まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。

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レーサーレプリカ伝 4ストローク編 (Motor Magazine Mook)
GSX-R1100から始まったリッターレプリカの歴史

SUZUKI
GSX-R1100
1986年
リッタークラスのレプリカモデルと言えば、その始祖は1986年に登場したスズキGSX-R1100だ。時代をわずかに遡れば、耐久レーサーのレプリカと言うべきホンダCB1100RやVF1000Rも存在したが、エンジンから車体までの基本的なメカニズム、そしてトータルのコンセプトが、レーシーかつ近代的なもので固められたのはGSX-R1100からだ。

Honda
VF1000R
1984年
ハイパワーな油冷エンジン、強固なアルミフレーム、レーシーなフルカウル、そして徹底した軽量化といった、まるでTTF-1レーサーのような作りは、基本的にレース用のベースモデルとして作られた1985年のGSX-R750と共通。
しかし、その油冷エンジンを排気量を1052ccへと約50%拡大、最高出力を750の105PSから130PSにまで大幅にパワーアップ。車重こそ18kg増加したが、車体のコンパクトさは750から大きく変わらず、フレームも750ベースのTTF-1レーサーに1100用のフレームを使った例があるというのだから、その強固さは折り紙つき。まさにロードゴーイングTTF-1レーサーというべき圧倒的な性能で、当時世界最速のロードスポーツとなった。
ただ、レースに直接関わることのないGSX-R1100はその後市場の要請によって、モデルチェンジを重ねるごとに快適で安定性の高いスポーツツアラー/GT的な方向にシフトしていく。1987年に登場した直接のライバルと言うべきヤマハFZR1000も、スタイリングはFZRシリーズ共通のTTF-1レーサーのようなフルカウルで、エンジンもFZR750から発展したものだった。

YAMAHA
FZR1000
1987年
しかし実態は、高性能ではあるものの純粋なレーサーレプリカではなく、タンデムのしやすさなどにも配慮されたスポーツツアラーであり、それは1996年に登場した後継モデルのYZF1000Rサンダーエースでも基本的に変わることはなかった。
むしろサンダーエースでは、その次に来るYZF-R1が提唱したセカンダリーロード(高速道路に対して、ヨーロッパに多い多彩なワインディングを指す)での速さと楽しさを追っていた。

SUZUKI
Hayabusa(GSX1300R)
1999年
オーバーリッタークラスは水冷化したGSX-R1100Wが1999年まで続いた後に、同年に現れたGSX1300R・ハヤブサが新しいアルティメットスポーツとしてその路線を昇華する。またカワサキも1990年に到達したZZ-R1100でこのクラスのフラッグシップ路線を確立し、そのZZ-Rを小改良して完成させる。
リッタークラスに本来の意味でのレーサーレプリカ的なモデルが登場し、時代の流れが大きく変わるのは1992年、ホンダCBR900RRファイヤーブレードの登場を待つことになる。
CBR900RRが歴史を変える、時代はスーパースポーツへ

Honda
CBR900RR
1992年
オーバー750クラスの大排気量エンジンを搭載したレーサーレプリカモデルは、GSX-R750のスケールアップバージョンと言うべき形で現れたGSX-R1100を嚆矢とする。しかし一部を除いては“レーサーレプリカの格好をしたスポーツツアラー”とでも言うべきもので、その総合的なポテンシャルは「レーシングマシンに限りなく近い」という意味でのレーサーレプリカのあり方からはほど遠かった。
そんな状況を一変させ、大排気量レプリカの新時代を切り開くきっかけとなったのが、1992年にホンダがデビューさせたCBR900RRだ。
それまでの大柄な大排気量レプリカとは一線を画する、750ccクラス並みにコンパクトで軽量化も徹底したボディによって得た切れ味鋭いハンドリングと、スーパーバイクレースのレギュレーションに縛られないことを逆手に取って開発された、ストロークが長めで中低速からパワフルな893ccエンジンの組み合わせによって、運動性能、動力性能ともにそれまでの常識を超えるポテンシャルを実現。
世界中のライダーから絶賛を受け、その後も熟成を重ねるたびにCBR900RRの評価は高まっていく。これに対抗してカワサキが1994年にNinja ZX-9Rを送り出すが、しばらくはCBR900RRの評価が揺らぐことはなかった。
しかし1998年に、長く続いていたCBR900RRの天下をついに終わらせたのがヤマハYZF-R1だ。サーキットではなく、ワインディングロードで最速であることを目指してすべてを一から開発。車体は極めてスリムでコンパクトな上に車体のディメンションにもWGPマシン・YZR500譲りの最新コンセプトを導入。

YAMAHA
YZF-R1
1998年
さらに乾燥重量も177kgと超軽量で、そのハンドリングは「カミソリ」と形容されるほどにシャープ。1000ccのエンジンも車体に合わせてコンパクト化を推し進めながら、最高出力も150PSを発揮。あらゆる面で当時の市販車のレベルを大きく凌駕する、その圧倒的な高性能に衝撃を受けた各メーカーによって、熾烈な開発競争がスタートすることになる。
カワサキは1998年にNinja ZX-6Rベースとして大幅に軽量化を実現した新型Ninja ZX-9Rを投入。ホンダは2000年にCBR900RRのエンジンをPGM-FI化するとともに排気量を929ccに拡大、車体もフロントの17インチ化、セミピポットレスフレームなど新しい試みを取り入れてR1に対抗。
さらにスズキも2001年、スーパーバイク用のベースモデルであるGSX-R750を元に排気量を拡大したGSX-R1000を投入。もちろんR1も改良、モデルチェンジを繰り返して高性能を追求する。こうして大排気量レプリカは加速度的に進化を遂げて行き、世界中でその人気が高まっていった。
200PSが当たり前の時代、最新電子制御デバイスをふんだんに装備して進化はさらに続いていく
こうした大排気量レプリカの世界的な盛り上がりは、ついにレースのレギュレーションにも影響を及ぼすようになる。長らく4気筒750ccで行われてきたスーパーバイク世界選手権が、2004年から4気筒1000ccへと移行、ついに大排気量スポーツが実際的な意味で「レーサーレプリカ」になった。
これに合わせて1000ccフルサイズとなったホンダCBR1000RR、カワサキNinja ZX-10Rも登場。海外のメーカーともども当然レースでの勝利を目指してさらなる開発が進み、各車それぞれモデルチェンジを繰り返していった。
そして今や、ストック状態で最高出力200PS、装備重量200kgというモンスターマシン群へと変貌。その超高性能を引き出すためのABS、トラクションコントロール、パワーモードといった電子制御デバイスの進歩と合わせ、まだまだ究極の速さを競う戦いは続きそうだ。




1990年代に入るとグランドツアラーやハイスピードスポーツが台頭。そんな時代の流れに反するように現代スーパースポーツのパイオニアCBR900RRが登場した。高い運動性能を持ち軽くてコンパクトなその新星のデビューは大きな歴史の分岐点でもあった。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。

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