いちばん身近な旅するオートバイといえば250㏄のアドベンチャーカテゴリー。ホンダ・CRF250ラリー、スズキ・Vストローム250のライバルカワサキ・ヴェルシスX250ツアラーには数字に表われない「旅する仕様」が詰まっている。
文:中村浩史/写真:赤松 孝
画像: Kawasaki VERSYS-X 250 TOURER 総排気量:248cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 シート高:815mm 車両重量:183kg 2022年モデルの発売日:2022年2月1日 税込価格:72万6000円

Kawasaki VERSYS-X 250 TOURER

総排気量:248cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:815mm
車両重量:183kg

2022年モデルの発売日:2022年2月1日
税込価格:72万6000円

アドベンチャーバイクの魅力とは?

あれもこれもと欲張れる万能選手がアドベンチャー

アドベンチャーと呼ばれるカテゴリーのモデルに乗ると、オートバイの楽しさ、快適さ、自由さをいつも以上に感じられることがある。

たとえばスーパースポーツに乗ると、ちょっとアクセルを開け開け気味にしちゃうし、ワインディングに、サーキットに繰り出したくなる。トレッキングバイクに乗ると、街乗りトコトコの頻度が増え、スクーターに乗ると、ついつい普段使いで遠回りしたり──。

それがアドベンチャーとなると、気分が解放されるというか、急かされないというか、かなりの確率で「どこか」へ行きたくなる。それはKLX230でも感じるし、ニンジャ250でも感じるんだけれど、その両方を合わせて、ってくらい自由な気分になるのだ。

画像: カワサキ「KLX230」 www.autoby.jp

カワサキ「KLX230」

www.autoby.jp
画像: カワサキ「Ninja250」 www.autoby.jp

カワサキ「Ninja250」

www.autoby.jp

「アドベンチャー」カテゴリーというのは、正式な定義こそないけれど、あくまでもオフロードバイクとは別物で、オンロードモデル起源のツーリングバイクを指すことが多い。

ライディングポジションが快適なオンロードバイクであり、オンロードタイヤを履いたオフロードバイク。その両方のキャラクターを持ち合わせているロングツーリングカテゴリー、といったニュアンスだ。

その意味で、アドベンチャーの守備範囲は広い。街乗りは言うに及ばず、郊外のバイパスが気持ちいいし、高速道路は快適、オフロードだって踏み入っていけるし、ワインディングもそこそこ攻められる。かつてはネイキッドがそう呼ばれていた「万能選手」的なポジションにいるのだ。

もちろんスポーツランだけだったらニンジャの方がいいし、林道や未舗装路に入るならKLX230の方が気持ちいい。1日で、街乗りも郊外のバイパスもワインディングも走る、けれど目的地は未舗装路の先にある──そんなツーリングが増えているから、アドベンチャーの存在感が増しているのだ。

カワサキ「ヴェルシスX250ツアラー」ツーリング・インプレ

画像1: カワサキ「ヴェルシスX250ツアラー」ツーリング・インプレ

ニンジャをベースにしつつ長距離ランに特化した

ヴェルシスX250ツアラーは、ニンジャ250をベースにしたアドベンチャーだ。エンジンを共通として車体を改良、特徴的なのは前後17インチのキャストホイールを、前19/後17インチのワイヤースポークホイールとしたこと。これで、ニンジャの「曲がる」ハンドリングが、安定した直進安定性を重視した味付けになっていると言っていい。

効果が大きいのはボディの大型化だ。ベースとなったニンジャと比べてひとまわり大きく、ホイールベースも長くなって、車両重量も10kg近く重いし、最低地上高、シート高だって上がっている。けれど、これがいい。

大型化と重量増は車体の安定性を生んでいるし、キャスターが寝かされ、トレール量が増やされた車体は直進安定性が増している。シート高が上がると、足つきが悪くなる半面、乗車姿勢でひざの曲がりが緩やかになって、クルージング中に下半身が楽になる。

画像2: カワサキ「ヴェルシスX250ツアラー」ツーリング・インプレ

エンジンが共通だとはいえ、そうとは思わせない、特に長距離ランに特化した性格がヴェルシスにあるのだ。

走り出してみると、やはり250ccとは思えない車格が印象的。足つきは170cmくらいの身長があれば十分なレベルで、大柄なボディとはいえ、183kgのボディは、重心をきちんと考えられているのか、重く感じない。むしろ、長距離を走った時の疲れなさにもつながるもので、これは軽自動車と3Lクラスのセダンで長距離を走った時の感覚に近いかもしれない。大きなクルマでの長距離移動の後の、あの疲れなさに似ているのだ。

エンジンの力感はニンジャ同等、というよりいくらか抑え気味。軽やかに回転の上下があって、発進トルクから徐々に力が盛り上がってきて、高回転での伸びはそこそこ、7500回転あたりまでのトルクが力強い。ニンジャだとこの上のパワーひと伸びがあるけれど、ヴェルシスX250ツアラーはそこを抑えている。

まさにこのあたりが常用回転域で、クルージング時の6速80km/hは6200回転、100km/hは7500回転、120km/hは9400回転といったところで、これ以上のひと伸びはニンジャの方が力強い。

けれどヴェルシスX250ツアラーのよさは「のんびり感」に現われていて、6速4000回転チョイあたりの回転域、スピードは60km/hあたりで走っていると、回転振動が感じられず、なんとも平和な気分になる。誰が何と言おうと、この速度域、回転域の気持ちよさは、ニンジャより何倍も上なのだ。

画像3: カワサキ「ヴェルシスX250ツアラー」ツーリング・インプレ

ビッグバイクで味わえない旅するオートバイの気持ちよさ

ヴェルシスX250ツアラーを走らせていて、やはり気持ちがいいのは、郊外のバイパスや高速道路だ。トップギアに放り込んで高回転なんか回さずにクルージングしているとき、ヴェルシスのウィンドスクリーンは適度にだけ走行風からライダープロテクトしてくれて、フロント19インチホイールがピシッと直進安定性を出してくれる、その気持ちよさ。

カワサキで言えば、きっとヴェルシス1000SEがトップツーリングバイクなんだろうけれど、速度域も違うし、ウィンドプロテクションも高すぎる、と感じることも多いから、この250ccがちょうどいい。1日500kmなら250、1000km走るなら1000がいいかも──。

特にヴェルシスX250ツアラーは、60km/hくらいで定速走行するのがなんとものんびりで、バイクに乗ってるって気持ちイイ! と思わせてくれる瞬間。これはニンジャでもKLX230でも、ヴェルシス1000SEのようなビッグバイクでも味わえない。

ヴェルシスX250ツアラー最大のヒットは、やはり前19/後17インチのワイヤースポークホイールで、フロントホイールがぐるんぐるん回って直進安定性が高いのはもちろん、心なしか乗り心地もソフトに感じるからだ。これは、キャストホイールからワイヤースポークへの変更と無関係ではないと思う。

画像4: カワサキ「ヴェルシスX250ツアラー」ツーリング・インプレ

さらに現行ラインアップでは、パニアケースとボディガードパイプつきの「ツアラー」グレードだけの販売で、これもロングランに特化した仕様だ。

撮影用に、キャンプツーリングに持って行くときに絶対に必要な、テント/シュラフ/マットの「長尺もの」3点セットを積んでみたけれど、左右に張り出したパニアケースのおかげで安定性は抜群。キャンプツーリング用のシートバッグの安定性も、市販モデルのノーマル状態ではナンバーワンだろう。

もし「あれこれ買い足さずにキャンプに行きたい」バイクを、と思うならばヴェルシスX250ツアラーがベストバイだと思うのだ。それほど、「旅性能」は高く、ガレージにあるだけで、どこかへ出かけたくなってしまう。アドベンチャーって、やはりそんなカテゴリーのオートバイなのだ。

決して速すぎないし、スゴ過ぎない旅バイク。250ccという小さい排気量だけれど、カワサキのラインアップの中で、ひょっとしていちばん「旅性能」が高いかもしれない。

This article is a sponsored article by
''.