今から手に入れるカタナの見本的な作り込み
元々大きな興味はなかったけれど、2011年の映画“キリン”の劇中車プロデュースの際にノーマル車両に徹底的に乗ったことをきっかけに空冷カタナを見直す。面白いバイクだとして理想のカタナとしての“ハガネ”を作るに至ったテクニカルガレージRUNの杉本さん。
ある意味、惚れた弱みなしの冷静な目でバイクとしての空冷カタナを見て、的確な手を入れてきたとも言える。その杉本さんが今勧める空冷カタナへのメニューは、シンプルだ。古いバイク(GSX1100S)で修理や復元が必要な部分にきちんと手を入れた上で、オーナーの依頼で必要なところをひとつひとつ手を入れる。その見本的な近作が、この車両だ。
その復元という点に目を向けよう。一番の魅力であるルックスはキープしたい。だからまず程度のいい、極力ノーマルに近い車両を元に選ぶ。その上で車両のコンディションを高め、今の交通事情に合うように各部を見直していく。
具体的に順に見ていくと、一番の土台になるフレームは20~40年経っているからまず確認。補強は仕様により入れた方がいいが、必須ではない。それよりも確認/手直し後に高機能塗装を施して、今後の維持をしやすくする。この車両でもそれが実践される。
ホイールも換装しない場合は同様に考える。そのホイール、そしてステムやスイングアームピボットなどのベアリングは新品に交換。付随するゴム/シール類も同じく交換する。この時に一緒にエンジンマウントをアルミ削り出しにしたり、前後アクスル/ピボットシャフトをクロモリ化するのも、車体をしゃっきりさせ、以後の歪みを抑えるのに有効だ。
エンジンは状態を確認し、キャブレターはオーバーホール必須で、これに組み合わせる。
現代化に関してはまず安全に止まれるブレーキの構築(フロントマスター/キャリパー/ディスク/ライン)。そして前後サスペンションの性能向上。これは状態によっては危険さえともなうためだ。ここまでを第一段階として、以後は定期整備を欠かさない。そのための純正パーツのストックも考えたいとも杉本さん。
これが出来てこそ安心して空冷カタナが楽しめる。そしてこの先はもっと、これらの要素が大事になる。このカタナの流れを見れば、それもよく分かるだろう。
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Detailed Description 詳細説明
ハンドルはGSX1100Sのノーマル・セパレートタイプでメーターカバーはマジカルレーシング製カーボンに。ヨシムラ・プログレスメーターも追加される。フロントマスターはブレンボラジアル、クラッチホルダーは操作性が高まるゲイルスピードをそれぞれ装着する。
エンジンはチェックの結果良好のため定期整備で維持。キャブレターはノーマルBS34をオーバーホール、リチウムバッテリーで始動性も良好という。
ステップはバー位置を前に5mm×上に3mm移動して車体のホールド性と乗り心地を向上させるTG-RUNのオリジナル・ライディングステップキットに換装。'90年型SM以降ならこのようにフレームを切らずに装着可能だ。
フロントフォークはノーマルのφ37mmを内部チューニングした上でセッティング。ブレンボ製4ピストンキャリパーやサンスター製ディスク、ステンレスメッシュライン等により、ノーマルフレーム/ステム+前後18インチで必要な機能を発揮できるようにしてある。
アルミ鍛造のゲイルスピードTYPE-Nホイールで19/17から前後18インチ化。リヤサスはこうした車両構成でもお勧めのオーリンズに変更した上でセッティング。スイングアームはノーマル。マフラーはケイファクトリー・フルチタンで、軽くなることで取り回しも良くなった。