※本企画は『Heritage&Legends』2023年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
鮮度の高い情報のおかげで、どんな場面でも自信を持ってアクションが起こせる!
ツボを抑えたカスタムで潜在能力を引き出す
2020年に試乗して以来、約3年ぶりにアクティブのZ900RSと再会した僕は、以前と比べるとクラシック&カスタム感が高まったなあ……という印象を抱いた。
一番の理由は、’80年代初頭の世界GPに参戦したワークスKR500を彷彿とさせるカラーリングだが、装着パーツに目を転じても、メイン部の素材を口の字断面の角パイプとしたスイングアーム、往年のカワサキ純正風にも見えるゲイルスピード・タイプJ、フロントに配されたモトマスターのウェーブディスク、TYPE-2に進化したサブフレームなどの装着も、以前に試乗した仕様とは異なるところだ。
もちろん、同社は雰囲気重視のカスタムを行ったわけではなく、この最新仕様も大前提はネイキッドスポーツとしての運動性能を追求すること。実際に峠道でこのバイクを走らせると、スポーツライディングの楽しさは、マシンの挙動と反応次第という事実を、今さらながら実感させられることとなった。このアクティブZ900RSは、すべての挙動と反応がムチャクチャ分かりやすいのである。
まず何より、ブレーキング時の車体姿勢やタイヤの接地圧の変化、スロットルを開けた際のトラクションのかかり方などが、鮮度の高い情報として身体にビンビン伝わって来る。その情報を頼りに、どんな場面でも自信を持ってアクションが起こせる。また、進路変更時の向き変えやコーナーでのバンキングスピードなどに予想外の動きが一切ないこと、路面の凹凸を通過した後の収束が常に安定していることも、このバイクの長所だ。
逆にノーマルは、そうした挙動と反応が曖昧なのである。もっともノーマルも普通に走らせる分には、コレといった不満は感じない。けれど峠道で思いっ切りスポーツライディングを楽しむには、情報がいまひとつ物足りないのだ。そうした乗り味は、見方を変えれば大らかと言えなくはないのだが、アクティブ車の分かりやすい挙動と反応に接すると、ノーマルはマシンとの対話を楽しみ難く思える。
ただ、ノーマルが決して悪いとは思わない。カスタム好きならちょっとイジりたくなる、適度なスキを残した作りに好感すら抱いている。そしてそのスキを埋めていけば、各パーツが乗り味に及ぼす影響が明確に理解できる。Z900RSでスポーツライディングを楽しみたいライダーにとって、足まわりやライディングポジションの変更で運動性に磨きをかけたアクティブの方向性は、大いに参考になるはずだ。
新開発スイングアームとライポジパーツの印象
ここからは今回の試乗で興味を惹かれたパーツに関する印象を書いていこう。まずはネイキッドに似合うことを前提に開発されたスイングアームから。
僕は同社既存品のプレスフォーミングタイプ(外観は最新スーパースポーツ風だ)の特性に好感触を持っていた。だから当初はこの新作『口の字断面スイングアーム』への換装には疑問を抱いていたのだ。でも実際に走ってみるとカッチリしていても硬すぎない、適度なしなやかさを備えた感触は、プレスフォーミングタイプと同じ流れの中にあったのである!
そのフィーリングがあまりに良好だったので、テストに立ち会ってくれたアクティブの福田さんに話を聞くと、プレスフォーミングで実現した理想の特性を異なる手法で再現するため、95×36㎜の角パイプを押し出し成型で専用開発したり、後輪に合わせた角度調整を削り出しのエンドピースで行ったり(メイン部は完全にストレート)、左右の連結部にアーチ状のプレス成型材を用いたり……と、随所に新しい技術を導入したという。
つまりSS風のプレスフォーミングのほかに、オーソドックスなデザインのスイングアームも加えて、より広いニーズに応えようとしている。新作はシンプルな外観ながら、相当に凝った構成なのだ。
そしてライディングポジション関連パーツのハンドルとステップについて。
Z900RSにセパレートハンドルを装着するカスタム例はあまり多くないけれど、このバイクでのハンドル変更は、前述した挙動と反応の分かりやすさに加えて、車格感の小ささにも貢献する。一般にバーハンドル車にセパハンを装着すると、本来のフレンドリーさが失われることがあるが、上半身の前傾がさほどキツくならないアクティブ製なら、ツーリングも快適にこなせる。
一方のステップはグリップ感とホールド感が抜群なのである。特に旋回中と加速時はステップが信頼感の要になっていて、さまざまな制御と感知が足で行える。いずれにしても、この感覚を体験したら、どんなライダーでもステップの重要性が認識できるはずだ。
冒頭通り、一度は完成形に見えたアクティブZ900RS。さらに続々と開発が続く製品群とともに、その進化は止まらない。次はどんな姿を見せてくれるだろう。
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約5年に渡って進化を続けて来たアクティブのデモ車の最新仕様
80’sカワサキワークスカラーへの変更で外観がクラシカルな印象に変わったものの、この車両は2018年からアクティブが使用しているデモ車兼テスト車。FRP製のビキニカウルとスクリーンは同社オリジナルで、車体後部にはテールレンズ延長キットとフェンダーレスキットを装着する。
タレ角10度、最小絞り角119度のセパレートハンドルが付属するコンバーチブルステムキット。31.5/34㎜の2種からカスタムに合わせてフォークオフセットがチョイス可能だ。シングル風のシートは座面高がノーマル+20㎜のCAFE用を装着してある。
ラジアルブレーキマスターとクラッチレバーホルダーは、ゲイルスピード・エラボレート。ブレーキ用リザーブタンクステーは、ブラック仕様だ。グリップの素材は、ゴムとプラスチックの美点を両立したエラストマーで、高い振動吸収性と耐摩耗性がウリだ。
抜群のグリップ感とホールド感を実現する、フットコントロールキットは4ポジション式。シフトペダルは可倒式で、ブレーキペダルは前後位置まで細かく調整できるのだ。
フレームの左右にはバフ仕上げのサブフレームTYPE-2を装備。クランクケースの左右カバーに備わるアクティブ製スライダーは、アルミ製ブロック+ポリアセタール樹脂のハイブリッド構造だ。
アクラポヴィッチによるメガホンタイプのチタン製スリップオンマフラーは高回転域でワイルドな排気音を聞かせてくれる。’17〜’22モデル向けのJMCA適合品。
3.50-17/6.00-17の前後ホイールは、年内発売予定のゲイルスピード・タイプJ。’80年代カワサキ純正ホイールなどをモチーフとした。前後ブレーキキャリパーとリヤマスターもゲイルスピード・ブランドだ。
3.50-17/6.00-17の前後ホイールは、年内発売予定のゲイルスピード・タイプJ。’80年代カワサキ純正ホイールなどをモチーフとした。前後ブレーキキャリパーとリヤマスターもゲイルスピード・ブランドだ。