機能を犠牲にせずに全体のバランスも整えていく
すっと低く構えたカフェレーサースタイルをキープした、カワサキZ1-R。ブルドックによるコンプリートカスタム、GT-M(Genuine Tuning Machine)の近作だ。バイパスパイプも備えた輪切り構成のチタンマフラーや前後のBSTカーボンホイール等のパーツにも目が行くが、ここではむしろ車両全体から感じられる自然な雰囲気に注目したい。
「この車両ではオーナーさんの体格に合わせて、足着き性を重視しているんです」と、ブルドック・和久井さん。そう言われてもう一度車両全体、そして各部を見ても、ローダウンや足着きのためと思われる特殊な加工といったものは見当たらない。
「シートは、クラスフォーさんが出しているスリムタイプのシートベースを使って、スプリームシートでレザーとスポンジを加工しています。その上で前後サスペンションも、自由長を通常よりも短めにセッティングするなどして対応しています。バンク角は減りますけど、それ以外は犠牲にしないよう、気を遣いました。
元々、Z1-RはZ系の中で一番足着き性が良くないんですね。ですからこのように、全体バランスを崩さない限界まで、足着きを良くする工夫をしたんです。足着き優先であっても、シートが大きくへこんだような形になっていたりすると見た目のバランスは崩れますから、そうならないように」と和久井さんは続けてくれる。
そんな配慮があるから、まず立ち姿が自然。加えて、もうひとつテーマがあった。GT-Mではよく挙げられる“ぱっと見た時のカスタム感は抑えつつ、よく見るとすごい”という印象。フロントフォークインナーチューブの純正部品的なクローム処理や、抑えたトーンの各部パーツ使いはそれを裏付けている。その上で、1230cc仕様+ツインプラグヘッド+5速クロスミッションのエンジンや17インチディメンションなど、GT-Mの手法はいつも通りにきっちり構築。
見てよし、乗ってよしはここでも確実に作り込まれているのだ。
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Detailed Description 詳細説明
ビキニカウル内側に合わせてカーボンパネルを製作しメーターを配置。中央にスタック製エンジン回転計、左下に速度計/インジケーター類も備えるモトガジェット製多機能デジタルメーター、右下にヨシムラ・プログレスメーターを配置。左右マスターはブレンボRCSだ。
ステアリングダンパーはハイパープロをマッコイステムの上に横置きし、ハンドルバーはセパレート。ミラーはマジカルレーシング製を装着する。
ポジションを決めるステップはマッコイ。これに合わせてシートはクラスフォー製スリムシートベース+スプリームとして、足着き性に配慮した仕様に。
エンジンはφ77mmのピスタルレーシング鍛造ピストン+超々ターカロイスリーブによる[純正値:1015→]1230cc仕様。ツインプラグヘッドでミッションはマッコイ5速クロスをセット、アウトボード&オフセットスプロケットも備えるなど、GT-Mでの通常メニューで作り込まれる。
キャブレターはTMR-MJNφ36mmで、シリンダーヘッドにはオイルバイパスラインを追加、オイルクーラーも追加するなども行っている
フロントフォークはナイトロンφ43mmで、インナーチューブはクローム処理して純正のようなルックスも作り込む。ブレーキはイギリスのHEL製ラジアルマウントキャリパー+サンスターディスク。ホイールはBSTカーボン製傾斜5本スポークの“ブラックダイヤモンド”を履く。
マフラーはワンオフのチタン4-1で、こうしたオーダーにも応えてくれる。リヤブレーキもHELキャリパー+サンスターディスクだ。
ブラック仕上げのスイングアームは7N01アルミ目の字断面5角材によるMccoyのRXコート仕様。リヤショックはナイトロン・ステルスで、フロントフォークともに自由長の設定などを変更し、通常より車高を低めにセットしているが、作動や減衰は正しく確保されている。