車両作りから得た経験が生んだ各種パーツ群
“空冷Zの再来”としてゼファーシリーズが登場した’90年前後。その頃の空冷Zシリーズは生産終了から10~20年経った中古バイクという見られ方も多く、当時高人気で現役を続けていたGPZ900Rニンジャ(’84年初出)等と比べれば、本流にない少数派になっていたとも言えた。
そんな状況のZに息を吹き込んだのが、PMCの送り出した各種パーツ群だ。同社代表の正本晃二さんはそのルーツを、’80年代後半から手がけていたZの輸入販売時に行っていた整備作業と、いちライダーとしての視点だったと後に述べている。
この車両は、そのPMC(創業時の社名はプロダクトMカンパニー)創業10年目の’98年に作られたもので、各部のパーツは、当時同社がリリースした画期的なもの。その一例がエンジンハンガー。15mm厚のアルミ材製で、曲がらない。経年変化にともなうフレームの歪みなどもあって、ノーマルの薄い鉄製マウントではプレートが折れ曲がるほど変形してしまうなどの不安があったのを解消したのだ。
ステップもそれまでの製品でよくあったペダル基部のガタつきを解消すべく、ベアリングをペダルアームに圧入する構造を採用。これも大人気となった。
「とにかくひらめいたことを現実的な形にしないと落ち着かないって性格が影響してたんでしょうね」と、当時自ら図面も引いて、製作の前面に立っていた正本さん。
それまで主流だった純正パーツ流用から、すぐに使えるオリジナルパーツを作り出し、供給する。それで好きなZが壊れずに長く保つようになる。そんなパーツ群が多く供給されるようになったことで、Zの世界は再び拡大することとなったのだ。
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Detailed Description 詳細説明
ノーマルのフロントフォークブラケット(フォークオフセットは60mm)はリフレッシュした上でステアリングステムの支持をボールレースからテーパーローラーベアリングに変更して段付きやガタを排除。左右マスターシリンダーはAP製、スイッチはOW01用だ。
エンジンはPMCが扱い元となるアメリカ・ワイセコ製鍛造ピストンと同ビッグブロックシリンダーによって903→1197cc化し、内部各パーツも変更している。写真中央と下に見えるのが今ではおなじみとなったアルミエンジンハンガー。キャブはFCRφ37mmをセット。
クラッチはワイヤから油圧駆動に変更。電装やハーネス(これもPMCが送り出して反響大だった)もPMC。ステップの軸にはベアリングを挿入する。
スイングアームはオリジナルのアルミS1タイプでホイールは1.85-19/2.15-18→2.50-18/4.00-18のアルミリム仕様。フロントフォークはノーマルのφ36mmにプログレッシブサス社のスプリングを入れるなど、性能向上も図る。前後ブレーキキャリパーにはAP・CP2696をチョイスした。