文:佐川健太郎/写真:BMW MOTORRAD
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BMW「R12G/S」インプレ(佐川健太郎)

BMW
R12G/S
総排気量:1169cc
エンジン形式:空油冷4ストDOHC4バルブ水平対向2気筒
シート高:860mm
車両重量:229kg
注文受付開始:2025年5月21日
税込価格:245万1000円~
※今回はリア17インチにオンロードタイヤでの設定で試乗
気負わずにオフを楽しめる穏やかなレトロ・スポーツ
オンもオフも、とことん走って楽しめるネオクラシック・アドベンチャー、それが「R12G/S」だ。1980年代のパリ・ダカールラリーで名を馳せた伝説の初代「GS」──R80G/Sへのオマージュが随所にちりばめられたフォルムは、見る者の冒険心を熱く刺激する。心臓部にはR12nineT譲りの1170cc空油冷ボクサーツイン+シャフトドライブのパワーユニットを搭載。
専用設計のスチール鋼管フレームに、ロングストロークの前後サスペンションを組み合わせ、前21インチ&後17インチのワイヤースポークホイールで本格オフロードにも余裕で対応する。さらに、ロード/レイン/エンデューロの3つのライディングモードにコーナリングABS&トラコンなど最新の電子制御系も標準装備。クラシカルなルックスにBMWらしい現代的な走行性能と安全性が盛り込まれている。
まず見た目がアドベンチャー好きには堪らない。ビキニカウルが付いた丸型ヘッドライトは、ガストン・ライエが砂漠を越えて勝利したR80G/Sファクトリーマシンを彷彿させる。シンプルな空油冷ボクサーエンジンは低速から粘り強くパンチ力もあり、じわっと出てくるパワーとまったりとした回転フィールが親しみを感じさせてくれる。
R1300GSの怒涛のパワーと剛性感の塊のようなガッチリとした安定感とはひと味もふた味も異なる。どこかふわっとした柔らかい乗り味がイイ感じなのだ。

この感じ、かつての空油冷時代のR1200GSと似ている。それもそのはず、エンジンは2010年にツインカム化された後期型を継承しているではないか。109PSのスペックも同等レベルだ。ハンドリングも大らかで乗り心地も快適。緩やかなワインディングが連なる田舎道がぴったりくる。標準装備のオン・オフタイヤでも普通の林道なら十分に楽しめるはず。
ビキニカウルは最小限なので高速移動には向いてないかもしれないが、適度なサイズ感も含め普段使いやショートツーリングにもおすすめだ。
オフロードもメチャ楽しい。フロントサスペンションがBMW特有のテレレバーではなく通常のテレスコビックで、しかも21インチホイールであることも奏功していると思う。軽量スリムな車体とBMW最長レベルのストローク量を持つ前後サスによる走破性はかなりのもの。

その証拠に専用オフロードコースでもR1300GSと遜色ない走りをしてくれた。というよりも、オフのエキスパートではない自分にとっては、R12G/Sのほうがむしろ扱いやすかったぐらいだ。
だからこそ一歩先に進みたくなる。特にリア18インチにブロックタイヤを履いた「エンデューロ・パッケージ」の完全オフぶりは、歴代GSが築いてきた多目的長距離ツアラーとはややベクトルが異なる立ち位置なのかと思う。
ずばり、オフロードに軸足を置いたレトロ・スポーツなのだ。その意味でトップエンドを狙う水冷GSとは違った楽しみ方ができると思う。