUSBソケットから給電すれば落下やバッテリー切れの心配なくツーリングを楽しめる。
ハンドリングと加速性能のスポーティさはスクーターの中でもトップレベルで、街乗りとツーリングの適性も大きく高めたのが2025年型XMAX。オートバイを操る爽快感と、スクーターらしい移動の快適性を求める欲張りなライダーに最適な一台だ。