2連キャブレターによるマイルドなエンジン特性などから、人気をライバルたちにー歩譲った格好だった。それを挽回すべく登場したのが、4連キャブレターやアルミフレームを採用したGSX-R250Rである。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。
スズキ「GSX-R250R(GJ73A)」(1989年)インプレ(佐藤康郎)

SUZUKI
GSX-R250R
1989年
総排気量:248cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:730mm
車両重量:143kg(乾燥)
発売当時価格:59万9000円
フレームからエンジンまでフルモデルチェンジと言うべき変更を受けて性能向上を果たす
1989年型のGSX-R250Rはフルモデルチェンジに近い形で誕生してきた。前作のGSX-R250から受け継いでいるのは、4気筒エンジンのシリンダーから下の基本設計だけ。フレームは新設計されてキャスター角が立てられ、タイヤも本格的な走りを意識したワイド超偏平ラジアルを履いている。外観もスラントしたフロントカウルやテールアップのテールカウルで一新し、ずっとスポーティに変貌している。
この新型を持ち込んだのスズキ・竜洋テストコースで、ここは完全な超高速コースである。だから高速ハンドリングとハードランでのエンジン性能を主にインプレッションするのだが、まず驚くのは、高速コーナーでの安定感だった。
180km/hのままストレートから第1コーナーに突っ込んでも、150km/hで切り返ししても、排気系の集合部を路面に擦りながら高速コーナーに進入しても平気で、ものすごくバランスがいい。安定感や接地感、剛性感などといったものが、どんな場面でも確実にライダーに伝わってくる。

ギャップも段差も、うねりも、安心して突っ切れる。コーナリング中のシフト操作も非常に容易だ。これはもちろんサスやタイヤもだが、新設計のフレームが担うところが大きい。エンジンパワーや車体サイズに対してオーバークオリティと言えるほどに、それらの完成度が高いからだ。
前後のサスペンションは前作のGSX-R250よりかなり固めになっているが、その一方で初期作動がとても良い。入り込んでからの踏ん張りもあるし、タイヤのグリップも、この高速コースでも音を上げることがない。車体の剛性感は他社を引き合いに出せば、ホンダのCBR250Rと同等かそれ以上に仕上がっている。
これらが、前に述べたような操縦性となって現れているのだ。高速コーナーでの特性を簡単にまとめれば、運動性や軽快性よりも、安定性や確実な走破性を重視したハンドリングになっている。
切り返しは決して軽快ではないが、確実だ。急制動からのコーナーへの進入、車体の寝かしこみでも不安定になることはまったくない。すべてがクイック、ではなく、すんなりと。まるで意気込んでいるライダーをなだめるようにバランスよく反応し、乗り手の操作に対して車体の挙動変化をスムーズにつなげてくれる。
とにかく、意識的に変な乗り方をしない限り、振られたり滑るということが起きない。「いくらでも開けられますよ」とマシンが言っているような、これまでのスズキ車とはやや趣を異にする、安定性重視の新たな車体という印象だ。
各部フリクションロスの低減、シリンダーヘッドの変更、ダウンドラフトキャブレターに巨大なエアクリーナーの採用などなど、車体まわり同様に大幅なリファインを受けた動力系は、レブリミッター作動回転が17600rpm。実パワーは上限が16200rpm辺りでピークとなる。
よく伸びる、というのがこのニューエンジンの第一印象だ。低回転時の粘りもなかなかで、丁寧に扱うと非常にスムーズに下から付いてくる。3000~4000rpm付近でもスルスルっと前に出る。トルク感も前作GSX-R250の比ではない。

10000rpmを超えた辺りからパワーの立ち上がりを感じるが、そこから上、15000rpmを中心に上下10000rpm辺りでの強力さは、また社外で言えばCBR250Rに近いか、それと同等のパンチがある。
これらは高速サーキットのみでの試乗の印象だが、このGSX-R250Rは、ここまでのようにサーキットもさることながら一般路での走りが楽しみでもある。高速ハンドリングの完成度の高さは述べた通り。半面、例えばRGV250Γのようなクイックさは欠ける。寝かし始めの最初の方向転換より、寝かし込んでからの旋回というイメージでの曲がり方が合っているバイクという印象だ。
ワインディングを走る場合、この特性がよりスムーズで扱いやすい操縦性につながる期待が大きいのだ。超高速域であれほどの安定を見せた車体は、ワインディングでははるかに余裕を持って、誰でも自然に楽しめるハンドリングを提供してくれることだろう。
扱いやすくスムーズで、楽に、しかも高いレベルの走りを楽しめる、こんな4ストローク250の本流ともいうべき方向でまとめられ、しかも、その限界性能には驚くべき高さがある。この辺りに、ニューGSX-R250Rの狙いの確かさが見える。
