いちばんカンタンに乗れるオートバイといえば最小排気量、50cc=ゴジュー、原チャリ、ゼロハンだ。中でも「ゼロハンスポーツ」と呼ばれたギアつき50ccスポーツが、大人の階段の入り口だった。今ではもう、絶滅してしまったゼロハンスポーツ。おじさんたちは、みんなコレでオートバイが好きになったのだ。
文:太田安治、中村浩史/写真:森浩輔
画像1: YAMAHA RZ50 1998年 エンジン:水冷2ストローククランクケースリードバルブ 排気量:49cc 最高出力:7.2ps/10000rpm 最大トルク:0.63kg-m/7500rpm シート高:745mm 車両重量:90kg 発売当時価格:24万9000円(税別)

YAMAHA RZ50
1998年

エンジン:水冷2ストローククランクケースリードバルブ
排気量:49cc 
最高出力:7.2ps/10000rpm 
最大トルク:0.63kg-m/7500rpm 
シート高:745mm 
車両重量:90kg 

発売当時価格:24万9000円(税別)

日本の原付50ccバイクと免許制度の歴史

青春のゼロハン、RZ50に乗る同級生がヒーローだったあの頃

ゴジュー、ゼロハン、または原付、原チャリ──。いろんな呼び方をされる50ccのバイク、ここでちょっと日本50cc史をおさらいしてみる。

いま運用されている「運転免許」が成立したのは戦前の昭和18年、1943年のこと。「普通」「小型」、それに「特殊」という3種類の免許があり、バイクの免許はこのうちの「小型」。バイクに乗るための免許なんて存在していなかったし、戦前~戦後の混乱期ということもあって、試験はなく、申請だけで免許がもらえたのだ。

昭和22年には、小型免許が一種~四種に細分化され、三種と四種がバイク向けの免許だった。三種は無制限、四種は150ccまで乗れ、まだ試験はなく、身体検査と口頭面接だった。

昭和24年には免許枠の名称変更があり、三種を自動二輪、四種を軽二輪と呼ぶようになる。そして昭和27年に新たに誕生したのが「原付」免許。

これは、より手軽に「移動や仕事のアシ」である小排気量車に乗りたい、という声に応えたもので、4ストローク車は90ccまで、2ストローク車は60ccまでを、再び届け出申請だけで乗れるようにしたものだった。

そして、ついに50ccオンリーの免許が成立したのは昭和29年。原付一種という呼び名になり、4ストローク/2ストロークの区分けも廃止。昭和35年には、免許制度を統括する「道路交通法」が成立し、届け出申請だけではなく、試験に合格しないと免許がもらえないようになったのだ。

ちなみにホンダ・スーパーカブの前身、自転車搭載用のエンジン・ホンダA型が発売されたのが昭和22年、初代スーパーカブC100の発売は昭和33年。ちょうどバイク用免許が成立し始める黎明期の話だ。

戦後のバイクの役割といえば、移動や仕事に必要な、焦土からの復興を目指すに重要な交通手段。昭和20年の自動車保有データは、普通自動車が1万8000台、それに対する小型二輪は5000台だったと言われている。

そして、50ccのオートバイが「趣味のもの」としてとらえられ始めたのは昭和30年代中期ではなかっただろうか。スーパーカブのスポーツバージョン、スポーツカブC100発売が昭和35年、ヤマグチオートペットスポーツやトーハツランペットスポーツが昭和36年、遊園地である多摩テック用の乗り物としてモンキーCZが昭和38年に生まれ、ブリヂストン50ツーリングは昭和40年に発売された。

昭和42年には、モンキーZ50Mがデビュー。少年たちを熱狂させる原付が生まれるのはこの後だ。

昭和44年にはダックス、昭和45年にはミニトレことFT1、昭和46年にはCB50やハスラー50が誕生。この頃から、趣味として楽しむ50ccバイクを「ゼロハン」と呼ぶことも多くなってくる。2022年現在50歳以上のライダーには、だんだん馴染みのあるモデルばかりだ。

モンキー的ミニサイズではないゼロハンスポーツの第一期世代といえば、CB50、RD50(49年発売)、G50(52年発売)、MB50(54年発売)、カワサキが6速ミッション、モノサスのAR50を発売したのは昭和56年だった。

それからビッグバイク同様、水冷エンジンの時代となり、RZ50、RG50Γ、MBX50が少年たちの憧れの的となる。その後、レーサーレプリカブーム期に中型免許モデルが人気となっても、YSR50やNSR50、GAGらのミニサイズが流行したり、ドリーム50のような史上最もゴージャスなモデルが発売されたりもした。

画像: ▲ヤマハ「RZ50」(1981年)

▲ヤマハ「RZ50」(1981年)

スクーターが一般的になって、制限速度や通行帯で我慢を強いられる原付は下火になってしまってはいるが、国土交通省データによると、2019年の二輪車保有台数は約1054万台。そのうち50ccの原付一種は510万台。つまり、今でも日本にあるバイクの約半分が50ccというわけだ。

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