1998年に、ワインディングロード最速のコーナリングマシンとして登場したR1。世界をリードし続けるR1の変遷史を当時の試乗記をもとに振り返ってみよう。この記事では2007年型の5代目を紹介する。

この記事は「東本昌平RIDE92」、月刊オートバイ1998年3月号、2000年2月号、2002年5月号、2004年4月号、2007年2月号、2009年8月号、2012年2月号/ 5月号を加筆、修正、写真変更などの再編集を施しており、一部に当時の記述をそのまま生かしてある部分があります。
文:中村浩史、宮﨑敬一郎、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、小平 寛、瀬谷正弘、永元秀和、南 孝幸、山口真利、森山俊一

ヤマハ「YZF-R1」(2007・4C8)インプレ・解説(宮崎敬一郎)

YAMAHA YZF-R1

総排気量:998cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
最高出力:180PS/12500rpm
最大トルク:11.5kg-m/10000rpm
車両重量(乾燥):177kg
※輸出車(2007年・4C8)

歴代最強の180PSでクラス最強の走りを見せる

フルモデルチェンジされた5代目R1は従来よりサーキット適性を強化。同時に、扱いやすさ、使いこなしやすさを向上させることに主眼を置いた造り込みもなされている。

鋭い眼光を放つシャープなフロントマスクにテールから大胆に突き出す2本出しアップマフラーなどの基本的なフォルムは従来型を受け継いではいるが、その中身はフルモデルチェンジに相応しい最先端技術がびっしりと詰め込まれている。 

画像1: ヤマハ「YZF-R1」(2007・4C8)インプレ・解説(宮崎敬一郎)

デビュー以来、8年間に渡って採用してきた5バルブ方式と訣別して4バルブエンジンの採用に踏み切った。これにより燃焼室形状を最適化し、さらにはインテークマニホールドの管長をコントロールするYCC-Iや電子制御スロットルYCC-TなどのMotoGPテクノロジーも惜しみなく投入されている。

180PSのパワーを達成しながら、素直で扱いやすいパワーフィールも獲得している。大パワーを受け止めるシャシーも大きく進化。スリッパークラッチを筆頭に、剛性バランスを見直したデルタボックスフレーム、市販車初のラジアルマウント6ポットキャリパーを採用。

ワインディング、サーキットを問わず、強力なライバルたちと互角以上に戦えるポテンシャルを手に入れている。

画像2: ヤマハ「YZF-R1」(2007・4C8)インプレ・解説(宮崎敬一郎)

パワーを使いこなすための電子デバイスを多数投入

入念なパワー制御デバイスを身につけた5代目R1。2006モデルのような1万1000回転あたりからさらにひと伸びするような特性ではなく、それ以下の回転域からスムーズにパワーを増し、レッドゾーンの1万4000回転あたりまでフラットに伸びるエンジンに生まれ変わった。

1万4000回転以上でスロットルが3分の2以上開いていればファンネルは短い状態になり、トルクの変動は感じられず、ムラのないリニアなパワーを引き出せる。本当に使えるハイパワーエンジンとなった。 

そのエンジンとシャシーがしっかりと機能しているため、安心してスロットルを開けられる。ハンドリングは軽快で、どんな高速切り返しでも、しなやかに素早く応答する。だから素早く切り返すことも、じっくり切り返すことも小さな労力でできる。

カタールのロサイル・サーキットでの試乗では、140〜150km/hから250km/h以上までフルバンクしたまま全開加速しなければいけないコーナーがあり、そこでも大きく開けていける。

気負わず操作していれば、とんでもないペースで走らせてしまう。5代目R1はハイパワーのスーパースポーツを使いこなすための方策も身につけた、正常進化したリッター・スーパースポーツとなっていた。

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