ヤマハ「RZ250」試乗インプレ
試乗した車両は、まさしく当時の姿を忠実に再現したノーマルのRZ。重さをまるで感じないキックアームを踏み降ろすと、ポロポロポロポロという、なつかしのRZサウンド。
スロットルをあおると、一瞬のタメの直後、グワァン、とタコメーターの針がハネ上がる。白煙は、記憶していたよりずっと少ない。

4000回転あたりまでパワーがついてこないけれど、そこを越えると一瞬でカラダが後ろに持っていかれるような瞬発力が突然やってくる。
7000回転からは、もう一段スゴいパワー。これが2段ロケット、これがRZの加速! 現代の目で見たって十分パワフルで、衝撃的。
もちろん、タイヤ性能や車体剛性という点では1980年のオートバイだから不満は多々あるけれど、ハンドリングは軽快で不安がないニュートラルなもので、今も昔も、実にヤマハらしい。重さを感じさせない、とても乗りやすい操縦性であった。
ヤマハ「RZ250」主なスペックと発売当時の価格
●エンジン形式:水冷2ストローク・ピストンリードバルブ並列2気筒
●内径×行程(総排気量):54.0×54.0㎜(247cc)
●最高出力:35PS/8000rpm
●最大トルク:3.0kg-m/8000rpm
●ミッション:5速リターン
●ブレーキ形式前・後:ディスク・ドラム
●全長×全幅×全高:2080×740×1085㎜
●タイヤ前・後:3.00-18・3.50-18
●燃料タンク容量:16L
●ホイールベース:1355㎜
●乾燥重量:139kg
●発売当時価格:35万4000円
ヤマハ「RZ250」各部装備・ディテール解説

車体中央部、タンク下に1本だけサスペンションを持つモノクロスサスペンション。すでにヤマハは70年代はじめからモトクロッサーYZシリーズでモノサスを研究開発し、実用にこぎつけた。カタログに掲載されたこの透視図は、少年たちに確かな未来を感じさせた。

市販車初のモノクロスサスを採用することで、高い剛性が求められたフレーム。エンジンは、2ストエンジン
独特の振動対策のため、ラバーを介してマウントするオーソゴナルマウント方式を採用した。

水冷システム2スト並列2気筒というエンジン形式は、ヤマハ市販レーサーTZシリーズ譲り。RZはまさに、このイメージで開発がスタートした。写真は80年型TZ250。

ボア×ストロークはTZと同じ。水冷方式は安定した高出力、騒音低減とクリーンな排気のために採用された。

後方にハネ上がったマフラーエンドがスポーティイメージを高める。チャンバー形状は高速域優先のタイプだ。

軽量化も考慮して樹脂製タンクキャップを採用。現在の目で見てもスタイリッシュでムダのない形状だ。

タコメーターに水温計をビルトイン。トリップメーターの採用も、実はRZの元祖であるYDS1が初だった。
火炎をイメージしたキャストホイールのデザインにより軽快感をアップ。ダブルディスクにする改造も流行した。
RDで採用したリアディスクも、RZでは軽量化を考えてドラムに。RZはリアハブにラバーダンパーを採用。

日本仕様に入れられたシート表皮のエンボス加工。段付きシートも当時まだまだ珍しいデザインだった。

アルミ製のフートレストマウントプレート。振動対策でフートレストには厚めのラバーが採用されている。
ヤマハ「RZ250」貴重なイメージスケッチ

RZ初期のイメージスケッチ。ハーフカウルも考えられていたのか、まさにTZそのままのフォルムだ。

その後、ややストリート色が強まり現車に近づいてゆく。
文:中村浩史/写真:長野浩之
※この記事は月刊オートバイ2011年8月号別冊付録を加筆、修正、写真変更などの再編集を施しており、一部に当時の記述をそのまま生かしてある部分があります。