パーツがなかったゆえにカスタムらしさも強まる
「サンクチュアリーによるRCM=リアル・コンプリート・マシンのホンダCB-F」。
こう聞けば車両の素性は何となく伝わってくるだろう。前後17インチ化に始まる車体アップグレードと、それにふさわしい細部の仕上がりを持ったカスタムコンプリート車両である。
だが、この車両の場合は少し事情が異なった。オーナーが長年所有していたフルノーマル車を、運動性能を高めたいと同店に持ち込んだ……というところは他のRCM同様。
ここでZ系やNinja系ならば、17インチ化のための最適数値を持った同店のスカルプチャーステムやスイングアーム等が使用パーツに挙がってくる。
ところがこれらはCB-F用にラインナップがない。そのためにZ用を用意し、CB-Fにきちんとフィッティングさせるという作業を介して装着した。
こうした“元々合わない”パーツを合わせるには当然車体側にも合うような加工が、パーツ側にもサイズ感や形状などを合わせる作業が必要になる。
もうひとつ、旧車で現行ハイスペックラジアルタイヤを履くためのホイールセンター出しやチェーンラインオフセット(リヤ130幅が180~190クラスに拡大するので、その分チェーンラインを外に出す必要がある)にリヤサスのレイダウンといった、これも他機種では当然となった加工を改めて施していく。
図らずも専用パーツがなかった時代の作り込みを、ここでは純正でこそないが既存のアフターパーツに手を入れるという内容で行った。
車体側でも、寸法取りを行い、狙うディメンションをまず検討してかかったという部分も、カスタム黎明期の手法を踏襲したと感がある。そうして出来上がったこの姿は、紛れもなく17インチ適合(走って良し、所有して良しとも同店では言う)のRCMでありつつ、ちょっと独得のカスタムらしさにもあふれる。
同時にショップ側にはCB-FへのRCM製作ノウハウの蓄積ともなった。こうした製作例があれば、今後CB-FでRCMを作りたいというユーザーにも手早く対応が出来る。
コンプリートカスタムと言えども、初めから見本やデータがあってハイ完成車、となるものではないのだ。そんな製作バックグラウンドも合わせて、新鮮味のある仕上がりとなった。