デビュー25周年経っても色褪せない モンスターならではの世界観は健在
デビュー以降変わらぬアイデンティともいえる、トレリスフレームと丸みを帯びた燃料タンク、そして潔いショートテールといった伝統的コンストラクションを引き継ぎ、ホットなパワーエクイップメントが与えらるドゥカティネイキッドマシンの代名詞「モンスターシリーズ」。
800ccから1200ccまでの幅広いバリエーションを用意して、一大ファミリーを築いている。ここで紹介する821ステルスは、マットブラックを基調に、シルバーとレッドのストライプラインを配したグラフィックモデルとなっている。
獰猛さと美しさを兼ね備えた個性的ネイキッドスタイルが魅力のドカティ・モンスターシリーズ。現行ラインアップでスタンダードモデルに位置付けられるモンスター821は、シリーズ共通のモンスターらしさにあふれるスタイルに、ライド・バイ・ワイヤやデスモドロミック機構を採用する最新の821cc水冷Lツインエンジン・テスタストレッタ11°を搭載。
最高出力109PSというパワーによる力強い加速と、トレリスフレームを中核とする車体や多彩な電子制御デバイスによる軽快なハンドリングを楽しめるバランスの良いモデル。中でも上級バージョンであるステルスでは、シフトアップとシフトダウンの両方に対応したクイックシフトや、アジャスタブル可能なフロントフォークを採用。ビキニカウルや専用カラーの採用と合わせ、走りもルックスもよりスポーティに仕上がっている。
熟成を重ね、研ぎ澄まされ
手足のように意のままに
グラマラスかつエルゴノミクスにシェイプされたボディは、得も言えぬフィット感を生み、ライディングに集中できる環境を整えてくれる。また、シチュエーションを選ばず気兼ねなく付き合えるキャラクターは、シリーズ誕生から不変の特徴として受け継がれている。
そう、生まれついてのライダーファーストのモデルといえるのがモンスターだ。時代が経とうともモンスターに乗る時は、ファーストコンタクトであっても履き慣らしたスニーカーを履くような安心感があり、またそんな気持ちが裏切られたことはない。
ABSを始めトラクションコントロールやウイリーコントロール等々の電子デバイスの発達と普及により、レーシングスペックを誇るハイエンドモデルですら気楽に乗れてしまえる昨今。それら電子デバイスのフォローがない時代から、ターゲットである一般のストリートライダーに寄り添うキャラクターコンセプトを掲げ、具現化に成功してきたという奇跡。
今、モンスターステルスを駆る時、トラディショナルなネイキッドスタイルを継承しつつ、よりハイレベルな次元に押し上げてくれたことに感謝するのであった。
なんとなく感情が込み上げ、抑えきれなくなってしまった……。それだけ、簡単にスイッチを押すようにハイパフォーマンスを引き出すことができ、イメージを凌駕するエモーショナルかつアグレッシブなライディングができたのだ。
今後、スポーツネイキッドモデルの指針に成り得る、高い完成度といえるのではないだろうか? しかも、特別なステージや状況でなくとも、家から出てすぐに体感できるというもの。それは正しく乗り手に合わせたオーダーメイドクオリティと言っても過言ではないだろう。
オートバイは、一律一定のクオリティが求められる工業製品で、オーダーメイドのようなスペシャリティな逸品ではない。そんな工業製品でもあるモンスターステルスに、オーダーメイド感を感じてしまうとは……。
チョイ乗りからアーバンライディング、ハイウエイに峠のワンインディング等々、ファンライド領域は実に広く速度レンジもまちまち。そして、乗り手のスキルや思考、さらにその日の気分等々、走行する条件や状況の組み合わせは無限大ともいえるのに、柔らかいクッションの上に物が置かれるように、スッと馴染んで上質な人車一体感を生む。
元々フレンドリーな性格がベースにあり、そこに最新の電子デバイスを融合したことにより、アップデートという枠に収まらない化学反応が起きたといっても良いだろう。それでいてその見た目や佇まいに、その凄さや特別感を漂わせることがないのだ。
現在のラインアップでは、ハイパフォーマンスを発揮するLツインのテスタストレッタエンジンを搭載し、シルエットやディティールに今風のアレンジが加えられるものの、そのルックスはセオリーに則ったスタイリッシュかつトラディショナルなネイキッドスタイルだ。しかし、この至って「普通」を装うコンポジションが、モンスターならではの奥ゆかしさであり、気分的にも楽な付き合いを促す個性といえよう。
最後に、モンスターステルスの進化は、キャラクターコンセプトを逸脱することなく、ラディカルであり確かなものとなっていた。もちろん、今後の進化にも目が離せないのは言うまでもない。