文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
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ヤマハ「TMAX560 TECH MAX ABS」インプレ(太田安治)

YAMAHA
TMAX560 TECH MAX ABS
総排気量:561cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:800mm
車両重量:221kg
発売日:2025年2月28日(金)
税込価格:164万4500円
更なる走行性能の進化で成熟した走りを堪能する
生粋のロードスポーツに匹敵するスポーティーさと高速性能を備え、それまで「近距離移動の足」と捉えられていたスクーターのイメージを一変させたのがTMAX。初代登場は2001年だが、マイナーチェンジ、モデルチェンジのたびに最新技術が投入され、2025年型は9代目ということからも、開発陣の真摯な姿勢が伝わってくる。
試乗した「テックマックス」は、電動スクリーンやシートヒーター、クルーズコントロール、調整可能なリアサスペンション、タイヤ空気圧監視システムなどを装備し、ツーリング適性を高めた上級バージョンだ。
走り出した瞬間に感じたのが発進加速/減速のリニアリティがさらに増したこと。遠心クラッチの断続が2000回転弱の低いポイントでスムーズにおこなわれるからクラッチが完全に切れる頻度が少なく、例えば10km/h以下での微妙に速度調整が必要なときでもリアブレーキを使わずに済む。
中間加速時はスロットルを開けた際にエンジン回転の上昇に遅れて速度が増してくる「ラバーバンドフィール」が他のスクーターより圧倒的に少なく、加減速フィーリングはCVT変速とは思えないほどダイレクト。これはスポーティな走りを支える大事な要素だが、ストリートライディングの快適さにも大きく貢献している。

フル加速では6000回転近辺、公道での中間加速では3500~4500回転を使って豪快に加速する。100km/hクルージング時は約4600回転前後で、等間隔爆発となる360度クランク特有のビートの効いた排気音を響かせる。
改めて感心したのがスポーツ性の高いハンドリング。アルミ製のダイヤモンド型フレームにΦ41mmの倒立フォーク、スポーツバイクと同じく独立したスイングアーム、専用開発された前後タイヤの剛性バランスが入念に煮詰められていて、ハードブレーキからの寝かし込み、深いバンク角での安定性、クイックな切り返しでの反応と路面追従性はロードスポーツそのもの。
それだけに街乗り速度域ではサスが硬めだが、テックマックスはリアのプリロードと伸び側減衰力を調整でき、弱めにセットすることで乗り心地を優しくできる。

ワインディングロードではリアブレーキを使ってエンジン回転数と車体姿勢をコントロールすることでダイナミックな走りを楽しめるし、2025年型から採用された6軸IMUによってコーナリング中のABS介入も制御され、安全性も高まっている。
ライバル車不在のスポーツ性能と至れり尽くせりの装備で、街乗りからツーリング、ときにはサーキットライディングまで、ずば抜けたパフォーマンスを見せるのが新型TMAX。160万円を超える車両価格だが、実際に掛かっているコスト、簡単には陳腐化しない仕上がりを知れば納得ではないだろうか。