突出した感覚を抑え上質で自然にまとめる
ブルドックが手がけるカワサキZ系コンプリートカスタム、GT-M(Genuine Tuning Machine)による1台。
外装は一見フルブラックだが、よく目を凝らして見ると初期Z1に準じる火の玉パターンが施されている。これに合わせるようにエンジンも艶ありのブラック、そして17インチの前後ホイールやスイングアームはマット調のブラックと、トーンを変えて仕上げる。
差し色的にフロントフォークやステップベース、ウインマッコイ・チタンエキゾーストにはゴールドが使われているが、全体として上質で落ち着いた印象がある。
「GT-Mの標準的な車両と言える1台です。エンジンのフルオーバーホールなど、メニューはいつも通り(ブルドックでは、一般的には外注作業となる内燃機加工も自社内で行うので、完全に作業内容や数値、進行状況等も把握している)。排気量は1015ccなので、最近としてはおとなしめの仕様なんです」と同店代表の和久井さん。
同店で最近多いのは1200cc超で元気のあるエンジンのオーダーというが、それにしてもきちんとした自社管理と加工で扱いやすさも耐久性も持たせているから、同店にとっては単に排気量と好みの違いという程度で、質については同じと言っていい。
話を戻すと、一方で和久井さんがGT-M製作で意識しているのは、自然なたたずまい。装着パーツや車両自体が主張し過ぎないこと。カスタムパーツが付いていてもあくまで自然に、初めからそこにそう付いていたという付け方やパーツ選択を考えるという。
「いかにもやってますという感じよりも、こうした自然な感じの方がいいと思うんです。GT-Mを見て『あ、Zが停まってるな』から始まって、よくよく見ると自然に引き込まれるような作りや質があることが分かるような。ショーに展示する車両やショップのデモ車は存在を知ってもらうべきですから、あえて派手目に作ることもありますが、普段作る車両はそういうものとまた違いますし」とも和久井さん。
冒頭に説明した複数トーンのブラックボディやカラーパーツ、そしてブレーキラインの取り回しといったところからも、その自然さは分かる。落ち着いた感じで、ツーリングなど普段乗りもきっちりこなせるコンプリートカスタム。しかもその中身は分かる人に分かる上質。ここに惹かれるのは、無理のないことかもしれない。