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ヨシムラ「GS1000R XR69」(1980)各部装備・ディテール解説
ヨシムラカラーである赤と黒のツートーンとなったのも、この年が初めて。浅川さんが、デイトナに出場している他のバイクを見て、これがカッコイイと自ら塗ったもの。スポンサーがあったわけでもなく、コーポレートカラーというわけでもない。
前年は赤と白で、1978年は赤。赤/黒は最初、スズキの横内悦夫さんには「黒は不吉だ」と不評だったが、勝ってしまえば良く見えるもので、以後、この赤/黒はヨシムラのコーポレートカラーとなっていく

1979年までのスーパーバイクが190kgだったから、この耐久仕様の191kgは驚くほど軽くはない。1979年にGPレーサーのRGBをベースに生まれ発展してきたフレームは高剛性だがやや重い。

ライダーが前傾するとヘルメットまですっぽり包まれる大型スクリーン。ヘッドライトとゼッケンの位置関係は1986年までこう(ライトが車体右にくる)で、以後現在まで逆配置。また、ヨシムラの“指定ゼッケン”である#12は、この年が初めて。ヨシムラのエースは1981年に#8、1985年に#15となった以外は、その後すべて#12をつける。

1980年7月27日、ウェス・クーリー/グレーム・クロスビー組が乗りヨシムラは2度目の鈴鹿8耐優勝を果たした。車体は前年からスズキ本社製でエンジンチューンとマシン全体のセットアップをヨシムラが担当した。

フレームはスズキがRGでのノウハウを生かして耐久用に設計したダブルクレードル。とてもいいフレームだが、やや重い。ダイマグ製ホイールは前後18インチでF:2.50、R:4.00。タイヤはダンロップ(バイアス)で、F:3.25/4.50-18、R:4.00/6.00-18。

回転計はワイヤ式で横にヘッドライトスイッチがある。燃料の給油口はタンク右側面で、タンク上部後の口がエア抜き。両方ともクイックチャージャー用で、側面がフランス製だが、これはフランス耐久チームが採用をすすめたもの。上部は通常のアメリカ製。

ナックル部の穴は鈴鹿入りしてから“手が熱い”というクロスビーの注文で、クロスビーが連れてきたイギリス人がまず開けた。「いきなりドリルで乱暴に開けられて、カッコ悪いからできるかぎりカタチを整えた」(浅川さん)という現場合わせのシロモノなのだ。

アルミ削り出しの上下フォークブラケットは内側が肉抜きされ、クランプボルトも肉抜きでしかも中空だ。また配線は耐久用にスズキが用意したもので、念入りにカバーされているが「24時間ならわかるが、8耐ではやりすぎで重い」とヨシムラ側にはやや不評だった。

実は耐久でブレーキパッド無交換で走るにはやや容量不足だったフルードのリザーバータンク。赤いボタンはスタータースイッチ。

エンジンはTTF-1の1000cc規定によって、STDと同じボア・ストローク=70╳64.8mmの997.5cc。とはいっても圧縮は限界まで高められ、ピストンはヨシムラ。トップリングとオイルリングの2本リングタイプで、ピストンピンはわずかにエグゾースト側にオフセットしている特殊なもの。
このオフセットは、当時焼き付きに悩まされていたときに、あえてピストンをシリンダーに押しつけて側圧をかけ、これによって放熱させて焼き付きを防止する、という独創的な手法だ。

ピストンはAMAスーパーバイクでは1025ccまでOKだから70.9mm、マン島などもっと排気量規制が緩い(1300ccあたりまでOK)では73mmとバリエーションがある。クランクは組み立て式の圧入部を溶接した対策品で、8耐用はスズキが製作した。
またクランクベアリング(STDからしてメタルではない)にはSTDが焼き付きやすかったので特殊ベアリングを使う。1次減速もSTDのヘリカルギヤをスパーギヤに変更して耐久性を高めていて、この対策はスーパーバイクでも行われている。
クラッチハウジングもアルミの削り出し。「ヘッドやポートはオヤジさんが自分で磨き仕上げたものだと思う。きっとカムなんかもピカピカのが入っている」(浅川さん)
ドライブスプロケット外側には後づけの発電機が付く。これは4輪用を流用し軽量化のためボディ部分をマグネシウムのキャスティングでわざわざ作ったもの。スプロケットにはツメで連結されているだけで、簡単に取り外せる。同じく耐久用の装備としてスターターモーターも付く。また耐久仕様の点火系はバッテリー点火のフルトラで、スーパーバイクなどのスプリント用CDIと異なる。

