※本企画はHeritage&Legends 2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです。
今ニンジャに乗ることを考えてのパーツや車両
ブルドッカータゴス(以下、タゴス)を訪れると、その都度ニンジャに対する新しい話題がある。今回はまずはリヤキャリパーサポートのようだ。同店代表の田子さんに詳細を聞こう。
「ノーマルスイングアーム用のリヤキャリパーサポートで84mmピッチ対応品です。リジッドマウントできるオリジナル定番になっているんですけど、取り付けに必要なリヤアクスル用のカラー(凸型)とスイングアームに固定する部分の四角いカラーが純正廃番になりました。それでアクスルカラーSETを新たに作りました。純正互換で、A7~A16の純正キャリパーサポートにも使えます」
このカラー、タゴス店頭でも、HP内のオンラインショップを通じてでも買える。カラーのセットとして。また、キャリパーサポートとのセットとして。後者ではお得に買える設定がされている。ちょっとしたところに手の届くパーツ。自社製品だけでなく、純正互換でも使える幅の広さ。
それを踏まえて、一台の車両を紹介してくれた。
「これからニンジャに乗るという方向けの入門車として作りました。全体としてはフルカウル仕様で純正の良さを残しつつ、今風の足まわりにという具合。ベースは最終型のA16で、元々当店のお客さんが持っていたものでした。エンジンはノーマルでメンテナンス履歴も分かりますし、定期的にやっていたので調子もいい。そこにニンジャのキャラクターをしっかり出すメニューを施しています」
田子さんはサスとシート、そしてハンドルでそのキャラクターを引き出すことを目的に、フロントフォークスプリングとリヤショックはハイパープロに。シートとハンドルはタゴスオリジナルに変更。フロントフォークはPDバルブで減衰力を合わせ、インナーチューブにチタンコート、ボトムケースはガンコート仕上げしている。
「サスはセッティングも出ていますし、ポジションも自然になると思います。ホイールはあとから換えるとなるとなかなか手が出ないなという方もいるでしょうから、先に装着しました。前後17インチ仕様。完全体にするなら当店のステム(φ41mmフォーク適合)にす るなど考えればいいです。逆に左右マスターやキャブレターが純正だったりしますが、これは今後のやりしろです。手に入れた人が後から好みで選ぶとかできるように」
魅力ある車両。現在販売中で気になれば問い合わせだ。田子さんはできれば買いっぱなしでなく、目が届くバイク、つまり以後のメンテナンスもタゴスに持ち込んでもらえるようにと、あえて店頭展示で販売している。それで状態が把握できていれば、何らかの理由で車両を手放すことがあってもオーナーにもショップにも、次にオーナーになる人にも利点が出てくる。ニンジャという車両の1台が良好に生き延びてくれるのだ。
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忘れがちなポイントに気づきを作っておく
田子さんのニンジャへの目利きというか気遣いは、このように車両に生かされる。さらに、今乗っているお客さんにも“次はこれをやるといいですよ、これを忘れてませんか”というようなアドバイスをさりげなく伝えてくれる。
例えばエンジンならばオイルはどうしていますか? 乗り味は気になりませんか? クラッチの切れは…? といった具合だ。
エンジンオイルはいいものを。タゴスではモチュール300Vを推奨し、これでシフトタッチも含めてフィーリングが改善する車両も多いという。キャブレターも純正CVKで十分に乗りやすい。ただ、そのままにしているケースや、インシュレーターが劣化して2次エアを吸って調子を落としているものがあるから、オーバーホールを。もちろんFCRなどレーシングキャブレターに換えてセットアップするのもいい。
ニンジャでは燃料タンクキャップ内のエア通路詰まりで燃料が行きづらくなって不調になることもあるから、そこにも気を遣う。1番(左)気筒のプラグホールへの水たまり→点火不良は掃除。ここはタゴスオリジナルのプラグホールアダプターで予防もできる。
点火不良では見落とされがちなイグニッションコイルやプラグキャップも適宜新品にしてやる。これだけで低速のぐずつきがなくなるとも田子さん。クラッチの切れは純正のスレーブ側に溜まったエアが抜けないことに起因するものもあって、これは車体を少し右に傾けてブリーダーからきちんと出るようにエア抜きをすればいい。
ステムも距離や時間に応じてベアリング交換を勧める。“ちょっとへたった感じからリセットして、新しい状態を作る”ことで、“これだ!”というしっかりした動きやキレを取り戻す。するともっと乗れるし、楽しくなる。
このリセットは、純正欠品が進むことへの対処にもなっている。
「大きいところで言うとエンジンの作業は増えています。ミッションを始め純正欠品が増えたこともあって、何かあってすぐ直すというのも難しい。ですからまず壊れない、遠くに行って不安でドキドキするようなことのないように。その上で少し元気よくというように仕立てます。クランクジャーナルのラッピングやTGナカガワのR-Shot、WPCなどの処理も使いますが、どれも有効だと思います。
その手前の段階で、エンジンオイルの管理をきちんとするといいんです。いいオイルを使うと、ばらしてもエンジンの中がきれい。交換する時々は少し高く思うかもしれないですけど、スムーズに動けば消耗もしにくいし壊れにくい。つまり、あとが安く済みます」
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850㏄上限で工夫するレーサーノウハウも生かす
そのエンジン、TOTで昨秋6年ぶりに出走し2位となったZERO-1クラス用ニンジャレーサーのノウハウも生かされている。
「以前出ていたF-ZEROは予算があれば排気量はじめいろいろできますけど、ZERO-1は850㏄上限。工夫しがいがあります。足まわりはもうセットも出ているし、ライダー(井上玄悟さん)は初めてのニンジャでしたけどスムーズに乗れたようです。
750と900のパーツ混成で、750クランク(ストローク48・6mm。900は55mm)の方がトルクが出せます。今回はφ73・5mmピストンで824㏄でしたが次回はφ74mm(φ73・5mmに同じヴォスナー鍛造品)が用意できて850㏄仕様になります。
余すのでなく回しきる感じもあって、ストリートでも楽しい仕様だと思いますよ」と田子さん。
いかにロスを減らすかや、ボア×ストロークほかどんな組み合わせでいい特性を掴むかという工夫が鍵になってくる。そのいろいろ試した結果が、ストリートにも反映されるというわけだ。このレーサーには今後も注目したい。
冒頭の車両も、オリジナルパーツ(店頭でも、オンラインショップでも買える)も。さらに車両へのアドバイスと、ニンジャの話題は多数。ニンジャで何か気になるなら、タゴスを頼りたくなるのだ。
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さらに先、もっと良くをかなえるパーツ&アドバイス
「こんなもの」ではないベースを前ページのような形で提案する。それでもっと楽しくしたいという場合にはオリジナルパーツも用意する。今乗っている人にもちょっとした気づきを伝えることで車両を復調させる。多岐にわたるその一部を紹介。
純正に準じたセパレートハンドル仕様で路面の感触がダイレクトに伝わりやすく人気の「ニンジャ・クルーズステムキット」(写真の「TAGOS ニンジャバーZ」付きは17万3800円、ステムのみは15万4000円)。φ41mmノーマルフォーク(A7~A16)対応でオフセット35mm/ピッチ200mmと、ノーマルの40mmからオフセットを減らして17インチにきっちり合わせられる。TAGOSニンジャバーZ単品は3万3000円。
A7~A16のノーマルφ41mmフロントフォークを有効に使うメニューも用意。上は「YSS・PDバルブ」(1万3200円)+「PDバルブ用HYPERPROスプリング」(2万2000円)で、路面追従性を高めるとともに適度な減衰力を持たせる。写真はA7-11用で通販あり、A12-16用は要加工のため車両持ち込みで対応。写真中はノーマルインナーチューブの作動性や耐候性を高めるチタンコーティング。下は「HYPERPRO タゴスSP GPZ900R リヤサスペンション [フルアジャスタブル]」。初期でソフトに、奥で踏ん張る。長距離でも疲れにくい特性だ。13万7500円。フロントスプリングとリヤショックのセット「ハイパープロ・ストリートボックス」もお勧めという。
タンクキャップは内側のエア通路が詰まることでエンジン不調を招きやすいので掃除もしておく。
イグニッションコイルやプラグキャップはある程度距離を走ったら新品に交換。低速のぐず付きもなくなる。点火ユニットはASウオタニSPⅡ、TGナカガワHIRもお勧めでタゴスでも販売。3D点火ユニットも現在開発中とのこと。
エンジンオイルもいいものを使う。タゴスではもチュール300Vを勧める。
キャブレターは純正でも十分。インシュレーターともにいい状態か確認。
油圧クラッチのスレーブシリンダーは円筒が横向きになっている。サイドスタンドで左に傾くとシリンダー奥(車体内方向)にエアが溜まり、抜けにくくなる。車体を右に傾けながら作業をするとエアが抜け、クラッチ作動も良好になる。