1998年に、ワインディングロード最速のコーナリングマシンとして登場したR1。世界をリードし続けるR1の変遷史を当時の試乗記をもとに振り返ってみよう。この記事では初代モデルを紹介する。

ヤマハ「YZF-R1」(1998・4XV)インプレ

リッターバイクの常識を覆す軽快かつシャープな走り

1997年のミラノショーで公開されたYZF-R1は、これまでのリッターバイクの常識を打ち破るものとして世界が注目。初めての試乗会は同年11月、舞台はスペインはカタルヘナ・サーキット。全長3480mに14の中低速コーナーで構成されるカタルヘナは、R1のハンドリングを試すには絶好のコースだった。

オートバイ1998年1月号の加藤栄重氏のインプレッションを引用する。

オートバイ1998年1月号の巻頭を飾った初代R1の加藤栄重氏の試乗インプレッション。メインキャッチコピーは「重量車特有のネジ伏せる必要なし! ダンプからカートに乗り換えたみたいだ!!」であった。

「サンダーエースに比べ、約22%も軽減したピストン、コンロッド、クランク辺りのマス変更により、R1を前に押し出そうとする高ぶりも、従来のケツを蹴っとばして出ようとするリッターバイクとは全く異なるフィール。サンダーエース比30%減の軽いクラッチでスタート。

これまた400cc並みの軽さだが、うかつなアクセルオンは禁物。公道でも試してみたが、2速から3速までポンポンとウィリーしてくれる。これで2速以降でフロントを持ち上げる奴は、そうはいなかった」

カタルヘナはバイクにもライダーにも負担のかかるレイアウトで、ストレート5速から複合の1〜2コーナーへのアプローチは一気に2速までシフトダウンするというもの。ここで、R1は本領を発揮し始める。 

しなやかなフレームが生む切れ味鋭いカミソリステア

「切り返しの連続で、R1のハンドリングが威力を見せた。コーナー進入からGのかかった時の旋回性は、クルックルッと一気に向きが変わる。パワーとウェイトのはざまで、ラインを絞りきれないようなリッターバイクの『重量感』が全くないのだ」

加藤氏のインプレは、R1の切れ味鋭いハンドリングが中心となる。

「250レプリカなどで感じた、サスとフレームの剛性が操安の邪魔をするというゴツさもない。しなやかなフレームに初採用のΦ41mmという軽量化された倒立フォークがサポート。伸び側ストローク量を約10〜15mm増やしたおかげで、フロントの接地感が格段に高まっているのだ」

外国のバイク誌のテスターは、この試乗会のレポートでR1のハンドリングを「レイザー・シャープ」と称えたが、加藤氏も同じ言葉で締めくくっている。「乗ること、操ることが楽しい。適度な緊張感で、R1は切れ味鋭いカミソリ・ステアを十分に発揮してくれた」

R1の開発陣がキーワードにした「乗ってエキサイトメントを感じる」ことが高いレベルで実現され、この初代R1はリッター・スーパースポーツの新たなスタンダードとなり、ライバル勢に大きな影響を及ぼしていく。

画像: ヤマハ「YZF-R1」(1998・4XV)インプレ

メーター表示で286km/h をマーク

スペイン・カタルヘナ・サーキットの変形最終コーナーからのショートアプローチでデジタルスピード計は5速、1万1500回転で286km/hを表示。ちなみにメーカー発表値では、最高速290km /hオーバー、ゼロヨン9秒70であった。

『オートバイ』1998年3月号ではヤマハ袋井テストコースで最高速チャレンジを決行。あいにくの豪雨の中、ハイドロを起こしながらも光電管計測で270.20km /hをマーク。最高速を狙ったマシンではないR1だが、当時第一級のパフォーマンスを披露した。

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