「3気筒といえばトライアンフとヤマハ!」と言っても過言ではないだろう。その中でもすこぶる評判が良いのは、トライアンフのストリートトリプル。そしてその対抗馬としてあげられるのがヤマハXSR900。ルックスや方向性はかなり異なる2台だが、実は「120」というキーワードでつながっていた!?
文:ノア セレン、横田和彦/写真:関野 温

評価ライダー

画像: ノア セレン(右) 大排気量のスズキ バンディット1200とアプリリア トゥオーノ1000、そして普段使いにはヤマハ トリッカーを所有するヒョロ長の185cm。 横田和彦(左) 16歳で原付免許を取得後、さまざまな排気量のバイクを乗り継ぐ。プライベートもバイク漬けで、日常の足からイベントレース参加まで幅広く活動中。身長165cm。

ノア セレン(右)
大排気量のスズキ バンディット1200とアプリリア トゥオーノ1000、そして普段使いにはヤマハ トリッカーを所有するヒョロ長の185cm。

横田和彦(左)
16歳で原付免許を取得後、さまざまな排気量のバイクを乗り継ぐ。プライベートもバイク漬けで、日常の足からイベントレース参加まで幅広く活動中。身長165cm。

XSR900 VS ストリートトリプル765R|試乗前の印象

2気筒でも4気筒でもない、3気筒の魅力とは?

一度3気筒エンジンのバイクに乗ってしまうと、その魅力の虜になってしまう人も数多い。まさに魔性のパワーユニット!? とでも呼ぶべきなのか。さ〜毎度お馴染みの凸凹コンビは、3気筒エンジンに対してどのような印象を持っているのだろうか。

画像: XSR900 VS ストリートトリプル765R|試乗前の印象

ノア セレン CHECK

使いやすくて速くてテイスティ。3気筒最高

トライアンフの3気筒は「ちょ〜どいいパワーだよね」というのが昔からの印象。3気筒を遡ればヤマハは1976年にGX750を発表、そしてトライアンフ初の3気筒は1968年の「トライデントT150」など、両社とも3気筒の歴史はある。

1980~90年代は世の中に「4気筒こそ正義」のような空気感があったものの、3気筒は常用の低回転域では4気筒よりも太いトルクがあって、高回転域はツインよりも官能的なパワーバンドをもつ。日常域から非日常域まで広くカバーするなど「良いトコどり」なエンジンとも言える。それを再び世に気づかせてくれたのは2007年に登場した初代ストリートトリプルだろう。

多くの場面で使いやすい出力特性に加え強力な高回転域も持ち、さらにコンパクトで価格も抑えやすい。他社が追随しないのが不思議なぐらい、トリプルは独創的で魅力的なのだ!


横田和彦 CHECK

並列3気筒エンジンは良いとこ取りってホント?

ボクが初めて並列3気筒エンジンのバイクに乗ったのは2008年頃。多くの人に「3気筒は、なかなかイイよ!」と言われていたんだけど、乗る前はピンとこなかった。ところが試乗すると4気筒よりも低い回転域からトルクがモリモリ出てくる。吹け上がり感も野太く、今まで体感したことがないタフなフィーリングに驚いた。おおっ3気筒、面白いじゃん! となり一時はストリートトリプルの購入も検討したほど。

そして2014年にヤマハMT-09がデビューしたときに再び驚かされた。ヤマハの3気筒は、より洗練された回転フィーリングながら、パワーが2次曲線的にグィーンと盛り上がっていくジャジャ馬感も持っていたのだ。トライアンフとも違って、独創的で楽しいぞ!と感じた。4気筒より図太く2気筒よりも伸び感がある。両者の中間的なフィーリングであることは間違いない。その最新モデルでレッツ・対決だっ!

XSR900 VS ストリートトリプル765R|エンジン・スペック比較

同じ120馬力でもフィーリングは異なる

トライアンフは1990年代から並列3気筒エンジン搭載モデルをリリース。現在は660〜2458ccまで数多くのバリエーション展開をしている。Moto2に765ccエンジンを提供していることも性能の高さの証明だ。ヤマハは2013年に新しい並列3気筒エンジンを採用したMT-09を発表。進化を重ね、ネオレトロやツアラーなどの派生モデルも登場した。今回の2台は排気量こそ異なるが最高出力は同じ。ただ発生回転数や最大トルクの差がどう感じられるかが興味深い。

画像: XSR900 VS ストリートトリプル765R|エンジン・スペック比較

主要スペック比較

XSR900ストリートトリプル765R
税込価格121万円119万5000円(シルバーアイス)/122万1000円
全長×全幅×全高2155×790×1155mmNA×792×1047mm
ホイールベース1495mm1402mm
最低地上高140mmNA
シート高810mm826mm
車両重量193kg189kg
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
排気量888cc765cc
最高出力120PS/10000rpm120PS/11500rpm
最大トルク9.5kgf・m/7000rpm8.16kgf・m/9500rpm
燃料タンク容量14L15L
変速機形式6速リターン6速リターン
ブレーキ前・後ダブルディスク・ディスクダブルディスク・ディスク
タイヤサイズ前・後120/70ZR17・180/55ZR17120/70ZR17・180/55ZR17

XSR900 VS ストリートトリプル765R|スポーツ走行性能比較

画像1: XSR900 VS ストリートトリプル765R|スポーツ走行性能比較

スポーツランで見極める3気筒スポーツの実力

気筒数と最高出力120馬力は同じでも、走りの質はそれぞれ違った個性を発揮した。どちらに乗っても2気筒や4気筒とは異なる世界観を楽しませてくれ、3気筒の懐の深さを実感できるようだ。

画像2: XSR900 VS ストリートトリプル765R|スポーツ走行性能比較

一般的な足まわりの設定に差はないが、93mmの軸距の違いが性格を分ける

画像1: XSR900(左)・ストリートトリプル765R

XSR900(左)・ストリートトリプル765R

17インチという一般的なサイズで、いずれもアジャスタブルの倒立フォークを備える。フォークトップの調整部分の作り込みまでこだわったXSR900の上質さは、ぜひ実物で確認してほしい。XSR900は鋳造ながら鍛造の強度と靭性を実現する「スピンフォージドホイール」を装着する。そのデザインはかつてのRZRシリーズを連想させてくれるクラシカルさも感じられる。ストリートトリプル765Rのアルミ製エアバルブは、エア調整しやすい横向きタイプを採用する。


両車ともにブレンボを採用するが、異なるパーツに採用しているのが面白い!

XSR900

画像1: 【3気筒ネイキッド比較インプレ】ヤマハ「XSR900」VS トライアンフ「ストリートトリプル765R」 |スポーツ走行性能・ツーリング適性・装備の充実度まで徹底チェック

ストリートトリプル 765R

画像2: 【3気筒ネイキッド比較インプレ】ヤマハ「XSR900」VS トライアンフ「ストリートトリプル765R」 |スポーツ走行性能・ツーリング適性・装備の充実度まで徹底チェック

フロントブレーキはラジアルマウントタイプキャリパーで共通するが、ストリートトリプル765Rはブレンボ製、XSR900はお馴染みのスミトモキャリパー。マスターシリンダーはXSR900がブレンボのラジアルタイプなのに対して、ストリートトリプル765Rは一般的なニッシン横置きタイプ。フィーリングはよく似ていて、コントロールブルで絶対的な制動力も高い。ストリートトリプル765Rはリアキャリパーにもブレンボ製を装着する。


一般的なリアまわりながらXSRは明らかにスイングアームが長く、クラシカルな印象

画像: ストリートトリプル765R(左)・XSR900

ストリートトリプル765R(左)・XSR900

リアサスペンションはいずれも調整機能付モノショックで、ストリートトリプル765Rはピギーバックタイプ、XSR900は腹下サイレンサーを避けるように寝かして装着。XSR900はスイングアームを先代より55mm伸ばし直進安定性を確保したことで、元となったMT-09シリーズとはまるっきり違うロー&ロング感と安定感が演出されている。またどこかクラシカルな乗り味もこれによってもたらされているようで、それが走りにおける余裕につながっていると感じた場面もあった。


ノア セレン CHECK

「乗ったことある感!?」クラシカルな演出は見た目だけじゃない!

画像1: XSR900

XSR900

汎用性が高くパワフルなXSR900。ヒラヒラ軽快なストリートトリプル765R

上の走りの写真を見て欲しい。これがXSR900の印象そのままだ。腰を引いて後輪の接地点を感じつつ、腕は伸ばし気味で、バイクの芯にドシッと乗っかって余裕を持ってコーナーをグイ〜ンと切り取っていく感じ。なんとも…クラシカルなのだ。最新モデルなのにこんなこと言ったら怒られそうだが、「XJR1200みたい」と思ったほど、その乗り味には既乗車感があった。

スイングアームが伸ばされて、着座位置がかなり後ろの方で、車両重量197kgは重くないけれどピピッとした機動性というよりは落ち着いた雰囲気があるXSR900は、最新でありながら「これなら知ってる! これなら乗れるよ」という安心感のようなものがある。長いホイールベースのおかげで外乱にも強く、峠道の浮き砂や高速道路のギャップなどにも強かった。

画像1: ストリートトリプル765R

ストリートトリプル765R

対するストリートトリプル765Rは排気量が小さいだけでなく車両そのものが小さく、もっとキンキンにブン回しながら振り回して遊ぶ印象。ハンドリングもクイックで自由自在。XSR900との重量は4kgしか違わないのにワインディングではヒラヒラ感が高くて無敵じゃないかと思えた。一方で、路面が荒れるとクイックゆえにちょっと神経質に感じた場面も。似たような車体構成でも意外と性格は違うという印象だ。


横田和彦 CHECK

スポーツライディングでのハンドリングに違いあり!

画像2: ストリートトリプル765R

ストリートトリプル765R

Moto2由来とネオレトロの差が!?

ボクはスポーツライディング好きなので、ワインディングを走るのが大好き…といっても自分の技術レベルがそう高くないことを知っているので、精神に過大な負荷がかからない(怖くない)程度のペースで走っている。その大好きな走行フィールドで、今回の2台から大きな違いを体感した!

ネイキッドというルックスからは考えられないシャープなハンドリングを見せたのはストリートトリプル765Rだ。やや前下がりの車体姿勢やショートホイールベースなどのディメンションからくるものだろう。

以前サーキットでパワーが高く足まわりの装備が充実しているストリートトリプル765RSに試乗したこともあるが、共通して感じたのは「挙動は完全にスーパースポーツじゃん!」というもの。アップライトなポジションが不自然に感じるほど。スーパースポーツのカウルを取り去ってバーハンにしたモデルで、Moto2のノウハウがかなり注入されていると感じた。

画像2: XSR900

XSR900

対してXSR900の運動性能は、あくまでもネイキッドをベースにスポーティに仕上げたという感じ。ステムの位置がやや高く着座位置は後ろ気味なのでポジションはおおらか。そのため大柄なバイクを操っている感覚になる。車両重量は十分に軽いので実際のハンドリングがダルいという訳ではないが、思った方向にスッと向きを変えるストリートトリプル765Rと比べると、XSR900は身体全体で車体をコントロールする感じだ。

これはどちらが良い・悪いではなく、それぞれの持ち味。個人的な好みは…より短い時間でバイクに乗った感が得られるXSR900かなぁ。

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