RG250Γに続くアルミフレーム採用の市販車第2弾として1984年春に登場したGSX-Rは乾燥重量152kgを公表、400ccクラス上限の59PSと驚異的なパワーウェイトレシオを引き出した。GS1000R譲りのレーサー然としたスタイルも魅力的であり、400ccレーサーレプリカ時代の幕を開けることになった。
まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※この記事は2025年7月2日に発売した『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』に掲載したものを一部編集して公開しています。

スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

スタイリング

画像1: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

撮影車は2型(初期型の1年後に発売)に初期型の外装を装着したもので、それを除けば完全にSTD状態。程度は極上と言えるもので、特にミドルカウルは真新しい。オーナー・徳原さんはこだわりで、初期型の外装を苦労して入手した。2灯式ヘッドライトのハーフカウルや4into1の排気系を装備するスタイリングは、1983年世界選手権耐久レースのチャンピオンマシン、GS1000Rの雰囲気があって、当時を知る身には、これ以上はあるまいと言えるほどレーシーで格好よく見えたのを覚えている。

画像2: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

ホイールベース1425mm、キャスター27度25分というディメンションで、車体がそれほど小さいわけではないが、乾燥152kgの車重やスリムな車体のおかげで取り回しやすい。リアサスペンションはショックユニットを上下から押すリンク式のフルフローターで、左側ステップ上に装備されるノブによって、初期荷重が5段階に調整できる(RPCL=リモート・コントロール・プリ・ロード)。減衰力調整機能はない。


フロント&リアビュー

画像3: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

丸目2灯ヘッドライトのハーフカウルは当時の耐久レーサーを彷彿させるもので、GSX-R発売時点では他に採用しているモデルはなく、そのスタイルは実に新鮮に映った。フロントウインカーもビルトインタイプでスマートに処理されている。ヘッドライトは12V35/35W(50~60W時代の前)×2 。

画像4: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

ほどよいボリューム感がある前方からの眺めと比べると、リアビューはスリムに仕上げられ、軽快で俊敏なイメージが強い。テールカウルは後端が思い切って絞られ、こちらもビルトインされるリアウインカーのデザインもユニークだ。リアタイヤの幅は110 。レプリカでも、当時はまだ細かった。


メーターまわり

画像5: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説


ハンドルは左右セパレートタイプで、三ツ叉の上側にクランプされる。1980年代後半のレプリカモデルはどんどん本物のレーサーに近づくが、それ以前はこうした作りが多く、ラインディングポジションはより実用的である。写真中央下、燃料タンク前方にある黄色いパーツはブリーザーホースの樹脂製キャップで、本来は白だが変色してしまったようだ。

画像6: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説


3連メーターのマウントがスポンジなのもレーシーだった。文字盤は、初期型はダークカラーだったが、2型でホワイトに変更された。速度計は180km/hスケールで、オド/トリップメーターを内蔵。回転計は真下の3000から13000rpmまでが目盛られるレーサー的なもので、12000rpmからがレッドゾーン。右側は水温計と燃料計で、メーターパネル下部にはウインカー、ニュートラルほか、各種のパイロットランプが並ぶ。


燃料タンク

画像7: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説


フレームパイプに沿った下端形状を持つ燃料タンクは、コンパクトでスリムな作りだが厚みがあり、18.0Lという400ccとしては十二分な容量が確保されている。キャップはフラットなエアプレーンタイプの埋め込み式で上面はフラットだ。


エンジン

画像8: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説


MR-ALBOX(マルチリブ・アルミボックス)フレームに搭載される水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブエンジンは、1年前の1983年春にデビューしていたGSX400FWが元。とは言え実質はまったくの新設計で、吸排気バルブの大径化や圧縮比アップが行われ、ピストンとコンロッドの軽量化、シリンダーおよびクランクケースの肉抜きなども施されて、エンジン単体重量でFWより10kg以上軽い。

画像9: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説


アルミフレームもさることながら、このエンジンが車重の軽減に大きく貢献した。もちろん性能向上も大幅で、Φ53.0×45.2mmのボア×ストローク、398.9ccの排気量はFWと共通だったが、最高出力59PS/11000rpm、最大トルク4.0kgf・m/9000rpmと、FWに対して9PS、0.4kgf・mの性能向上を果たし、クラストップの高性能(59PSは自主規制によって横並び。だから軽さが効いた)を誇った。


シート

画像10: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

ダブルタイプのシートは細長く、尻を包み込む感じはないが体重移動はしやすい。シート高は780mmで、足着き性は良好。シートのタンデム部は小さい。


ステップまわり

画像11: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説


ラバーを持たないステップバーはアルミ製で、ペダル類やステップホルダーも同じくアルミである。
また、サイレンサーにもアルミ材を採用して軽量化を促進。アルミ製のパーツ類は軽いだけでなく見た目の質感も高い。

画像12: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説



足まわり

画像13: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

フロントブレーキはΦ236mmのソリッドディスクと対向4ピストンキャリパーのセットをダブルで装備。インナーチューブΦ36mmのANDF付きフロントフォークに張られるデカール、DECA PISTONは、リアキャリパーの2個を含め、キャリパーが全部で10個のピストンを持つことを表す。前輪はスズキが当時の流行の先鞭を付けた16インチ(ホイールは2.15-16)で、タイヤは100/90-16。取材車はBT-30Fを装着。

画像14: スズキ「GSX-R(GK71B)」(1985年)の各部装備・ディテール解説

リアブレーキはΦ210mmソリッドディスクと対向2ピストンキャリパーのセット。一方、リアホイールは2.15-18インチで、タイヤは110/90-18。取材車はBT-45Rを装着するが、純正タイヤはダンロップのK300など数種。スイングアームもアルミ製で、角型断面タイプだ。

スズキ「GSX-R(GK71B)」(1984年)の主なスペック・当時価格

全長×全幅×全高2090×710×1185mm
ホイールベース1425mm
最低地上高135mm
シート高780mm
車両重量152kg(乾燥)
エンジン形式水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量398.9cc
ボア×ストローク53×45.2mm
圧縮比11.3
最高出力59PS/11000rpm
最大トルク4.0kgf・m/9000rpm
燃料供給方式キャブレター(AS27VW)
燃料タンク容量18L
変速機形式6速リターン
キャスター角27゜25'
トレール量96mm
ブレーキ形式 前・後ダブルディスク・ディスク
タイヤサイズ(前・後)100/90-16 54H・110/90-18 61H
当時価格(1984年)62万9000円

まとめ:岡本 渉/協力:バイカーズステーション、佐藤康郎、H&L PLANNING
※この記事は2025年7月2日に発売した『レーサーレプリカ伝 4ストローク編』に掲載したものを一部編集して公開しています。

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