ホンダを代表するオートバイの1台、当時登場したレーサーレプリカの中でも代表格としても挙げられるホンダ NSR250R。その性能は他を凌駕するものがあり、当時はもちろん、今もなお多くのファンを持つ。ここで1988年に登場したMC18の前期型、通称“ハチハチ”を解説する。
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸/協力:Bikers Station、H&L PLANNING
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ホンダ「NSR250R」(MC18前期・1988年)各部装備・ディテール解説

▶エンジン

画像1: ホンダ「NSR250R」(MC18前期・1988年)各部装備・ディテール解説

コンピュータ制御を加え細部も改良されたエンジン

多くの領域にコンピュータ制御を導入したエンジンは、PGMキャブレター以外に、点火系もPGM-CDIシステムに変更。キャブレターにスロットル開度センサーを設けて点火マップに補正を加えるとともに、急激なスロットル操作(開度変化)に対しては進角を補正することで最適な点火タイミングを決める。

モーター駆動でバルブを上下させて排気タイミングを変えるRCバルブは、生産手法を新しくしてシリンダーのポート部とバルブのクリアランスを極力減らし、低中回転域では吹き抜け量を減らして燃費と出力を向上、高回転域では乱流の発生を抑えている。

画像2: ホンダ「NSR250R」(MC18前期・1988年)各部装備・ディテール解説

トルクの向上でより扱いやすく

“HONDA RACING”の文字を刻んだクラッチカバーなどもMC16から継承する水冷2ストローク90度V型2気筒のエンジンは、Φ54×54.5mmというほぼスクエアなボア×ストロークから249.6ccの排気量を得るのは同じだが、圧縮比を6.2:1から7.3:1に高めた。日本の自主規制の都合上最高出力の公称値はMC16の45PS/9500rpmから不変だが、最大トルクは3.6kgf・m/8500rpm→3.8kgf・m/8000rpmと高められた。


▶フレーム

画像3: ホンダ「NSR250R」(MC18前期・1988年)各部装備・ディテール解説

エンジンに合わせ、車体関係もアップデート

幅が非常にスリムなアルミツインチューブフレームは、ヘッドパイプと左右スイングアームピボットプレートを直線的に結ぶ構造を先代MC16と同じとするが、左右のメインレールの断面形状を縦長の長方形から変則五角形に変更している。

レールの上側、車体の外側となる部分の角を落として縦方向の剛性向上を狙ったもので、当時のワークスNSRやRC30(VFR750R)などと同じだ。

画像4: ホンダ「NSR250R」(MC18前期・1988年)各部装備・ディテール解説

丸パイプとプレス板を組み合わせたシートレールを左右二本ずつのボルトでフレームに締結するのはMC16から変わらず。スイングアームは新作となり、押し出し材の左右アームをより太くして剛性が上げられていた。


▶そのほか注目のポイント

画像: レーサーに近い外観とするためヘッドライトは長方形のままだが、MC16より小型化された。光源にはハロゲンバルブを使って充分な明るさを得ている。ボディ/ステーともマット調のブラックとしたバックミラーの鏡面も他のモデルより小さい。

レーサーに近い外観とするためヘッドライトは長方形のままだが、MC16より小型化された。光源にはハロゲンバルブを使って充分な明るさを得ている。ボディ/ステーともマット調のブラックとしたバックミラーの鏡面も他のモデルより小さい。

画像: 水温計を外に出した三連タイプとなったメーター。回転/水温の両メーターの背後にスポンジプレートを置いて、レーサーに通じる外観としている。

水温計を外に出した三連タイプとなったメーター。回転/水温の両メーターの背後にスポンジプレートを置いて、レーサーに通じる外観としている。

画像: 走行状況に応じてキャブレターの空燃比を補正する、一般市販二輪車世界初となるコンピュータ制御式PGMキャブレターを採用。現在もホンダ車の様々な場面で使われる「PGM (プログラムド)」はここから始まった。

走行状況に応じてキャブレターの空燃比を補正する、一般市販二輪車世界初となるコンピュータ制御式PGMキャブレターを採用。現在もホンダ車の様々な場面で使われる「PGM (プログラムド)」はここから始まった。

画像: 従来型よりもテールパイプの長い新型チャンバーを採用。サイレンサーはかなり細身の設計で、スタイリッシュなだけでなく、軽量化、マスの集中化にも貢献している。

従来型よりもテールパイプの長い新型チャンバーを採用。サイレンサーはかなり細身の設計で、スタイリッシュなだけでなく、軽量化、マスの集中化にも貢献している。

画像: 1987年のMC16と同じ「目の字断面」の構造ながら、上部外側の角を落として異形5角断面としたニューフレーム。角が増えることで剛性が増した。タンクエンブレム下付近のボルト穴は、ステアリングダンパーの装着を考慮したもの。

1987年のMC16と同じ「目の字断面」の構造ながら、上部外側の角を落として異形5角断面としたニューフレーム。角が増えることで剛性が増した。タンクエンブレム下付近のボルト穴は、ステアリングダンパーの装着を考慮したもの。

画像: アルミ押し出し成型スイングアームは、パイプ断面を大型化することでねじれに対する剛性をアップ。リアショックも改良され路面追従性が高められた。

アルミ押し出し成型スイングアームは、パイプ断面を大型化することでねじれに対する剛性をアップ。リアショックも改良され路面追従性が高められた。

画像: フロントフォークのインナーチューブ径はMC16のΦ39からΦ41に拡大。ブレーキもローターが新デザインとなりΦ256mmからΦ276mmとなり、異径対向4ピストンキャリパーが組み合わされる。U字六本スポークホイールのリム幅は3.00-17。

フロントフォークのインナーチューブ径はMC16のΦ39からΦ41に拡大。ブレーキもローターが新デザインとなりΦ256mmからΦ276mmとなり、異径対向4ピストンキャリパーが組み合わされる。U字六本スポークホイールのリム幅は3.00-17。

画像: シートカウルのデザイン変更に伴って、シートクッション材の形状や厚みも変更されている。着脱式のタンデムシートとその下の小物入れスペースはそのまま継承されている。

シートカウルのデザイン変更に伴って、シートクッション材の形状や厚みも変更されている。着脱式のタンデムシートとその下の小物入れスペースはそのまま継承されている。

画像: 全体にコンパクト化が図られると同時に新デザインのテールカウル。NSR250Rのアイデンティティのひとつである丸型2灯テールランプも、この1988年型から採用された。

全体にコンパクト化が図られると同時に新デザインのテールカウル。NSR250Rのアイデンティティのひとつである丸型2灯テールランプも、この1988年型から採用された。

ホンダ「NSR250R」(MC18前期・1988年)主なスペック・販売当時価格

全長×全幅×全高1985×640×1105mm
ホイールベース1355mm
最低地上高135mm
シート高770mm
車両重量145kg
エンジン形式水冷2ストローク ケースリードバルブ90度V型2気筒
総排気量249.6cc
ボア×ストローク54.0×54.5mm
圧縮比7.3
最高出力45PS/9500rpm
最大トルク3.8kgf・m/8000rpm
燃料タンク容量16L
変速機形式6速リターン
キャスター角24°00′
トレール量90mm
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスク
タイヤサイズ(前・後)110/70-17 53H・140/60-R18 64H
販売当時価格(1988年)57万9000円

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