新分野のレーサーレプリカを、距離を置いたところから眺めていた感があったカワサキだったが、1988年にKR-1とZX-4というふたつの新しいモデルを投入することで、このカテゴリーに対する意欲を示した。2ストロークKR-1系こそ短命だったが、4ストロークはZXR400へと進化し改良を重ねて実力を高めていった。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※本記事は2025年7月2日に発売された『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』の内容を一部編集して掲載しています

カワサキ「ZX-4(ZX400G)」(1988年)の各部装備・ディテール解説

画像1: カワサキ「ZX-4(ZX400G)」(1988年)の各部装備・ディテール解説

ZX-4のために開発されたe-BOX(上から見て卵=eggの形をしていることからの名)フレームは、ヘッドパイプとスイングアームピボットプレートを直線的に結ぶメインパイプに、縦120mm×横30mmで日の字断面のアルミ押し出し材を用いる。

アンダーチューブは持たず、エンジンを強度部材として活用するツインスパータイプとし、車体総体での剛性を向上。シートレールもアルミ角パイプで作られ、固定ボルトによる重量増加を避けるためメインフレームに溶接で接続される。スイングアームもアルミ製で、縦80mm×横35mmの押し出し材を左右レールに使用。

リアサスペンションはボトムリンク式モノショックで、プリロードを無段階、伸び側減衰力を4段階で変更できるショックユニットの下端部とフレームをへの字型のアームで接続。アームの曲がった頂点とスイングアーム下側をアルミ製のロッドで連結する。カワサキの呼び名はユニトラックだ

軸距は1395mm、キャスター/トレールは24度/87mmを公称。写真では取り外されているが、左右ステップはヒールプレートを兼ねる大型のアルミ製ブラケットでフレームに固定され、ブレーキペダルはステップバーと同軸で装着されるが、シフトペダルはブラケットに軸受け部を備える。ブラケットとシート下に装着されたカバーは連続する造形で、大型のサイドカウルと相まってフルカバードに近いデザインを構築。このあたりがツアラー/オールラウンドモデル的で、レプリカらしさに欠けると思わせる部分でもある。

画像2: カワサキ「ZX-4(ZX400G)」(1988年)の各部装備・ディテール解説

メーターは4連式で、左から、燃料残量計、190km/hスケールの速度計(文字は180km/hまで)、16000rpmを上限とし、レッドゾーンが13500rpmからの回転計、そして水温計が並ぶ。

下段の左右にはインジケーターランプが3個ずつ置かれ、左がウインカー、ハイビーム、ニュートラル、右がオイルプレッシャー、スピード警告、ウインカー。ハンドルはセパレートで、クランプはトップブリッジ下に置かれる。フロントフォークはインナーチューブがΦ41mmの正立式で、調整機構は持たない。

画像: 燃料タンク(16.0L)前方に容量8Lのエアクリーナーボックスを装着。

燃料タンク(16.0L)前方に容量8Lのエアクリーナーボックスを装着。

画像3: カワサキ「ZX-4(ZX400G)」(1988年)の各部装備・ディテール解説

Φ57×39mmのボア×ストロークを持つ直4エンジンは専用設計で、シリンダーを25度前傾させて積まれる。カムチェーンを右端に置いてシリンダーピッチを狭め、全体を小型化。単体重量は48kg(吸排気系除く)を公称。

バルブ挟み角を25度(吸気12度/排気13度)と狭く設定してシリンダーヘッドを小さくするとともに、吸気ポートをストレートに配置。

画像4: カワサキ「ZX-4(ZX400G)」(1988年)の各部装備・ディテール解説

キャブはケーヒンのダウンドラフトタイプ、CVKD30を4連装。ブラックに塗られたエキゾーストパイプは4-2-1構造で、集合部の前で1/4番と2/3番をバイパスで連結、排気脈動を有効に活用していた。最高出力は59PS/12000rpm、最大トルクは3.9kg-m/10000rpmを公称する。

画像: 上の写真左が前作GPX400R、右がZX-4のピストンで、背を低くして全体を小さくするとともに、トップ/セカンドリングを0.8mm、オイルリングを1.5mmの軽量薄型としてメカニカルロスを低減する。

上の写真左が前作GPX400R、右がZX-4のピストンで、背を低くして全体を小さくするとともに、トップ/セカンドリングを0.8mm、オイルリングを1.5mmの軽量薄型としてメカニカルロスを低減する。

画像: ロッカーアームも構造が改められ、上左のGPX400Rは1本のロッカーアームで2本のバルブを動かすのに対し、ZX-4は1ロッカー1バルブに変化。ロッカーアームを小型化することで剛性を向上、重量を削減し、高回転域での作動の正確さを高めている。吸気バルブも新作パーツで、ステム径をΦ4mmと細くする一方、傘径をIN/EX:Φ22/Φ19mmと大きくしてフリクションロスと慣性重量を低減。優れた吸排気効率を得ている。

ロッカーアームも構造が改められ、上左のGPX400Rは1本のロッカーアームで2本のバルブを動かすのに対し、ZX-4は1ロッカー1バルブに変化。ロッカーアームを小型化することで剛性を向上、重量を削減し、高回転域での作動の正確さを高めている。吸気バルブも新作パーツで、ステム径をΦ4mmと細くする一方、傘径をIN/EX:Φ22/Φ19mmと大きくしてフリクションロスと慣性重量を低減。優れた吸排気効率を得ている。

画像: サイレンサーは集合部から続く連結パイプと一体成型され、グラスウールを挟み込んだ3重構造として消音効果を高める。

サイレンサーは集合部から続く連結パイプと一体成型され、グラスウールを挟み込んだ3重構造として消音効果を高める。

画像: フロントブレーキはリアと同形式の片押し2ピストンキャリパーにΦ300mmと大径なフローティングディスクを組み合わせる。カワサキ独自のハイμシンタードパッドを組み合わせることで、優れた制動力を引き出したとアピール。ホイールサイズは3.00-17で、110/70R17のラジアルタイヤを履く。

フロントブレーキはリアと同形式の片押し2ピストンキャリパーにΦ300mmと大径なフローティングディスクを組み合わせる。カワサキ独自のハイμシンタードパッドを組み合わせることで、優れた制動力を引き出したとアピール。ホイールサイズは3.00-17で、110/70R17のラジアルタイヤを履く。

画像: リアブレーキは、Φ240mmソリッドディスクと、リア用としては珍しいピンスライド片押し2ピストンキャリパーの組み合わせだ。3本中空スポークのルミキャストホイールは4.00-18で、140/60R18のラジアルタイヤを履く。

リアブレーキは、Φ240mmソリッドディスクと、リア用としては珍しいピンスライド片押し2ピストンキャリパーの組み合わせだ。3本中空スポークのルミキャストホイールは4.00-18で、140/60R18のラジアルタイヤを履く。

画像: キットパーツ/改造範囲の広いF3クラスを走るためのキットパーツで、吸排気カムやピストン、キャブレターのセッティングパーツ、エアファンネル、クロスミション、ドライブ/ドリブンスプロケット、アルミサイレンサーを装備するエキゾーストシステム、メーターステー、大型ラジエーターとホース、イグナイター、各種ガスケットなどで構成される。当時の価格は44万9000円(税抜き)。

キットパーツ/改造範囲の広いF3クラスを走るためのキットパーツで、吸排気カムやピストン、キャブレターのセッティングパーツ、エアファンネル、クロスミション、ドライブ/ドリブンスプロケット、アルミサイレンサーを装備するエキゾーストシステム、メーターステー、大型ラジエーターとホース、イグナイター、各種ガスケットなどで構成される。当時の価格は44万9000円(税抜き)。

画像: SPキット/手を入れられる部分がF3クラスに比べて少ないSPクラスのために、セッティングパーツが基本となる。マフラーやドライブ/ドリブンスプロケット、キャブレター関連パーツ、各種ガスケットなど8パートのパーツが含まれ、価格は15万3000円(税抜き)とされた。

SPキット/手を入れられる部分がF3クラスに比べて少ないSPクラスのために、セッティングパーツが基本となる。マフラーやドライブ/ドリブンスプロケット、キャブレター関連パーツ、各種ガスケットなど8パートのパーツが含まれ、価格は15万3000円(税抜き)とされた。

カワサキ「ZX-4(ZX400G)」(1988年)の主なスペック・当時価格

全長×全幅×全高2035×715×1130mm
ホイールベース1395mm
最低地上高120mm
シート高765mm
車両重量177kg
エンジン形式水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量398cc
ボア×ストローク57.0×39.0mm
圧縮比11.5
最高出力59PS/12000rpm
最大トルク4.0kgf・m/10000rpm
燃料供給方式キャブレター(CVKD32)
燃料タンク容量16L
変速機形式6速リターン
キャスター角24°
トレール量87mm
ブレーキ形式(前・後)Φ300mmダブルディスク・Φ240mmシングルディスク
タイヤサイズ(前・後)110/70R17・140/60R18
発売当時価格(1988年)69万8000円

まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING

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