2017年のデビュー以来ライダーの心をつかんで離さない大ヒットモデル、Z900RSシリーズに加わったスペシャルモデルが「SE」。ブレンボのブレーキシステムとオーリンズのリアショックを採用したハイグレード仕様だ。
文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸

カワサキ「Z900RS SE」インプレ(宮崎敬一郎)

Kawasaki Z900RS SE

総排気量:948cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:810mm
車両重量:215kg

発売日:2022年1月21日
税込価格:160万6000円

走りのカギを握るのはサスペンションのセッティング

Z900RSの上級モデル「SE」は、いわゆる「イエローボール」のボディカラーを身にまとい、ゴールドのホイールやフロントフォーク、ブレンボのフロントブレーキキャリパー/パッドなどに加え、リアショックにはオーリンズを採用している。

アクセントになっているゴールドパーツの威力だろう、ちょっとした演出だが、その外観から漂う雰囲気はちょっと昔によく見たZのカスタムモデルのよう。ギラッとした精悍なルックスはかなり魅力的だと思う。

走りの方はスタンダードとはずいぶんと違う。オーリンズ製のサスは非常に作動が滑らかだが、それでいて強力な減衰力を生み出すことができるという凝った造りをしている。これが大きな魅力だ。

単にオーリンズのショックを装備すればスポーティに走れるというものではない。カギとなるのはセッティングで、フロントサスや車体の剛性とも相談しながらマッチングを取らないとならない。これが上手くいかないとかえって曲がりにくくなったりするのだ。

カワサキはこのあたりの仕上げがかなり上手で、かつて試乗した、オーリンズサスを装備したZX-14Rハイグレードも、乗り心地とスタビリティをバランスよく両立していた。試乗前は、このSEはきっと穏やかなセットアップだろうと思っていたのだが…実際乗るとちょっとばかり勇ましい。

カッチリした接地感でオーリンズの本領を発揮

ゴールド仕上げのフロントフォークは、リアサスの変更に合わせてセッティングを変更されている。細かい凸凹はスタンダード以上に吸収するので、良路では滑るように滑らかな乗り心地を実現しているが、路面の荒れが少し大きくなるとそれなりの衝撃を伝えてくる。

リアのオーリンズもそんな感触だが、こちらはフロントに比べると、少し角の取れた衝撃だ。スタンダードのRSがかなり快適な乗り心地なのに対し、このSEは街乗りやツーリングペースだと、大きめの凸凹に対し少し硬く感じる。

前後サスともいわゆる高荷重設定になっているような感触なのだが、バネ自体は車重と上手くマッチしていて、極端に強くは感じない。ワインディングなどでペースを上げていったり、コーナリング状態になると乗り心地の硬さは全く感じなくなり、同時に路面の荒れにもすばらしく強くなる。カッチリとした接地感はスタンダードと比べようもなくしっかりしていて心地よい。

スタンダードなら跳ねてラインが少しアウトへ流れるような荒れやウネリのある路面でも、SEはドシッと構えて落ち着いたまま。コーナーの奥までハードにフロントブレーキを残してアプローチしてみても、首回りがしっかりしているし、そこからスロットルを合わせた時の車体の落ち着きやリアの踏ん張りは格段にいい。スタンダードでは慎重にならざるを得ないような路面状況でも、トラコンに頼らず思いっきり開けられるのだ。

そう、言い忘れていたが、このSE、こんなブレーキングができるほどブレーキがコントローラブル。これも光るパートだ。

まるでスタンダードのRSによく温まったハイグリップタイヤを履いたような感触と言おうか…接地感はそんな感じだが、車体の落ち着きはそれ以上だ。ただし、これはスポーツ一辺倒ではなく、ネオクラシックモデルのZ900RSらしい、ストリートモデル然とした許容バンク角内での話だが。

Z900RS SEは決して常用域で扱いにくいものではなく、いざ攻めた走りをしよう、というときに本領を発揮する。見た目だけでなく、走ってもしっかりとグレードアップ分の魅力を感じられるバイクだ。

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