文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
スズキ「GSX-S1000」インプレ・解説(宮崎敬一郎)
空気を切り裂くフォルムに進化!「GSX-R1000」直系のスポーツネイキッド
GSX-S1000は解析技術を駆使して生まれた、適度に柔軟で万能性に富んだシャシーを活かしたスポーツネイキッドだ。復活したKATANAもこのシリーズのプラットフォームがベースということからも、オールマイティに使える素性の高さがわかる。
今回試乗した新型のS1000は、外観のイメージを大きく変えてきた。エッジの効いたフロントマスクと、縦2眼のLEDライトでちょっとワイルドな印象になっている。パワースペックは、もともとリッタークラスのスタンダードなネイキッドの中ではかなりパワフルな部類である148PSを発揮していたが、今回はプラス2PSの150PS。スペックも微妙に変わったが、注目したいのは、パワーアップよりもパワーマネージメントを一新していることだ。
新型は新たに3種類のパワーモードを切り換え可能な「SDMS」を採用しているが、スロットルレスポンスの特性だけでなく、根本的な出力特性まで可変するようになっている。トラコンも前モデルの3段階から5段階として制御を細やかにしている。
そのエンジンは、パワーモードを最もパワフルな「A」にしても決して凶暴ではないが、4000回転以下の低回転域では少しピックアップが敏感だ。
パワーモード切替のなかった前モデルにもそういうところがあった。スーパースポーツに乗り慣れたライダーには当たり前とも言える感触なのだが、幅広い層のライダーが扱いやすいように、新型はその回転域のピックアップをいくらか優しくしつつ、そこからリニアにトルクが湧き出るようになっている。力が従順な分、ずっと使いやすくなった。
スポーツランも街乗りも自在にこなす優等生!
さらに回すと、7000回転で一段と強力になり、9000〜1万2000回転までが最も強力な回転域。ストリートモードに相当する「B」に切り替えると低回転域からひと回り優しいスロットルレスポンスになり、細かいスロットルの動きにもギクシャクせず、気ぜわしさが一気に低減する。街中やツーリングでは、明らかにこちらの方が楽だ。
低回転域で力が太っているせいか、一段目のパワーの盛り上がりがAよりも少し低い6700回転くらいで、力の核はAと同じく9000回転以上。ツーリングモードの「C」は6000回転からが一段目の盛り上がりになるが、それ以下の回転域からのピックアップはさらにマイルドで、かなりラフな操作をしてもギクシャクしない。ピークパワーは同じらしいが、ツキが優しく、回すことへの精神的なハードルはかなり低くなる。750クラスのスポーツモデルを操るくらいの感覚で150PSが使えると思えばいいだろう。
個人的には、峠道で速く走れと言われたら「A」を選択する。思い通りにパワーが沸き出し、姿勢制御も楽だからだ。トラコンは最弱の「1」。OFFだと派手に滑るし「2」以上だと立ち上がりで意図せず作動して加速が鈍化する。街を気楽に走るのなら間違いなく「B」をチョイスするだろう。
車体は軽いし運動性能もいい。素直なハンドリングで、レベルの高いスポーティな走りもできる。ただスーパースポーツのようなキレのいい軽快さではないし、サスもSSのような高性能品ではない。電制サスやオーリンズサスを装備した高価格のモデルとは、得意分野も役割も違うバイクだということを忘れずに。
新型のGSX-S1000は、過給器や上等なサスが醸し出す「色気」こそないが、見事にオールマイティで使い勝手がいい。どんな使い方でも上手にこなす、なかなかの優等生だ。このパフォーマンスの割に価格がリーズナブルなのも魅力的だ。
スズキ「GSX-S1000」カラーバリエーション
カラーは「トリトンブルーメタリック」、「グラスマットメカニカルグレー」、「グラススパークルブラック」の3タイプが用意されている。
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