まとめ:オートバイ編集部/協力:RIDE編集部
▶▶▶写真はこちら|ヨシムラ「トルネードIII 零-50」(13枚)
ヨシムラ「トルネードIII 零-50」各部装備・ディテール解説


ほぼレーサーと言っても過言ではない零-50
2004年の第31回東京モーターサイクルショーで、ヨシムラは報道陣向けに2台のコンプリートマシンを初公開した。そのうちの1台が、GSX―R1000(K3)をベースにしたトルネードIII 零-50(ゼロ・フィフティ)である(もう一台は次のページで紹介しているライトニング)。ヨシムラは2002年から始まったJSB1000クラスに、2003年から参戦。渡辺篤選手のライディングでランキング2位を獲得。
そのノウハウをコンプリートマシンに反映させるという手法は、これまでと同じだが、零-50が決定的に異なるのは、実際のレーサーとほぼ共通のスペックが与えられている点だった。車名には、創業者である故・吉村秀雄氏が最初に整備した飛行機(零式輸送機)の名称や、創業50年の節目にゼロからスタートするという思いなどが込められている。
その中身は「レーサーに保安部品を装着しただけ」と言っても過言ではなく、限定5台の生産で、価格はこれまでの最高額となる840万円だった。


すっきりとまとめられたマスクのおかげで、正面から見たスタイルは非常にフラットな印象を受ける。
ヘッドライトは、零-50のためにHELLAが専用開発した、丸型のHIDユニットを採用。その手前にはスモールランプも用意された。ウインカーはリアと同様LEDが採用されており、保安部品は極力控えめにレイアウトされているため、リアビューはまさにレーサーそのものとなっていた。ウインカーは、LEDの光を厚手のアクリル板に透過させて発光させるユニークな方式となっていた。

エンジン本体へのチューンアップは、全日本選手権を走るレーサーとほぼ同メニューとされる。
タイプRのカムシャフト、圧縮比を12.0→13:1へと高めるピストン、軽量なH断面のコンロッド、ステンレス削り出しのバルブコッターなどを組み込むとともに、ボート研磨やクランクのバランス取りなども行われた。
純正の燃料噴射装置を用いるが、1番と4番の気筒に全高35mm、2番と3番の気筒には同55mmとした特製エアファンネルを装着、ヨシムラのサブコンピュータ「EMS」でセッティングが施された。エンジン下にあるオイルパンはオリジナルのオフセットタイプに換装されている。
その横に集合部が位置するフルチタンのマフラーは専用品で、オイルパンの左側、2本のワイヤーが装着された部分には可変バタフライを内蔵。
集合部とサイレンサーの連結パイプに設けられたこのデバイスは、出力特性の改善や排気音の低減などに貢献。ベース車両のGSX-R1000にも同様の機構は備えるが、バタフライを開閉させるモーターやその制御部などもヨシムラが製作している。

カウルを外すと、カーボンのラムエアダクトが現れる。ヘッドライトや後述するメーターなどは、アルミステーで支持されている。外装パーツを外した際の姿は、レーシングマシンそのものといった感じとなっていた。

最高速やエンジン回転数を呼び出せるデータロガー機能を備えたデジタルメーター。アルミ削り出しのステムキットは、軸受け部のカラーを差し替えることでオフセットを変更できる。また、純正キーシリンダーのハンドルロックにも対応していた。

ショートタイプのサイレンサーは、全日本用レーサーが装着するものとよく似た外観だが、公道走行に合わせて騒音規制をクリア。そのエキゾーストノートは独特なものとなっていた。

YOSHIMURAの刻印が記されたスイングアームは、耐久仕様のスペシャル仕様。前後ホイールにはBBSのマグネシウム鍛造が採用される。左右のステップは、レースキットとして販売されていたアルミ削り出し品が使われた。

スッキリとしたシートカウルをはじめ、各部の外装はドライカーボン製で軽量な仕上がりに。シートはクシタニと共同開発したレザーシートを採用し、テールランプとウインカーはともにLEDとなっている。
まとめ:オートバイ編集部/協力:RIDE編集部



