125ccスクータークラスで絶大な人気を誇るPCXが進化した。新型はさらに洗練された新デザインを採用、先進機能や使い勝手の良さはそのままに、上質さを一層高めた仕様となっている。
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、松川 忍
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ホンダ「PCX」インプレ(太田安治)

画像1: ホンダ「PCX」インプレ(太田安治)

クラスを超えた存在感と上質な仕上がりはさすが

国内の原付二種クラスは125ccのスクーターが販売の主流になっている。中でもダントツの人気を維持し続けているのがPCXだ。2010年に登場した初代はそれまでの125スクーターとは一線を画す高級感と乗り味により、日本はもちろん、東南アジアやヨーロッパでも大ヒット。

2018年のモデルチェンジではフレーム構造をダブルクレードルに近い形として剛性を高め、足まわりの大幅な改良と合わせて操縦安定性を大きく向上。次いで2020年のモデルチェンジで新設計のeSP+エンジンを搭載し、フレームと足まわりの剛性もさらに引き上げられた。

個人的にはこの2020年モデルで完成の域に達したと感じている。今回の新型が外装デザインの変更を主としたマイナーチェンジに留まっているのも、そうした完成度の高さゆえだと思う。実際、シートに座ってハンドルに手を掛けただけで上質さが感じられ、「小型スクーターだから……」と諦めてしまうような安っぽさや頼りなさがない。クラスを超えた存在感はPCX人気の要因だ。

走り出してすぐに感心するのが変速設定の巧みさ。ゆっくりスロットルを開ければユルユルと優しく発進し、全開加速では最大トルクを発生する6000回転台を使ってストレスなく速度を乗せていく。遠心クラッチを断続するエンジン回転域が低めなので、極低速域でクラッチが切れて滑走状態になる距離が短かいことも扱いやすさに貢献している。

画像2: ホンダ「PCX」インプレ(太田安治)

渋滞路でのスムーズな走行性能と交通の流れをリードできる速さを両立しているのは、エンジン特性と遠心クラッチを含めたオートマチックミッションの相性を徹底的に煮詰めた結果だろう。12.5PSというカタログスペック以上の余裕を感じる。

ハンドリングの穏やかさもPCXの魅力のひとつで、乗り始めは他の125スクーターよりも初期の反応が鈍く感じるが、それゆえにフラつきが少なくて扱いやすい。しかも前後タイヤの接地感が均等に伝わってくるので深いバンク角でフロントタイヤがアウト側に押し出される不安感もない。

ホイールベースが短くタイヤ径が小さい小型スクーターは、俊敏な身のこなしと引き換えに路面のギャップやわだち、横風によって直進安定性が乱れがちだが、PCXはそうした外乱にも強い。これは足まわりを含めた車体全体の剛性が高い次元でバランスしているから。

前後サスペンションのセッティング、さらに前後タイヤのエアボリュームまでも市街地走行で受ける荷重域に合わせ込んであるのだろう。開発担当者の「これでもか!」という執念すら感じる熟成度だ。

こう書いてくると長所ばかりになってしまう。アラ探しも大事、と考えているテスターとして悔しい気もするが、正直言ってユーザーに伝えるべき欠点が見当たらない。小型スクーター選びに悩んだら、PCXを有力候補に挙げておけば間違いない。

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