伊藤真一さんにとって、若いころはあまり興味の対象ではなかったカブ系モデルですが、近年の当連載での各機種の試乗をとおして、だんだんカブ系の魅力がわかってきた…とのこと。今回取り上げるのは、今人気沸騰中のカブ系の注目機種、CT125・ハンターカブです!
談:伊藤真一/写真:松川 忍/まとめ:宮﨑健太郎
画像1: 【深掘りインプレ】ホンダ「CT125・ハンターカブ」(伊藤真一のロングラン研究所・2022年)

伊藤真一(いとうしんいち)
1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2022年は監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いて全日本およびアジアロードレース選手権などに参戦。

ホンダ「CT125・ハンターカブ」インプレ(伊藤真一)

画像: Honda CT125 HUNTER CUB 総排気量:124cc エンジン形式:空冷4ストOHC2バルブ単気筒 シート高:800mm 車両重量:120kg 税込価格:44万円

Honda CT125 HUNTER CUB

総排気量:124cc
エンジン形式:空冷4ストOHC2バルブ単気筒
シート高:800mm
車両重量:120kg

税込価格:44万円

わずか15cc、されど15cc? 同じオフ志向のクロスカブに比べて、エンジンの力強さが際立つCT125

CT125・ハンターカブですが、実は1台買ってみようかなと思っているモデルです。普段の「足」として良いかな、と思いまして…。CT125といえば、アウトドアやキャンプのイメージですが、自分は積極的にそういうことをしようとするタイプではないのです。昔、世界ロードレースGP(現MotoGP)にフル参戦していたころは、ヨーロッパではレースとレースの間はキャンプ場で暮らすことが多かったので、キャンプ的なものには慣れはありますけど、キャンプすること自体を目的にすることは、今はないですね。

ただ、今のキャンプブームはバイク人気にも繋がっているみたいなので、とても良いことだと思ってます。このCT125も、アウトドアやキャンプが好きな人に注目されているモデルとのことですけど、大きなリアキャリアを備えているので荷物がたくさん積めますし、フロント用などのキャリアを追加すればさらに積載能力を高めることも可能です。

この連載でカブ系モデルを取り上げたとき、毎回のように高校時代に新聞配達のバイトでカブに乗っていた思い出について触れてしまいますけど、CT125のリアキャリアを見たとき、「これならば新聞をスゴイ量積むことができるな…」と、またまた昔の記憶からそういうことを思ってしまいました(苦笑)。

画像1: ホンダ「CT125・ハンターカブ」インプレ(伊藤真一)

2020年にCT125がデビューする前、ホンダはオフロード志向のカブ系モデルとしてクロスカブ110をラインアップしていますが、個人的にはなんでクロスカブがあるのに、同じようなオフロード志向のCT125を登場させるのだろう? 一体どういう棲み分けなのだろう? と考えてしまいました。今回実際にCT125に乗ってみて、その疑問を解消しようと意気込んでいたのですが、乗り出してすぐに両車が全然違うことがよく理解できました。

まず、わずか15ccの排気量差ですけれども、CT125は排気量が大きいだけあってとても良く走りますね。CT125のエンジンはモデルチェンジする前のスーパーカブCT125と同じボア・ストロークですが、今年の春に新型C125を試乗したときに受けた印象より、今回のCT125のエンジンフィーリングの方が良いな、と思いました。

C125の新旧のエンジンフィーリングを比較したときは、そんなに大きな違いを感じなかったので不思議なのですが、CT125は振動がなくて滑らかで、シフトフィールとクラッチフィールも上質に思えました。

旧型C125とCT125はボア・ストロークこそ一緒ですが、CT125のエンジンは新しい分、いろいろ改良されているのかな? とも思いました。CT125の外観的に好ましく感じたのは、車体に樹脂製パーツを多用しているのに、あまり「プラスチッキー」ではない点です。

プラスチッキーな感じは高級感に欠ける印象につながりやすいと思っているのですが、CT125の外観からはそういうチープな印象を全く受けず、所有欲を満たしてくれる質感の高さがあります。クロスカブとの価格差は8万円弱ですが、CT125にはその分だけしっかり上質な印象でした。

画像: 「自分がCT125を所有しても、多分オフロードを積極的に走ることはないと思います」と言いつつも、楽しげな表情でオフロードの走りっぷりをテストしていました。

「自分がCT125を所有しても、多分オフロードを積極的に走ることはないと思います」と言いつつも、楽しげな表情でオフロードの走りっぷりをテストしていました。

ベースとなったスーパーカブC125とは、全く異なる印象のCT125の操安性に興味津々!?

CT125の車体はC125をベースにしていますけど、CT125の方はホイールベースが少し伸びていたり、最低地上高やシート高が上がっています。またヘッドパイプまわりの補強や、フレーム各部の剛性バランス最適化などが施されており、CT125のキャラクターに合った設定になっています。

そしてフロントフォークは両車ともテレスコピックですけど、CT125の方は一般的なオートバイ型のトップブリッジを備えていて、ストローク量もC125用よりも少し増えています。

試乗前はC125とCT125では、ハンドリングのキャラクターは似たような感じなのかな? と想像していましたが、実際に走らせてみると全然違いました! CT125の足まわりはとても良いですね。見た目的にフロントのテレスコピックフォークは、一般的なスポーツバイクに比べるとサイズ的に頼りない印象があったのですが、意外なほどに動きが良かったです。

C125のサスペンションは、前後ともに一緒に動いていて、何と言えば良いのか…車体の「上物」が全部一緒にふわふわと上下している感じです。乗り心地が良くて、スクーターに乗っているようなイメージですね。意識してそのような設定にしていて、「スーパーカブならではの味付け」という感じです。

一方、CT125は前後のサスペンションが独立して動いており、一般的なオートバイ的なフィーリングです。タイヤサイズはC125がフロント70/90-17、リア80/90-17で、CT125は前後80/90-17ですけれど、タイヤの違いも両車の走りの印象の違いに影響しています。

CT125のタイヤはオフロードも意識したパターンで、しっかりラウンドしている形状ではないために、オンロードでワインディングを走っているときにフルバンク状態では少し不安定になります。でもハンドリング自体は軽快なので、峠道を良いペースで走っていても十分にコーナリングを楽しめますね。

荷物を積むことも想定して車体剛性を作り込んでいるためか、CT125は速く走らせても車体にヨレは感じませんでした。重量バランスは若干後ろに寄っていますけれど、水平単気筒を低い位置に積んでいるため低重心なので、走らせていて重量バランス差を強く感じることはなかったです。

画像: 2日間にわたり、キッチリとCT125の実力を様々なシチュエーションで試した伊藤さん。素晴らしい!! すごく良くできてる!! という言葉を、何度も口にしていました。

2日間にわたり、キッチリとCT125の実力を様々なシチュエーションで試した伊藤さん。素晴らしい!! すごく良くできてる!! という言葉を、何度も口にしていました。

今まで乗ったカブ系モデルの中では、圧倒的にお気に入り!「製品」としての出来の良さを感じさせるCT125

車体関連では、前後のディスクブレーキの出来栄えも好印象でした。フロント側はABSを採用しており、操作感的に「カックン」ブレーキにならないように造られています。これが初期から効きすぎると、多分怖い感じの使い心地になると思いますね。握ればしっかり制動力が出ますので、良い設定だと思いました。

リア側は非常にコントローラブルです。C125はドラム式なので、サーボ効果により途中からキュッと制動力が急激に立ち上がるのが気になりましたが、CT125のリアディスクはそういうことがないのでとても良いです。リアにはABSは採用されていませんが、オフロードで使うことを想定するとこの仕様が良いという方も多いでしょう。

画像2: ホンダ「CT125・ハンターカブ」インプレ(伊藤真一)

粗探しをすると、ミラーはもっと広く後方が見えると良いなと感じましたが、全体的なスタイルとかを考えるとこれ以上大きく重いミラーにするのもなんだな…と思います。スーパースポーツほどスピードが出るわけではないので、安全に注意しつつ後ろを見て確認すれば良いことですしね。

あと自分のようにカブ系に乗り慣れていない者としては、視認性が良いギアポジションインジケーターが欲しくなりましたね。社外品で販売されているものを取り付ければ良いのでしょうが、何速に入っているかすぐに常時確認できるとありがたいという人も多いと思います。あと、欲を言えばもう1速…5速ミッションを採用してくれると嬉しいですね。

CT125は「製品」として素晴らしく良くできている1台です。自分が今まで乗ったカブ系モデルの中では、オートバイの楽しさというものを感じさせてくれて、一番気に入ったモデルですね。圧倒的にCT125が良い! と思います。

ただ自分の足として使うのであれば、だいぶCT125より大きくて重くなってしまっても、もうちょっと速いモデルが良いかな…とも思ってしまいました。CT125も十分速いですけど、自分が1台だけ足用として持つなら、やはり高速道路にも乗れるモデルを選ぶかもしれないな…と。

過去に連載で取り上げてとても気に入ったモデルなのですが、750ccでDCTを採用しているX-ADVが自分の足としては一番適しているのかな、と思いました。自分はX-ADVに乗って、ウチの奥様とか娘にCT125を乗せようかな…?

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