全日本TTF-1で3年連続タイトルを獲得し、8耐でも連続表彰台を得るなど華々しい活躍を見せたヨシムラのGSX-R。その裏にはハンディキャップを背負ったマシンからライバルに負けない性能を引き出す、極限のチューニングがあった。
文:吉村誠也 写真:平野輝幸 協力:バイカーズステーション(遊風社)
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ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

画像1: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

空油冷方式の特徴である短いフィンを持ったエンジンは、塗装部分の下地にサンドブラスト加工が施される。放熱効果を高めるため、少しでも表面積を増やすのが狙いだ。クラッチは、スズキ本社の設計となるRGV-Γと同方式の乾式。ヨシムラならではの、1-2/3-4気筒のエキパイをチャンバーで連結したデュプレックス方式、そして排気順序に従って集合する(集合部の左下に#1、左上に#2、右下に#3、右上に#4が入る)サイクロン方式を採用したEXシステムを装備。


画像2: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

マグネシウム製のジェネレーターカバーが特徴的なエンジン左サイド。ACジェネレーターを撤去したうえでスタータードリブンギヤを小型化しているため、ケースカバーはSTDよりも浅い。さらに、対地角を稼ぐために、中央部のみ円錐形に盛り上がった形状としている。


画像3: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

メインボア径40mmの、ミクニ製TM(フラットバルブ)キャブレター(当時はマグネシウムボディのワークスマシン専用品が装着された)。4連キャブの左端にある大きな蝶型をしたスロットルプーリーが特徴的。フロントカウルのナックルガード部下にある開口部から取り入れた空気を、エンジン上部を通したホースによってキャブレター上部に導いている。これは、吸入する新気の温度を下げることで、混合気の充填効率の向上とエンジンの冷却の両方の効果を狙ったものだ。


画像4: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

エキパイの途中に適切な容量を持つチャンバーを設け、1-2/3-4気筒を連結するのがデュプレックス方式。高回転型エンジンでは不足しがちな低中速トルクを補う効果があり、当時のヨシムラは、ストリート用の排気管はもちろん、レーシングマシンにも採用していた。


画像5: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

集合方式は、現在の4気筒マシンに多く見られる4-2-1方式ではなく、4-1方式。しかも排気順序に合わせて集合するサイクロン方式を使うため、#2、#3気筒のエキパイの曲がり具合に特徴が表れる。


画像6: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

サイレンサーには、耐久性重視のアルミ製と軽量化重視のカーボンFRP製の2種類のシェルがあったが、8耐本番でもカーボンFRP製を使用。


画像7: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

クランクケースカバーやレリーズ機構のホルダーにマグネシウム製パーツを用いた乾式クラッチ。耐久レースでは途中でエンジンオイルの補給を行うため、クイックチャージが可能なフィラーキャップを備える。


画像8: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

フリクションプレートは6枚、クラッチプレートは7枚で構成される。容量的な問題はなかったが、熱による歪みのためにタッチの悪化や滑りを起こしやすく、頻繁なメンテナンスが必要不可欠だった。


画像9: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

カムシャフトを外したシリンダーヘッドを上から見たところ。シリンダーヘッド本体(キャスティング)を変更するのはレギュレーションで禁止されているため、ベースマシンのものを使用しているが、バルブやバルブまわりのパーツはもちろん、ロッカーアームにもスペシャルパーツを用いている。

写真では下側にキャブレターのインシュレーターが見えるが、気筒間ピッチとキャブレターピッチが大きく異なるため、外側2気筒分のインシュレーターが湾曲している。シリンダーピッチを短縮し、吸気通路のストレート化を図った現代のマシンには見られない光景である。


画像10: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

カムシャフトは、当時ヨシムラが販売していたTTF-1レース用キットパーツよりも、さらにハイスペックなもの。製造は、現在のようなNCマシンではなく、倣い加工機を用いて行われていた。上に書いた曲率の小さなロッカーアームとの組み合わせを前提としたカムプロファイルを持つ。レーシングマシンならではのリフトの大きさと、ロッカーアーム式エンジンならではの左右非対称なカム山が特徴。当然のことながら、長いカムシャフトの軸部分は、軽量な中空構造となる。


画像11: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

ピストンは、レーシングマシンでは常識的な鍛造のアルミ製。大きくえぐられたバルブリセスが、バルブ挟み角が大きかった時代のハイチューンエンジンを象徴している。ピストンピンも、現在のマシンと比べると長い。ピストンリングは常識的な3本リングで、トップリングとセカンドリングは0.8mm厚と、当時としては薄いものを使用していた。オイルリングは組み合わせ式。

ちなみに、ワークスマシン用のピストンの製造は、ヨシムラが諸元を決め、スズキを介してアートピストンに外注していた。当時としては高回転といえる13000rpm(耐久もスプリントも同じ)まで回していたこともあり、ピストンの製造には神経を遣っていた。

素材を鍛造した後に機械加工を施して仕上げる(これはヨシムラ自身が行った)際に、削り代が大きいと加工応力が残り、極限状態で使用したときにクラックが入りやすいことがわかっていたため、このころは可能なかぎり完成状態に近い寸法で鍛造し、最小限の削り代で使えるようにしていた。バルブリセスの底面と側面の間に段があるが、これは鍛造で形作ったリセスの底に機械加工を施していたため、面取りにも注目。


画像12: ヨシムラ「GSX-R750 8耐仕様」各部装備・ディテール解説

ミッションにはヨシムラならではのノウハウを生かしたチューニングが施されている。ギヤレシオはセッティングによって異なるが、個々のギヤにもワークス専用のものがある。摺動抵抗を低減するために、ギヤの歯面が研磨されている。

黒く見えるギヤは、キットパーツにはないワークスだけのスペシャルパーツで、より強度の高い表面処理を施している。ベンチテストで多用する5速(減速比が1:1に近いギヤで測定するため)のドライブとドリブンの他に、実走行で耐久性に問題があったギヤにもこのスペシャルが入る。

5速と6速のドリブンギヤの歯が斜めにカットされているのは、ギヤレシオを煮詰めていった結果、外側にある2速や1速のドリブンギヤと干渉するようになったためで、斜めにカットしてシフト時(5速または6速ギヤ側面の突起が1速または2速ギヤ側面の穴にかみ込む構造)の干渉を防ぐ。斜めにカットしたギヤは、歯にかかる面圧が増加するため、先に書いた高強度な表面処理を施している。

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