文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
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ヤマハ「YZF-R25 ABS」インプレ(太田安治)

YAMAHA
YZF-R25 ABS
2025年モデル
総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:780mm
車両重量:169kg
発売日:2025年4月24日
税込価格:69万800円
スポーツ性能と実用性のバランスが見事な1台!
手に余らない動力性能や手頃な価格、車検や免許制度などの要素から日本のライダーに幅広く支持されている250ccロードスポーツ。このクラスには様々なモデルが揃っているが、中でもスポーツ性と実用性のバランスが際立っているのがYZF-R25だ。
並列2気筒エンジンのパワーは35PS。後発のライバルに比べれば数値的に少し下だし、特定の回転域からパワーが盛り上がるエキサイティングさもやや薄め。しかし、公道での力強さを左右するのは高回転域で絞り出すパワーではなく、低中回転域でのトルクと素直なスロットルレスポンス。おそらく開発チームは、あえてピークパワーを追わず「名を捨てて実を取る」選択をしたのだろう。
そのことを真っ先に感じさせるのが、ゼロ発進のしやすさと登り坂での粘り強さ。加減速を繰り返す市街地、上り下りやブラインドコーナーが多い峠道、滑りやすい濡れた路面など、ライダーがギア選択やスロットル操作に迷うような状況になればなるほど、R25の扱いやすいエンジン特性がメリットになる。

そうした乗りやすさが光るだけに、2019年登場の前モデルでの倒立フォーク採用は意外だった。限界性能が上がればライダーにも相応のスキルが必要になるからだ。しかし乗るとハンドリングに神経質さは皆無。聞けばトップブリッジを肉抜き加工するなどして、剛性のバランスを取ったという。実際、寝かし込みと切り返しの手応えは少し重くなったが、ハードブレーキングと旋回中のフロントタイヤの接地感は確実に増した。
結果的にサーキット適性は上がったが、開発陣は限界性能よりも公道での爽快さ、快適さを追求したのだろう。前後サスはライバル車よりも柔らかめで、ギャップ通過時に車体が弾かれにくく、乗り心地もいい。タイヤのグリップ限界を探りやすく、ライダー主導で安心してコントロールできるハンドリングに、ヤマハの理念を強く感じる。
2025年モデルは外装デザインがYZF-R9やR7といった兄貴分たちの流れを汲んだものに一新され、サイドカバーのスリム化などで足つき性の向上も図られた。アシスト&スリッパークラッチが採用されたことも魅力。灯火類やメーターなどもデザイン変更されている。
街乗りとツーリング快適にこなせるバイクがいいが、ただ乗りやすいだけで退屈なのは……という人は、レンタルでもいいから一度試乗して欲しい。一日乗れば、冒頭に書いた「独自のスポーツ性と実用性のバランス」を確実に実感できるだろう。