文:太田安治、オートバイ編集部/写真:松川 忍、南 孝幸
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ホンダ「PCX160」インプレ(太田安治)

Honda
PCX160
2025年モデル
総排気量:156cc
エンジン形式:水冷4ストSOHC4バルブ単気筒
シート高:764mm
車両重量:134kg
発売日:2025年2月6日
税込価格:46万2000円
ゆとりの動力性能が光るメリットの多い156cc
125cc以上、250cc未満の『軽二輪』は高速道路を走れ、車検がないことがメリット。2000年代には250ccのフルサイズスクーターが一大ブームを巻き起こしたが、大柄で重い車体、豪華な装備と引き換えに高くなってしまった車両価格などでユーザーが徐々に離れてしまった。
代わってセールスを伸ばしているのが125ccクラスの軽量コンパクトな車体に、100km/h巡航を難なくこなす150cc程度のエンジンを搭載したスクーター。通勤通学からショートツーリングまで幅広く使える実用性の高さで「中途半端な存在」というネガティブなイメージを覆した。
その中でも高い人気を保ち続けているのが原付二種のPCX(125)の排気量をアップしたPCX160。扱いやすいサイズと充分な動力性能、飽きの来ないデザインと上質な造りでユーザー満足度の高いモデルだ。
軽二輪の白いナンバープレートが付いているが、車体は125と共通なだけに取り回しやすさは文句なし。134kgの車重、1.9mの最小回転半径で狭い駐車スペースでも軽々と出し入れでき、足つき性の良さで跨がったままの後退も行える。これは250ccフルサイズスクーターには真似のできない芸当。気軽に乗り出せることはスクーターにとって正義なのだと改めて感じる。

エンジンは156ccから15.8馬力を発生。数字だけ見れば250ccスクーターよりも非力だが、車重が軽いので「遅い」と感じることはない。むしろエンジン特性に合わせ込んだ遠心クラッチの断続設定とCVT変速のレシオ設定が巧みで、ゼロ発進での飛び出し感、中間加速でのエンジン回転に遅れて速度が乗ってくるフィールが解消されていて扱いやすい。
さすがに90km/hを超えると速度上昇が鈍ってくるが、市街地での流れは楽々とリードできるし、都市高速でも動力性能不足を感じることはない。
ホイールベースの短いコンパクトな車体に小径ホイールを組み合わせた小型スクーターは俊敏なハンドリングと引き換えに直進安定性を出しにくく、ドタドタと落ち着きのない動きが出がちだ。しかしPCXはフレームの剛性バランスと車体のディメンション、前後サスペンションのセッティング、さらには前後タイヤサイズのバランスがトータルに効いているのか、ギャップや横風といった外乱に強い。
市街地走行比率が高いこと、ライディングに不慣れだったり、操作に無頓着な人が乗ることを考えればPCXの穏やかなハンドリングは交通安全にも貢献するはずだ。
125との価格差が思いのほか大きいのは残念だが、東京近郊在住で都心まで行くことが多い僕なら迷わず160を選ぶ。高速道路を使えるメリットは絶大で、妻や子供達が近所までの足にするにしても安心。「一家に一台」のスクーターとして考えればPCX160がベストだと思う。