ライバルCBR250Rがアルミツインチューブフレームを採用したのに対し、FZR250はスチールフレームだったが、1989年型では待望のアルミデルタボックスフレーム/スイングアームを採用。キャブレターの大径化や排気デバイスの改良とあわせて、SP250Fレースにも対応した“R”へと進化した。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています。

ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

▶ボディ

FZR250とFZR250Rは、1375mmのホイールベースや1120mmの全高は変わらないが、全長を2010mmから1990mm、全幅を680mmから675mmへそれぞれ短縮し、シート高も15mm低減した735mmとして、全体に低くボリューム感のあるフォルムを採用している。

また、タイヤは前後ともあえてバイアスのままとするが、リヤタイヤを120/80-17から130/70-17へサイズを拡大。

そのほか、丸型2灯のヘッドライトはΦ130mmからΦ120mmへ小径化するとともに、スラントしたアッパーカウルに合わせたフラッシュサーフェスタイプに意匠を改めた。加えて、テール/ストップライトも、それまでの1灯を2灯式に変更している。

画像1: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

バランスのよいサイドビュー。シート高は735mmとかなり低く、身長のあまり高くないライダーにもよくフィットする。ハンドル位置も低すぎない。セパレートのハンドルバーはアッパーブラケットの下側に位置させつつ、TZR250などより高めとする。


▶フレーム

画像2: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

フレームとスイングアームは造形の美を持つアルミデルタボックスフレーム。

ファクトリーレーサーのYZF750(TTF-1耐久仕様)や同YZF400(TTF-3)で培った技術に基づいて開発した新型もので、旧型の鉄製と比べてフレーム/スイングアームのねじれ剛性はそれぞれ250%/125%、横剛性は同230%/450%へと大幅に向上した。

同時に、重量では同2.0kg/1.5kgの軽量化を達成している。


▶メーターまわり

画像3: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

左側の速度計をセパレート風にマウントする3連メーター。中央の回転計は、エンジンの高回転化にともなってレッドゾーンの表示を17000rpmから18500rpmへと変更。

セパレートハンドルの装着位置は、アッパーブラケットの下側に移動された。


▶エンジン、マフラー

Φ48×34.5mmの249.7cc水冷DOHC並列4気筒は、バルブやバルブスプリング等の動弁系を軽量化するとともに、BDS26からBDST28へ大径化したキャブレター、排気デバイスEXUPの変更などによって、最高出力発生回転数を14500rpmから16000rpmに高めた。

画像4: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

新旧バルブの比較。右の2本が吸気バルブ(左が新型)、左の2本が排気バルブ(左が新型)で、それぞれ左がFZR250R用。傘径は新旧同じだが、新型である250R用は傘の内側がえぐられている。

画像5: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

ピストンも左の新型(FZR250R)、旧型(FZR250)で大きく違う。新型ではスカートを短くして大幅に軽量化している。

画像6: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

クランクシャフトは、奥(写真上側)がFZR250、手前が新型となるFZR250Rのもの。ウェブ部の形状を見ると、従来はすべてが丸型であったのに対して、新しいFZR250Rでは丸型と軽量なオムスビ型を併用。これにより回転マスを減らし、高回転型にしている。

画像7: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

エキゾーストシステムに装備されている排気デバイスのEXUPは、素材を耐熱性の高いインコネル鋳造からステンレスのプレス材に換えることで軽量化。同時にバルブの開度も変更して、130mm短くなったエキゾーストパイプとともに高回転化に貢献した。


▶F.A.I.(フレッシュ・エア・インテーク)

画像8: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

エアクリーナーに新鮮で冷たい外気を導入するF.A.I.(フレッシュ・エア・インテーク)は、空気取り入れ口をアッパーカウルの横から、ワークスレーサーYZFと同じ前方に移動した。


▶足まわり

画像9: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

フロントブレーキは、異径4ピストンキャリパーにΦ282mmのフローティングディスクをダブルで装着。当時、このクラスは片押し式キャリパーのモデルが増えていたが、ヤマハはダイレクトなタッチの対向式にこだわっていた。

画像10: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

リヤブレーキは対向2ピストンキャリパーにΦ210mmのソリッドディスクのセット。


▶SPキット

画像11: ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の各部装備・ディテール解説

同時に発表されたSPキット。地方選手権で開催されていたSP250Fにエントリーするレーシングマシンを作るためのパーツをまとめたものだが、改造が許される範囲が非常に狭かったため、パーツ点数は少なかった。

ヤマハ「FZR250R(3LN)」(1989年)の主なスペック・当時価格

全長×全幅×全高1990×675×1120mm
ホイールベース1375mm
最低地上高140mm
シート高735mm
車両重量141kg(乾燥)
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量249cc
ボア×ストローク48.0×34.5mm
圧縮比12.0
最高出力45PS/16000rpm
最大トルク2.5kgf・m/12000rpm
燃料供給方式キャブレター(BDST28)
燃料タンク容量14L
変速機形式6速リターン
キャスター角24゜30′
トレール量87mm
ブレーキ形式(前・後)Φ282mmダブルディスク・Φ210mmディスク
タイヤサイズ(前・後)100/80-17・130/70-17
発売当時価格(1989年)59万9000円

まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING

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