安全最重視で消耗品はまず交換して維持される
この1994年型カワサキGPZ900Rカスタムは最初に手が入れられてもう25年超、10万km以上乗り続けられている。撮影は2020年明けてのことだが、とてもそんな時間が経ったとは思えないきれいさだ。オーナーはテクニカルガレージRUNの代表・杉本さん。
スズキの正規販売店で数々の新車・中古車販売を行う一方で、バージョンアップ・コンプリートと呼ばれる上質なカスタムを手がけている。この車両は杉本さんが自身の愛車たるGPZ900Rに、同様の手順を踏んで当時作ったもの。そしてこのほど、リメイクの手が入った。
「距離も進んだのでエンジンをリニューアルしたんです。ZX-11用クランクを新品に交換、コンロッドをキャリロにしました。ピストンやシリンダーヘッドまわりは点検の結果問題なしなので、必要な作業だけ行って組んでます。
エンジンが降りたので車体もコンディションをチェック。同時に消耗品を全交換、ブレーキやサスペンションはすべてオーバーホールに出し、外装のリペイントもしました。ウチのカタナ“ハガネ”のブラックバージョン的な“クロガネ”カラー。
とにかく気に入っているバイクなんです。パワー感も動き方も私自身の理想と言っても良いくらいの作り。φ79×58mmで1136cc仕様にしたエンジンは、カリカリの尖ったものとかドッカンパワーに思われるんですが、全然違う。誰が乗っても乗りやすい。ポジションも、タッチも、最高速をやっても街乗りでも。二人乗りも問題なしな作りだと思います。
事実、娘とタンデムツーリングしたり、サーキット走行や夏の北海道へロングツーリングと、1年中タフに走らせてますからね(笑)。自分でも興味のある最新パーツや性能評価したいパーツがあれば、まずこのバイクでテストするんです」
そう言う杉本さん。このようにリメイクを加えながらも本筋がぶれない作りを得ているのだが、それは何に支えられるのだろう。
「まず安全快適であることでしょう」。杉本さんも、同店スタッフの高橋さんも口を揃える。だからこのニンジャも、RUNで作られるバージョンアップ・コンプリートも、安全を担保する手法を施す。
キャブや足まわりのセッティングはデータを記録して、いつでも見られるように残しておく。これは何かに迷った時の基準点にもなる。そして、オーナーの使い方を把握する。街乗りか、スポーツ走行かなど。独りよがりにならず、ふたり以上で乗り込み、そのデータを持ち寄ることで挙動に対しての意見交換、オーナーに合う方向性=タッチやパワーの出方、ハンドリング等の摺り合わせも出来る。
そうしたセッティングに加えて、パーツも重要だ。大物パーツが高質になっていればそれで終わりではない。使っていなかったり、数年寝かせた後の再始動等なら、まず走る状態に戻さないといけない。シールやゴム、パイプにベアリング。場合によりハーネスやワイヤ類といった消耗品は交換だ。
杉本ニンジャもこのリメイクにあたってはマルケジーニ扱い元のホイールテクノロジーでベアリング交換、サスは同じくラボ・カロッツェリアに。ブレーキ系はブレンボジャパンで点検とオーバーホールを行っている。自店でも出来る作業だが、そこは正規輸入元でのフラットな目と技術によるチェックで安心を高めるという理由からだ。
大物が付いているからいいではなく、大物も消耗品は代えて維持する必要があることを意識する。
「何のために乗るのかを考えてバイクに向き合うこと。快適なバイクライフを楽しみたいのならそうすべきです」と杉本さん。リメイクでもここをまず押さえれば、高質な楽しみはキープできるのだ。
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