全日本TTF-1で3年連続タイトルを獲得し、8耐でも連続表彰台を得るなど華々しい活躍を見せたヨシムラのGSX-R。その裏にはハンディキャップを背負ったマシンからライバルに負けない性能を引き出す、極限のチューニングがあった。
文:吉村誠也 写真:平野輝幸 協力:バイカーズステーション(遊風社)
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画像13: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

フロントカウル内には、サブオイルクーラーのほか、耐久レーサーにはなくてはならないヘッドライトユニットが収められる。鈴鹿8耐では1灯でよかったが、ヨーロッパの24時間レースなどでは2灯が必要な場合があり、容易に2灯化できる構造。このころは、スズキ本社自らが世界選手権耐久シリーズでワークスマシンを走らせていたため、本社製と同一の部品を使うことができた。


画像14: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

車体構成品のパーツ単位での開発は、スズキ本社で行われた。このため、フレーム材質はもちろん、補強パッチの形状や細部のデザインなどに同時代のワークスGPマシン、RGV-Γとの共通点を見い出すことができる。フロントフォークのブラケットや小物パーツにもRGV-Γのパーツを多用。ベース車両よりも格段に太くされたフレームのメインチューブが、この車体の成り立ちを物語っている。


画像15: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

マグネシウム鋳造の武骨なスロットルハウジングが時代を感じさせるハンドルまわり。ブレーキのマスターシリンダーは、このころようやくリザーバータンク別体となったニッシンのワークスレーサー専用パーツだが、レバーは市販車の部品を流用している。

撮影車両のハンドルは、クランプ部にバーを溶接した一般的な物だが、実戦では転倒時の交換を容易にするために、クランプとバーが別体構造の物を使用し、バーのみでもクランプ込みでも交換できるようにしていた。左右グリップの真下には、キャブレターにフレッシュエアを導くためのホースが通っている。


画像16: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

右側よりも市販車に近い構成の左側。走行中でもクラッチレバーの遊びを調整できるよう、ロックナットを用いずに板バネで押さえた大径のアジャストナットを使うのは、レーシングマシンでは当時から一般的な方法。ヨシムラの8耐仕様車は、いつもクラッチ側にのみパワーレバーを装着。レバーのピボットにはボルト+ナットではなくピン+クリップを用い、脱着を迅速化。デリケートな操作をする右手を避け、灯火類のスイッチは全部左手で操作できるようにしている。


画像17: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

ベースマシンとなった空油冷GSX-R750とよく似たパイプワークを見せる、ステアリングダンパーを備えるフロントまわり。しかしよく見れば寸法は市販車とまったく異なり、材質も別物のワークスマシン専用品だ。エンジンは同じ空油冷GSX-R750用をベースとしながらも、フレームの方は初代の1985年モデル以降毎年モデルチェンジされ、この1987年型で一応完成の域に達した。


画像18: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

インナーチューブ径43mmのショーワ製フロントフォークは、制動時に圧縮側減衰力を高め、過度のノーズダイブを抑制するPDF方式を採用。アウターチューブ下端の前側に取り付けられた円筒状のパーツがPDFユニットで、これの底部に圧縮減衰力調整スクリューがある。このほか、フロントフォークはスプリングプリロードと伸び側減衰力の調整が可能で、それらの調整ダイヤルはフォークの上端部にある。

フロントブレーキは、タイヤ交換時にキャリパーがホイールと干渉しないようにΦ305mmというやや小径のディスクを使用。ディスクの材質は鋳鉄で、これをステンレスの大径中空ピンを介してアルミのディスクハブにフローティングマウントしている。

キャリパーはニッシン製の対向式異径4ピストンで、ピストン径はリーディング側が30mm、トレーリング側(フロントフォークに近い側)が36mm。パッド材質に、製造禁止となったアスベスト(石綿)ベースのものが使えた最後の時期でもあった。


画像19: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

ステップまわりのパーツは、ヨシムラが独自に開発、製造したもので、スズキのワークスマシンが使うものとは形状が異なる。24時間レースを走ることもあったスズキ本社製ワークスマシンはゴムを被せたステップバーを装着していたが、最長のレースが鈴鹿8耐だったヨシムラは、削り出したアルミの表面にローレット加工を施しただけのステップバーを使用。

画像20: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

ベースプレートやリヤブレーキマスターシリンダー、シフトリンクなどの形状と取り付け方法から、耐久レースの経験が豊富なヨシムラらしさをうかがいしれる。


画像21: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

シートレールとバックステーとクロスメンバーで構成されるサブフレームは、レーシングマシンに一般的なボルト留めで、それぞれのボルト頭は最も工具を通しやすい方向を向いている。リヤショック上部は、車高調整機構を介して車体にマウント。


画像22: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

リヤショックユニットもショーワのスペシャル。ガス室別体型、スプリングプリロード、伸び/圧側の減衰力、ガス圧が調整可能なフルアジャスタブル。“E-フルフローター”と呼ばれたリヤサスペンションのリンク機構は、ピボット部にエキセントリック式のカムを持ち、1G付近でのバネレートをフラットに近づけるタイプ。


画像23: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

リヤのブレーキディスクはΦ215mmと小径なものを選択。キャリパーは当時のRGV-Γと同一品の対向2ピストンで、これをフローティング方式でマウントする。


画像24: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

フレーム本体と同じくスズキ本社製のスイングアーム。きゃしゃな印象を受けるが、当時はこれでも前年モデルに比べ、かなり剛性を高めていた。この年の8耐を走ったワークスマシンの中で、リヤフェンダーを装着していたのはスズキとカワサキだけ。リヤタイヤが巻き上げる石やタイヤの摩耗カスがリヤショックまわりを直撃しないようにするためだ。


画像25: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

三角柱を横に倒したようなアルミ製オイルキャッチタンクがシートレールにゴムバンドで固定され、これにクランクケース上部からのブリーザーホースが連結される。キャッチタンクから出たホースは大気開放。当時はまだ、ブローバイガスの回収は義務づけられていなかった。

ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」(1987年)写真

文:吉村誠也 写真:平野輝幸 協力:バイカーズステーション(遊風社)

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