スリックタイヤへの交換をいち早く決断したA.マルケスが初のポールポジション獲得
決勝日前日に行われた予選は路面環境が変化する難しいセッションとなった。予選開始時にはウェットコンディションで雨も降っている状況だった。
上位2名がQ2に進めるQ1では、ファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)がオーバーランを喫する場面も見受けられたが暫定のトップタイムを記録。その記録をアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)が塗り替えトップに浮上した。
マルケスとクアルタラロのタイムは更新されることがなく、この2名がQ2に進出決めている。しかしQ1終了後にマルケスが低速ながら転倒を喫し、マシンから出火してしまうというアクシデントが発生。このためマルケスはスペアマシンでQ2に臨むこととなった。
Q2も引き続きウェットコンディションで行われることとなったが、セッション中盤から後半にかけて雨が弱まり、路面がわずかながら乾いてきた。レインタイヤのまま走るライダーとスリックタイヤに交換して賭けに出たライダーに分かれたが、レインタイヤのフランコ・モルビデリ(Monster Energy Yamaha MotoGP)がトップタイムをマークする。
スリック勢の選択ミスかと思われた最終盤、スリックタイヤ勢が続々とタイムを更新。フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)やベッツェッキがタイムを更新する中、さらにそのタイムをマルケスが塗り替えポールポジションを獲得した。
Q1終了後にスペアマシンへの変更を余儀なくされたマルケスだが、ギャンブルを成功させ、自身初の最高峰クラスでのポールポジション獲得となった。
予選トップ3はスリックタイヤを選んだマルケス、ベッツェッキ、バニャイヤという並びとなり、ここアルゼンチンでもドゥカティ勢が上位独占という結果となった。
驚異の14台抜き!予選15番手スタートのブラッド・ビンダーが大逆転でスプリントレースを制す
予選と同じく土曜日に行われたスプリントレースは、誰も予想できない結果が待っていた。予選ではウェットコンディションだったが、スプリントレース開始時には天候が回復。コースの一部が濡れているものの、ほぼドライコンディションでのレースとなった。
全12周のレースは、ポールからスタートしたマルケスがトップを維持しながら1コーナーへ。そのマルケスにスタートで2位に上がってきたモルビデリがターン9でマルケスをオーバーテイク。これまで苦戦を強いられてきたモルビデリが復活を目指し最高のスタートを決めた。
その後方では予選15位からスタートしたブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)が躍動。スタートで一気に順位を上げ、2周目にはなんと2位までポジションを上げてきた。勢いに乗るビンダーはモルビデリをもオーバーテイクしトップに浮上する。
ビンダーが2位以下に差をつけはじめる中、2位争いが激化。残り4周でVR46の2台がモルビデリを攻略する。チームメイトのルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)をパスしたベッツェッキがトップのビンダーに猛チャージし、ファイナルラップではビンダーの真後ろまで接近。
しかしビンダーはベッツェッキの猛追をしのぎきりトップでチェッカーを受ける。周回数が少ないスプリントレースにも関わらず、予選15位からの劇的な優勝となった。2位はベッツェッキ、3位がマリーニが入り、VR46チームはダブル表彰台を獲得した。
ロッシの弟子ベッツェッキが最高峰クラス初優勝!
決勝レースはスプリントとは違い、雨の中でのレースとなった。25周で行われる決勝レースはスプリントレースで表彰台を獲得し勢いに乗るベッツェッキがホールショットを決める。マルケス、バニャイヤ、モルビデリの順当でトップグループが形成されるが、その中でもベッツェッキのペースが良く、2位以下に1秒差をつけ周回していく。
トップのベッツェッキがさらにマージンを稼ぐ中、チャンピオンシップトップのバニャイアが動く。15周目のターン13でマルケスを捕え2位に浮上。しかし18周目のターン13でバニャイアがまさかの転倒を喫してしまう。着実にポイントを稼ぎたかったバニャイアはレースに復帰するも、痛恨のノーポイントとなってしまった。
転倒を喫したチャンピオンをよそに、トップのベッツェッキはレースをコントロールし見事優勝。ベッツェッキにとって、そしてVR46にとっても初の最高峰クラスでの優勝となった。
その後ろでは2位マルケス、3位モルビデリにヨハン・ザルコ(Prima Pramac Racing)が急接近。残り3周でモルビデリを、すかさずオーバーテイクしていった。ファイナルラップでマルケスをオーバーテイクしたザルコが2位でチェッカーフラッグを受けた。3位にはポールシッターのマルケスが入っている。
ベッツェッキはスプリントで2位、決勝レースで勝利したことによりランキング首位に浮上。バニャイアに続き、バレンティーノ・ロッシが育て上げた愛弟子ベッツェッキがきちんと結果を残した。
2023 MotoGP 第2戦 決勝結果
第3戦はマルケス無敵の地「サーキット・オブ・ジ・アメリカズ」
次戦は2023年4月14日から16日にかけて行われるアメリカズGPだ。戦いの地「サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)」は2012年に完成し、MotoGPは2013年から開催されている。
そんなCOTAにおいて、絶対的な強さを見せ続けているライダーがいる。それが最高峰クラスで6度のチャンピオンに輝いたマルク・マルケス(Repsol Honda Team)だ。
COTAでグランプリが初めて開催された2013年に最高峰クラスにデビューしたマルケスはこの地で同クラス初優勝を達成。そこから毎年勝利を積み重ね、なんと7勝を記録。マルケスがCOTAでのレースに参戦したのは9回であるため、7勝という記録は驚異的である。
今シーズンも開幕戦で負傷してしまったマルケスだが、体調が万全ではなかった2021年シーズンのCOTAでも優勝しているため、怪我明けとはいえ優勝候補の1人と言わざるを得ない。
マルケスにとっても、ホンダにとっても優勝の可能性が高いサーキットなだけに、照準を合わせてくるはずだ。絶好調であるドゥカティ勢に一矢報いることができるのか、マルケスの今後の動向も含めて注目したい。
レポート:河村大志