文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸/協力:Bikers Station、H&L PLANNING
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ホンダ「NSR250R」(MC18前期・1988年)特徴

Honda
NSR250R(MC18前期)
1988年
総排気量:249cc
エンジン形式:水冷2スト・クランクケースリードバルブ90度V型2気筒
シート高:770mm
車両重量:145kg
販売当時価格:57万9000円
世界初となるコンピュータ制御のキャブレターを採用
1987年に投入したNSR250Rで、ようやくライバルのTZRと同じステージに立ったホンダの2スト250ccレプリカ。鈴鹿4時間耐久レースを頂点とするアマチュアレースでの人気もピークを迎えようとする中で、さらなるポテンシャルアップを狙うべく、翌1988年にフルモデルチェンジが実施され、二代目となるNSR250R・MC18型が登場した(当時販売価格:57万9000円)。
このフルモデルチェンジの目玉となったのは、一般市販二輪車としては世界初となるコンピュータ制御式のPGMキャブレターの採用。これはキャブレターのジェットニードル部分に通じる専用の空気通路を設け、エンジン回転数とスロットル開度に応じてその通路を開いたり閉じたりするシステム。


自然現象を利用して混合気を作り出すキャブレターの場合、どうしてもある条件下で混合気が濃すぎる状況が発生してしまうが、このシステムによってそれを補正することで、常に理想に近い濃さの混合気をエンジンに送り込むことに成功した。
加えて、エンジン回転数とスロットル開度に応じて点火夕イミングを細かく制御すPGM-CDI、作動パターンが二段階に増えたRCバルブIIも採用され、ドライバビリティが飛躍的に向上することとなった。
車体関係も、メインパイプに五角断面材を使用した新設計のアルミツインチューブフレームをはじめ、フロントフォークの大径化、1インチワイドとなった新作ホイール、ブレーキの強化、リアヘのラジアルタイヤの採用、カウル形状の一新など、登場から2年というスピードで全面的にブラッシュアップされた。
NSRのこのフルモデルチェンジは、デビュー以来基本構成を変えていないスズキRG250Γ、カラーリング変更のみで3年目を迎えたヤマハTZR250に大きな差をつけることとなった。さらに同年3月には量産車では初となるマグネシウム合金ホイール「MAGTEK/マグテック」を標準装備し、専用カラーなどを採用した「SP」モデルも登場した(当時販売価格:66万円)。
歴代NSRの中でもっともパワフルで、NSRマニアの間では今も昔も「ハチハチ」の愛称で呼ばれる垂涎のモデルとなっている。

キャブにもコンピュータ制御技術を導入し、車体系もアップデートされたMC18前期型
エンジンは基本を先代MC16と同じとするが、フラットバルブを持つキャブレターのメインボアをΦ28→32mmに大径化。ビッグボアによる息つきを防止するためにエンジン回転数とスロットル開度を検出しコンピュータで演算、エアジェットを調整して空燃比を最適化するPGM(プログラムド)キャブレターを採用。排気デバイスはより性能を高めたRCバルブIIへ進化。
また、ツインスパーフレームの左右レールもMC16同様の目の字断面だが、外形がMC16の角型から異型五角形に変化。ホイールベースは5mm短い1355mmに、キャスター角は26度から24度に立てられ、トレールは103mmから90mmへと減少された。

フロントフォークはインナーチューブをΦ41mmに大径化しプリロード可変機構を追加。前後ホイールはMC16同様に17/18インチだが、リム幅が前2.75→3.00、後ろ3.00→4.00にそれぞれ拡大。スポークは、MC16のS字断面三本からU字断面の六本に変化。これはワークスレーサーに倣った新作。
タイヤもフロントはバイアスのまま100/80→110/70とワンサイズ太くなり、リヤは130/70→140/60にサイズを変えるとともにラジアル化。全長×全幅×全高はそれぞれ1985×640×1105mmで、MC16より50mm短く、65mm狭くなったが高さは同じ。シート高は20mm増の770mmで、乾燥重量は2kg増の127kgとなっていた。
前モデルのMC16が1987年に登場したにもかかわらず、1年という短いスパンでフルモデルチェンジを果たして登場したMC18前期型。明確なライバルに勝つ、差をつけるための進化には多くのライダーが虜になった。