最新モデルじゃないけれど忘れられない1台にフォーカスする「現行車再検証」。今回は、ドゥカティ・スクランブラーをピックアップ。それも800でも1100でもない「シックスティ2」、つまり400だ。実はこれスクランブラースピリットをいちばん表わしているモデルなのです!
文:中村浩史/写真:松川 忍

「スクランブラー」とは? いま一度考えてみる

画像: DUCATI SCRAMBLER Sixty2 総排気量:399cc エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブL型2気筒 最高出力:30kW(40PS)/8750rpm 最大トルク:34Nm(3.5kg-m)/8000rpm シート高:790mm 車両重量:183kg 税込価格:92万円

DUCATI SCRAMBLER Sixty2

総排気量:399cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブL型2気筒
最高出力:30kW(40PS)/8750rpm
最大トルク:34Nm(3.5kg-m)/8000rpm
シート高:790mm
車両重量:183kg

税込価格:92万円

オンでもオフでもないオシャレなストリートバイク

スクランブラーっていうのは、まだ「オフロード車」って定義がきちんと確立していなかった頃のオフロードモデルのことだ。オンロード車をベースに、足の長いサスペンションを取り付けて、ハンドルとマフラーを上げて、ブロックタイヤを履いて──。

ちょうど60年代早々のホンダCB72とCL72がそんな関係。その後、オフロード車の元祖と言われているヤマハDT1以降は、バイクはオンロードとオフロード、っていう風に区分けされるようになって、どんどん高性能を目指すようになる。

ちょっと道が荒れていたって、その奥に踏み入ってみたい。スクランブラーって、そんなバイクだ。オンロードをしっかり、未舗装路にだって入って行けて、オシャレなバイク。そんなムーブを加速させたのが、62年に「本来の意味の」スクランブラーを発売したドゥカティだった。

そして2015年、ドゥカティは既存の空冷800ccエンジンを使用した新世代スクランブラーを発表。オンロードをしっかり、未舗装路も苦にしない、オシャレなオートバイだ。

画像: ▲ドゥカティがミドルクラスに時折ラインアップする、空冷Lツインを搭載する「普通二輪免許で乗れるドゥカティ」。400ccオリジナルの車体構成をもち、軽量コンパクトで、振り回せる魅力がある、隠れた400cc注目モデルだ。

▲ドゥカティがミドルクラスに時折ラインアップする、空冷Lツインを搭載する「普通二輪免許で乗れるドゥカティ」。400ccオリジナルの車体構成をもち、軽量コンパクトで、振り回せる魅力がある、隠れた400cc注目モデルだ。

ドゥカティ「スクランブラーSixty2」インプレ・解説

スクランブラーらしからぬスクランブラーからの?

ネイキッドでもあり、ストリートバイクでもあったドゥカティ・スクランブラー(800)は、モンスターともうまく両立、世界的なヒットモデルとなった。

けれど、僕はずっと違和感があった。スクランブラー、800ccで70PSと少し、車両重量は190kg。国産車でいうとスズキSV650やヤマハMT-07がライバルに当たるんだけれど、速いのだ、このドカが!

画像: ▲スクランブラーシリーズで最初に発売されたのが、この800㏄シリーズ。いちばんベーシックなアイコン(税込106万9000〜114万6000円)をはじめナイトシフト(税込134万9000円)、デザートスレッド(税込147万9000円)、ファストハウス(価格未発表)がラインアップされる。

▲スクランブラーシリーズで最初に発売されたのが、この800㏄シリーズ。いちばんベーシックなアイコン(税込106万9000〜114万6000円)をはじめナイトシフト(税込134万9000円)、デザートスレッド(税込147万9000円)、ファストハウス(価格未発表)がラインアップされる。

空冷800ccとはいえ、ドゥカティ伝統のLツインエンジン、低回転のトルクはそこそこに、ぐんぐんパワーが湧き出てくる快足ランナー。こんなんじゃ、とてもダートに気軽に踏み入っていけないじゃないか。まったくドゥカティって、のんびりとかゆっくり、ってバイクを作るのが本当にヘタクソ。あ、ほめ言葉ですよコレ(笑)。

のんびりしたスタイリングにドンとくるパワー。羊の皮を被った狼ではあるけれど、スクランブラー本来の楽しさには欠けていると思ったのだ。

画像: ▲スクランブラー最大排気量が、この1100ccシリーズ。1100PRO(169万9000円)をベースラインに3車種が受注販売で、ブラックペイントのダークPRO(156万9000円)、オーリンズ製サスペンションを標準装備としたスポーツプロ(195万4000円)がラインアップ。

▲スクランブラー最大排気量が、この1100ccシリーズ。1100PRO(169万9000円)をベースラインに3車種が受注販売で、ブラックペイントのダークPRO(156万9000円)、オーリンズ製サスペンションを標準装備としたスポーツプロ(195万4000円)がラインアップ。

そして2016年、次のスクランブラーが登場した。その名はSixty2、つまり62、これはドゥカティが初代スクランブラー250を発売した記念イヤーで、その由緒ある数字を冠した、400ccバージョンだった。

800とほとんど同じ大きさで、構成はさらにシンプルに、正立フォークを持つSixty2は、出力わずか40PS。けれど、コレがいい!

レスポンスのいい、回転の吹け上がりが軽い空冷Lツイン。歴代の400ccユニットとは比べものにならないほど洗練されたフリクションのない回り方をする。軽量なボディをすいすいと引っ張る特性は、とても400ccとは思えないトルク。高回転まで回しても、高いギアで低回転で乗っても、キビキビと、それでいてシャープすぎずに、自由自在に動いてくれる。これぞスクランブラー‼

オンロードをメインに、気軽にダートにも踏み行けるおしゃれなオートバイ──それを“スクランブラー”と呼ぶならば、そのワードはSixty2にこそふさわしいと感じる。

画像1: ドゥカティ「スクランブラーSixty2」インプレ・解説

ストリートキラーだがクルージングも難なくこなす

軽くフリクションなくふけ上がるエンジンと、軽々と取り扱えるボディ。スクランブラーの主戦場は街中だけれど、この運動性のよさはそのままワインディングでも、高速道路のクルージングでも光る。400ccの行動範囲、こんなに広かったっけ。

街中を走って高速道路に乗り入れてみる。街中では2500〜3500回転を常用してすいすいと走っていたけれど、それ以上の速度域でのクルージング安定性もかなり高いのだ。

トップギア6速での80km/hは約4400回転、100km/hでは5800回転といったあたり。このスピードを越えて、風圧と戦うスピード域になっても、エンジンを酷使している印象もなく、まだまだ400ccの空冷Lツインには余力がある。テストコースで試した時には、160km/hからもうひと伸びしそうだったから、100km/h+a近辺にまだまだ余裕があるのがよくわかる。

画像2: ドゥカティ「スクランブラーSixty2」インプレ・解説

クルージングの安定性も高く、レーンチェンジも軽いスクランブラー。これが800の定速クルージングだと、エンジンに「もっと開けろ、もっと開けろ」と急かされるイメージがあるけれど、Sixty2にはそれがない。穏やかな出力特性、急かされないクルージングの安定性も、400ccならではのメリットだったのだ。

ちなみに100〜110km/h走行での燃費は約25km/h。この好燃費も、1100や800にはない400ccならではのメリットだろう。


800より1100よりスクランブラーの本質にいる

街乗りが得意で、クルージングも難なくこなす──。けれど、そんなSixty2は、やっぱりワインディングで光り輝いた。さすがドゥカティ、この2面性は予想以上だった。

何度も言うけれど、エンジンがいい。軽くふけ上がって、回転ごとにトルクが盛り上がってくるようなパワー特性は、低いギアを引っ張って高回転まで回しても、高いギアで低回転をいじめても、本当によく走る。

さすがに4気筒のような高回転域までは回り切らないけれど、トルクでスピードを乗せていってのミッションのつながりがいいのだ。その時の回り方も、適度にLツインらしい鼓動があって、力の出方に「表情」がある。これが、乗って楽しいと感じるひとつの要因なのだろう。

画像3: ドゥカティ「スクランブラーSixty2」インプレ・解説

ハンドリングは、安定性があっての軽快なタイプ。フロント18・リア17というちょっと変わったホイールサイズだけれど、特に幅110サイズで80偏平フロントタイヤが実際以上に太く感じて、入力に対しての反応が穏やかなのもいい。もっとシャープなハンドリングが欲しいなら、スクランブラー「以外」の機種を選べば良いだけの話なのだ。

行動範囲が広くて、おしゃれで、急かされないスクランブラー。Sixty2には、ドゥカティらしからぬ(これもホメ言葉ですよ)オールマイティさ、守備範囲の広さがあるのだ。

どうしても、400ccのバイク選びだと国産モデルから選びがちだし、ドゥカティが欲しい、となるとスーパーバイク系が王道。スクランブラーが欲しいな、と思っても、まずは800や1100に目が行く、Sixty2は意外なチョイスだけれど、この完成度はお勧めしたいほど素晴らしい。

そこが「800よりも1100よりもスクランブラー」って意味なのだ。

画像: ▲400ccと言えば国産モデルを選ぶしドゥカティといえばスーパーバイクが王道。意外なチョイスだけれどSixty2はもっと評価されるべきだ。

▲400ccと言えば国産モデルを選ぶしドゥカティといえばスーパーバイクが王道。意外なチョイスだけれどSixty2はもっと評価されるべきだ。

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